難治性の小児IBD、遺伝情報に合わせた治療で寛解達成
ニュース | 2025/4/25
小児IBDは一つの遺伝子が原因で発症することがある
国立成育医療研究センターは、小児患者さんの炎症性腸疾患(IBD)発症に関わる新たな遺伝子異常を発見したと発表しました。
IBDは消化管の慢性炎症を特徴とする疾患で、クローン病と潰瘍性大腸炎に大別されます。患者さんの2~3割が小児期に発症し、その数は日本を含め世界的に増加傾向にあります。一般的にIBDは環境要因と遺伝要因が複雑に絡み合って発症すると考えられていますが、若年のIBD患者さんでは単一遺伝子の異常(遺伝子変異)が原因となるケースが複数報告されています。
小児IBD患者さんで新しい遺伝子変異を確認
今回の研究では、「TRAF3」という遺伝子に着目しました。この遺伝子は近年、自己免疫疾患や免疫不全との関連が指摘されていましたが、IBDとの関係は明らかになっていませんでした。
研究グループは、TRAF3変異が原因で起こると知られていた症状(中耳炎やアトピー性皮膚炎など)に加え、重度の口内炎と無菌性骨髄炎を示す小児IBD患者さんの遺伝子を詳しく調べました。その結果、新しいタイプのTRAF3遺伝子の変異を発見しました。また、この変異によってTRAF3タンパク質の量が減少するとともに、血液中にTフォリキュラー (Tfh)細胞と呼ばれる免疫細胞が増加し、免疫反応が異常に活性化することが明らかになりました。
患者さんごとのより効果的な治療選択につながる可能性
この患者さんは、IBDの標準治療で十分な効果が見られず、再燃(症状の悪化)を繰り返していました。しかし、Tfh細胞に作用するタイプの薬(抗IL-12/23p40抗体)を使用したところ、免疫反応が正常化し、持続的な寛解(症状の改善)が得られました。
今回の発見から、難治性の小児IBD患者さんの中にTRAF3遺伝子変異を持つケースがあることが明らかになりました。今後、遺伝子検査によってこのような患者さんを早期に発見し、より効果的な治療法を選択できるようになる可能性があります。
(IBDプラス編集部)