主治医にうまく伝えられないことも、医師以外の医療スタッフに相談―IBD診療におけるチーム医療って?
医師インタビュー | 2022/7/27 更新
病気や治療に関して、わからないことや聞きたいこと、不安に感じていることなどがある場合、皆さん、主治医に相談することでしょう。しかし、主治医がいつも忙しそうだったりして、すべてを相談するなんてとてもできないと感じている方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、IBD診療に関わる医師以外の医療従事者が、患者さんのどんな相談に乗ってくれるのか、北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター 看護師の石橋とよみさんにお話を伺いました。
多職種が連携するチーム医療で、患者さんに合ったケアを提供
チーム医療で基本となるのは「情報共有」です。当センターでは月に1回、IBD治療に関わる医師や、内科外来や病棟の看護師、内視鏡センターの看護師、薬剤師、栄養士のほか、医療事務も含めた約17名のチームで集まって、情報を共有する場を設けています。共有する情報は、日々の業務連絡から、治療に関する勉強会の連絡、治療薬の入力方法の変更検討など、大きなものから小さなものまでさまざまです。チーム全員が必要な情報をしっかり共有することが、患者さんによりよいケアを提供するために必要だと感じています。
例えば診察時の治療選択に関することでも、まずは主治医が説明をしますが、情報はチーム全員が共有するようにしていますので、看護師や薬剤師などさまざまな立場から、さまざま視点で繰り返し説明できます。それによって、患者さんも治療内容についてしっかり理解ができるようです。その結果、患者さんが自分で考え、判断して、納得してその治療を受けられるようになっていきます。「自分で決めた」という実感があるのとないのでは、患者さんの治療に対する受け入れも、ずいぶん違ってくるのではないでしょうか。
治療についてだけでなく、気になることは遠慮なく伝えて
患者さんの相談で多いのは、食事に関することです。内容によって栄養相談を受けてもらいます。また、エレンタールの飲み方についても、薬剤師だけでなく私たち看護師も、どんな工夫をすれば飲みやすくなるか、多くの患者さんに接するなかでいろいろなアイディアが蓄積されていますから、飲みにくいと感じているのなら、相談に乗れますよ。
IBDは、長く付き合っていく病気です。治療を続けていくなかで、受験に始まり、進学、就職、結婚、妊娠など、ライフイベントがたくさんあります。そういったイベントなどの患者さんの生活の様子を知ることは、治療をするうえでも必要な情報です。治療薬を選ぶ場合にも、生活スタイルを考慮して選びます。例えば、会社員の患者さんに、投薬のために頻繁に通院してもらうのは負担が大きいなど、どんな生活スタイルなのかがわかっていると、どのような治療法がその患者さんに適しているのかを判断する材料になります。患者さん一人ひとりの状況を聞きながら、先生の治療方針に無理がありそうだと感じた場合には、意見をお伝えすることもあります。
当センターでは、診察時以外で何か気になる症状や出来事があった場合には、メールでも相談を受け付けています。緊急の相談には応じられませんが、薬の副作用が疑われる皮疹が出たような場合には、写真を添付してもらうことで、対処方法のアドバイスができた例もありました。そのような場合には、次の診察の際にその後の経過を確認し、必要な対応をとっています。メール相談がない施設へ通っている患者さんも、何か気になることがあれば、忘れずに次の診察で伝えるようにするとよいでしょう。
主治医に言いにくいことも、話しやすい医療スタッフを見つけて相談
患者さんにとって、処方された薬を飲み忘れてしまったり、副作用が気になって実は飲んでいなかったりというのは、主治医にはなかなか言いにくいのではないかと思います。しかし、処方された薬を飲んでいないということを主治医が知らないままでは、必要な治療がきちんとできなくなってしまいます。そんなときは、話しやすい医療スタッフに、本当のことを話してみてください。伝えるのには少し勇気がいるかもしれませんが、結果的に不要な治療や誤った判断をせずに済みます。
IBDは、ストレスでも症状が悪くなる病気です。治療のための通院も、待ち時間もあり、患者さんにとってはストレスになることでしょう。治療にまつわるストレスを少しでも軽減するために、主治医だけでなく患者さんに関わる医療スタッフ全員がサポートをしていくのがチーム医療です。当センターのようなIBDの専門施設に通院している方ばかりではないと思いますが、どの病院でも、医療スタッフは一生懸命勉強していますし、患者さんの力になりたいという思いは同じです。わからないことや不安に思うことなど、気になることは何でも相談して、納得したうえで治療に向き合っていただければと思っています。
(IBDプラス編集部)
2014年より 北里研究所病院炎症性腸疾患先進治療センター
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