ありきたりの解説じゃわからない!IBD専門医が答える「治験のギモン」

潰瘍性大腸炎2019/9/4

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「治験に参加してみたいけど、そもそも治験ってどんなことするの?」―。そんなギモンを抱いたのはあなただけではありません!でも、治験の解説ページって難しいしわかりにくい…。そこで今回、治験を数多く実施している北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター・副センター長の小林拓先生に、IBD患者さんたちから寄せられた「治験のギモン」についてお答えいただきました。

治験って怖くない?自分が参加対象なのかを知る方法は?

Q 治験の解説ページは多くありますが、まだまだ誤解しているIBD患者さんも多いようです。先生は「治験って何?」と尋ねられた際、どのように説明されていますか?

小林 拓 先生

治験は「新薬の開発と承認」を目的としていますので、「承認薬として使うために、有効性と安全性をきちんとしたかたちで確認するプロセス」と説明しています。

いまだに治験を「モルモット」「実験台」「得体の知れないものを飲まされる」などと思っている方もいるようですが、今行われている治験で使われる薬の候補はほとんどの場合、第2相試験(※1)もしくは第3相試験(※2)の段階であり、マウスやヒトでの基礎的な検討や、健康な人での確認がすでにできているものです。それに加え、昨今では科学的なものの考え方が進歩し、理論的におそらく有効で安全という背景が、はっきりしつつあるので、「得体の知れないもの」という昔のイメージとは大きくかけ離れています。理論的にも、基礎的な検討でも一定の安全が確認されたうえで、患者さんへ治験参加を提案し、実施しています。ですから、安全性・有効性ともに、かなりしっかりと期待できるものだと言えると思います。

※1 :比較的少人数の患者さんを対象に、治験薬の有効性・安全性の検証や効果的な使い方(投与量、期間など)について、プラセボ(偽薬)などと比較する試験

※2:多くの患者さんを対象に、第2相試験で得られた有効性、安全性、効果的な使い方を、既存薬やプラセボと比較する試験。長期間使用した場合の効果や安全性を調べることもある

Q 自身が治験参加の条件にあてはまっているか、どのように判断すればよいでしょうか?

治験はかなり幅が広いので、ご自身で判断するというのはかなり難しいと思います。私から言えるのは、基本的に活動性の方に対して行う場合が多いので、「既存薬で治療しているけれど症状が改善されない」という患者さんにとっては、治験が大きな選択肢の1つになるということです。それがご自身で考える場合の目安と言えるのではないでしょうか。

Q 現在の症状がわからない場合、軽症・中等症・重症を見分ける方法や目安はありますか?

注意していただきたいのは、軽症・中等症・重症というのが治験の場合に限り、「その瞬間の症状」を指します。ですから、今まで悪い時期が長かったけど、ここ最近は落ち着いて症状もないという人であれば軽症になりますし、今までずっと寛解状態だったけど、今は酷い症状という人であれば、中等症や重症と判断されます。そのため、ご自身の認識と乖離することがとても多いので、必ず主治医の先生に確認するようにしてください。いずれにしても「今、何らかの症状がある」ということが前提となります。

Q 高齢者や小児の患者さんが参加できる治験もありますか?

高齢者に限定した治験はほとんどありませんが、60~70歳代までであれば参加できる治験は十分にあります。小児は16~18歳くらいであれば成人に含まれる場合もあります。小児の患者さんに対して薬を使うためには、小児で治験を行う必要があるので、小児限定の治験も行われています。しかし、これらは10代前半とか、幼児学童に限定したものが多いですね。多くの場合、成人の治験に少し遅れて行われます。

Q 過去に治験に参加したことがあっても、別の治験に参加することはできますか?

基本的には可能です。ただし、一定の期間を空ける必要があったり、似たような薬だと参加できない場合もあります。

治験に参加したら「難病医療費助成制度」の対象から外れてしまうの?

Q 主治医に治験参加について相談する場合、「信頼関係が崩れないか心配」という声も聞かれますが、先生は治験実施施設の医師として、どのようにお考えですか?

治験参加を申し出たことで主治医との信頼関係が崩れるということは、基本的にはないと思います。たまにこのようなトラブルを耳にしますが、医療従事者として治験が患者さんにとっての「良いオプション」になるのであれば、紹介するのが原則です。また、通院している病院が治験実施施設ではなくても、今は専門施設間の連携が当たり前になりつつありますので、その点はあまり心配ないと思います。

それでも主治医に治験参加を反対された場合は、まず「反対する理由」を確認してください。なぜならば、まれに患者さんが「誤解」していることがあるからです。例えば、「治験の対象にならない場合」「治験薬を使わなくても現在の治療で十分にコントロールできている場合」などは、治験実施施設の医師であっても治験参加を反対します。それに対し、患者さんが不当な理由で反対されたと思い込んでしまい、トラブルに発展するケースがあります。

治験はプラセボにあたる可能性もありますし、効果・安全性についてもまだ確証があるわけではありません。そのようなデメリットも理解し、「今の治療が十分に効いている場合は、無理に治験に入る必要がない」ということをまず頭に置いてから、主治医に相談するようにしましょう。治験は、その患者さんが参加要件にあてはまるか否かだけではなく、「患者さんに治験にトライすることがメリットになりうるかどうか」が判断軸となります。治験は決して医療施設側のメリットのために行っているわけではありません。ですから、当院で実施している治験であっても、患者さんにメリットがないと判断した場合には、こちらから参加を勧めることはありませんし、患者さんからの申し出があってもお断りするようにしています。全てにおいて、根本にあるのは「個々の患者さん」です。治験は、メリットを得られる可能性を踏まえてのチャレンジなのです。

Q 他院で実施している治験に参加する場合、主治医の許可は必要でしょうか?

患者さんが主治医に許可を得ることは義務付けられていませんが、今までの治療経過から判断しますので、主治医と合意のうえ、情報を共有して進めていく方がスムーズですし、望ましいと考えます。治験が開始されれば、通常治験の担当医師は他の医師にも通知する必要が出てきます。

Q 難病医療費助成制度で治療費の負担が少なく済んでいる場合、治験に参加することで、助成対象から外れてしまうことはありますか?

そのことについては、よく問題視されています。軽症例に関しては、1年間に発生した医療費で助成対象になるかが決まるわけですが、治験に入ると医療費が発生しないので、治験が有効であった場合軽症例となりその要件から外れることになります。ただ、その場合でも、治験の間は医療費がかかりませんし、治験が終わった後に一度対象から外れたとしても、短期のうちにまた申請要件を満たすことになると思いますので、トータルで見た場合には、メリットの方が大きいと思います。また、治験に入った瞬間に助成対象から外れるわけではありません。あくまで、治験薬がよく効いて、治験参加期間が長期間(数年単位)になった場合にその可能性が出てくるということであり、効果が見られなかった場合は当然長期間にはならず軽症例にもならないため、助成制度から外れてしまうということは起きないと考えてください。

Q 難病医療費助成制度については、医師に相談すればよいのでしょうか?

重症度に関しての要件は医師にご相談ください。ただし、軽症の場合は過去1年間の医療費の計算などが必要になりますので、事務サイド(医事課など)にご確認ください。

Q 今受けている治療や、飲んでいるIBDの薬は中止しなければなりませんか?また、他科の薬も治験参加中は中止する必要があるのでしょうか?

一概には言えませんが、継続可能なものが多いです。ほとんどの場合は、治験薬の効果がわからなくなってしまうようなIBD治療薬の一部が中止の対象となります。反対に、「飲み続けなければならなくなる可能性」もあります。つまり、薬によっては病状問わず、決められた量を飲み続けなければならないということです。これはご存知ない方が多いので、覚えておくと良いでしょう。これらは治験参加の準備を進めていく段階で、一つひとつ確認していきます。繰り返しになりますが、これらの制限がかかるのは、ごく一部の薬です。

Q 治験中に風邪や頭痛など、別の病気にかかった場合、他院を受診してもよいですか?その場合、治験参加中であることを伝える必要はありますか?また、それらの病気を治験担当医に診てもらうことは可能ですか?

小林 拓 先生

もちろん受診していただいて結構です。ただし、併用できない薬が処方される可能性もあるので、必ず治験参加中であることは伝えてください。治験参加中は、何らかの方法で治験実施施設と連絡が取れる体制が整えてありますので、休診日だから連絡がつかないというケースはほとんどなく、あまり心配する必要はないと思います。実際には、治験参加が決まったときに伝えられた専用窓口に連絡し、そこの担当者から医師に説明してもらうという流れになるかと思います。

また、同領域の病気であれば、治験担当医が診察することも、もちろん可能です。

Q 治験参加中の妊娠、出産は可能ですか?

ほとんどの場合、治験参加中は「避妊」が必要となります。予期せず妊娠してしまった場合は、すぐに治験担当医に伝えるようにしてください。

Q 治験参加中にご自身の都合で、途中でやめたくなった場合はすぐやめられますか?また、治験薬で副作用が出た場合はどうなりますか?

理由に関わらず、やめることはいつでも可能です。副作用が出た場合は、医師の判断で中止にする場合もあります。

Q 治験が終了した後、治験の結果を詳しく資料などで報告してもらえますか?

ご自身の治験が終了しただけでは、結果を開示することはできません。治験自体が終了し、一般に公表する段階になってから共有することは可能です。患者さんが最も気にされるのが「投与されていたのがプラセボ(偽薬)だったのか?」ということです。これに関しても、治験自体が一定の段階まで終了して初めて開示可能となります。通常、治験に関わる医師らに結果が開示された段階で、治験担当医から説明があると思います。

小林先生から、治験に興味があるあなたへのメッセージ

――最後に、「治験に興味がある」「治験に参加しようか迷っている」IBD患者さんに対し、先生からメッセージをお願いいたします。

治験は「既存のIBD治療薬以外で、効果が見込める薬を試すチャンス」です。また、治験を通じてご自身はもちろん、同じ病気で悩んでいる人たちと機会を共有し、医療の進歩につなげ、世界中のIBD患者さんたちのより明るい未来に向かって歩んでいくための一歩だと考えます。治験を「自身の治療の新たな可能性」と「IBDという病気に対する世界中の取り組みの一歩」という両面から捉え、私たち医療者と一緒に取り組んでいただけたら嬉しいです。

北里大学北里研究所病院
炎症性腸疾患先進医療センター・副センター長 北里大学大学院医療系研究科(炎症性腸疾患臨床研究講座)特任准教授
小林 拓 先生
名古屋大学医学部卒業

医学博士
日本内科学会認定内科医
日本消化器病学会消化器病専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・指導医・関東支部評議員・学術評議員
日本消化管学会専門医・指導医
難病指定医
小児慢性特定疾病指定医
日本大腸検査学会評議員
日本消化器免疫学会評議員
日本消化器病学会IBDガイドライン委員
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