炎症性腸疾患、世界各国における疾患の発生動向を4段階のパターンに分類
ニュース | 2025/5/27
新興国でも急増するIBD、社会や医療への負担増加が懸念される
北里大学は、炎症性腸疾患(IBD)が、それぞれの国や地域でどのように発生率や患者数が変化していくかを分析し、そのパターンを4つの段階に体系化することに成功したと発表しました。
IBDは、これまで欧米を中心に増加してきましたが、近年では新興国においても急速に患者さんの数が増えています。世界的なIBDによる社会や医療への負担(疾病負荷)の増大に備えるために、地域ごとの動向を正確に把握し、予測することが求められています。
IBDの発生率と患者数の変化は4つの段階を経ると判明
今回の研究では、過去100年間の80以上の地域から500以上の疫学研究データを集めて分析しました。その結果、IBDは「出現期」「発症急増期」「有病率増加期」「有病率平衡期」の4段階に分類できることが明らかになりました。
最初の「出現期」は、主に低所得国で見られる発症率・有病率ともに低い状態です。次に「発症急増期」に入ると、産業化と生活習慣の変化に伴い新規患者数が急増します。さらに、「有病率増加期」になると新規発症は安定するものの、累積患者数が増加するため、全体の有病率が上昇します。最終的な「有病率平衡期」は発症と死亡がつり合い、有病率が安定した段階になります。研究グループは、この状態に至るのは2045年頃と予測しています。
この研究成果は、各国がIBDの疾病負担に対応するための医療政策や予防策を立案する上で、重要な科学的基盤となります。「低・中所得国での継続的な調査体制の強化や、高所得国の高齢患者さん向けのケア体制の整備が必要。環境因子や腸内細菌叢も、IBD予防の鍵として重要だ」と、研究グループは述べています。
(IBDプラス編集部)