潰瘍性大腸炎患者の約9割がもつ自己抗体発見、確定診断や病勢把握に役立つ可能性
ニュース | 2021/3/12
頻繁に内視鏡検査をしなくても、病気の活動性がわかるようになる?
京都大学大学院医学研究科消化器内科 塩川雅広助教らの研究グループは、潰瘍性大腸炎の新たな自己抗体を発見したと発表しました。
潰瘍性大腸炎の発症には、遺伝や環境要因に加えて、自己免疫の異常が関連していると考えられています。通常、ヒトの抗体は細菌やウィルスなどの外敵や異物を攻撃しますが、自己免疫性疾患では自分の抗体(自己抗体)などが誤って自身の臓器の中の物質(自己抗原)を攻撃してしまいます。
研究グループは、潰瘍性大腸炎に自己抗体が関連していると考え、患者さんの血液中に存在する自己抗体が標的とする物質を探索しました。潰瘍性大腸炎では大腸粘膜の上皮細胞が障害されることがその根幹であるとされており、上皮細胞に発現するタンパク質に着目してスクリーニングを行いました。
その結果、「インテグリンαVβ6」というタンパク質に対する自己抗体が、潰瘍性大腸炎患者さんの約 90%に認められることがわかりました。この自己抗体は、同じ炎症性腸疾患であるクローン病患者さんや、その他の腸炎患者さんではほとんど認められず、潰瘍性大腸炎の確定診断に有用であると考えられるそうです。
また、潰瘍性大腸炎患者さんの病気の活動性に合わせてその抗体の数値(力価)が変動することもわかりました。つまり、頻繁に内視鏡検査をしなくても、この力価を測ることで「病気の活動性を評価できる」可能性があるということがわかりました。
発見された自己抗体が潰瘍性大腸炎の原因である可能性示唆、検査キット開発中
さらにこの自己抗体は、上皮細胞の接着に関連するタンパク質との結合を阻害する作用を持つものであることもわかりました。この作用は、潰瘍性大腸炎の病態の根幹である大腸粘膜上皮の障害と関連している可能性が高く、研究グループは「今回発見された自己抗体が、潰瘍性大腸炎の原因である可能性が高い」と考えているそうです。
「今回の発見から病態解明につながれば、根治的な新規治療法の開発が期待され、指定難病であるこの病気を根治できる可能性も考えられる」と、研究グループは述べています。
今回の発見が、新たな検査キットの誕生、ひいては潰瘍性大腸炎を根治に導く可能性もあるということですね。今後が楽しみです!
(IBDプラス編集部)
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