「小腸化大腸」技術を開発、大腸に小腸特有の消化吸収機能をもたせる技術

ニュース2021/3/8

小腸は他の臓器より移植片の拒絶反応が強いため「小腸移植」は困難

慶應義塾大学医学部坂口光洋記念講座(オルガノイド医学)の佐藤俊朗教授らの共同研究グループは、上皮を剥がした大腸にオルガノイドと呼ばれる技術で培養した小腸上皮を移植することで、小腸に特有の吸収・蠕動機能などを備えた大腸(小腸化大腸)を作製する技術を開発したと発表しました。

小腸粘膜には栄養や水分の吸収という生命維持に欠かせない機能がありますが、クローン病などで小腸を大幅に切除すると「短腸症候群」を発症することがあります。重症例では口から食事を取ることができず、チューブから静脈に栄養を注入する中心静脈栄養法で管理することになりますが、感染症や肝機能障害などの重篤な合併症が発生したり、生活の質(QOL)が低下したりするリスクがあります。残されたわずかな小腸を切り合わせて長さを延長する手術や、海外では腸の絨毛の発育を促す薬剤を投与する薬物治療もありますが、いずれも効果が不十分で、根本的な治療法は「小腸移植」しかありません。

しかし、小腸は他の臓器より拒絶反応が強く、移植片の生着率も生存率も低いため、国内での小腸移植は初めて行われた1996年からのおよそ20年間で、わずか28人の患者に32例実施されたのみとなっています。また、移植が成功しても拒絶反応の心配や、免疫抑制剤内服に伴う感染症、悪性腫瘍発生などの問題があります。このため、他の臓器の移植が増えるなか、小腸移植は少数にとどまっているのが現状です。

小腸化大腸をラット短腸症候群モデルに移植したところ、治療効果がみられた

研究グループはこれまでに、腸の上皮から調製した腸管上皮幹細胞を、「オルガノイド」と呼ばれる立体的な培養細胞の塊として永続的に培養可能にする技術を確立してきました。オルガノイドは研究用に使われるだけでなく、ヒトの腸の細胞をそのまま培養したものであることから、移植細胞としての可能性も期待されています。しかし、ヒトの小腸そのものを創出することは、まだできていません。

そんな中、研究グループは免疫不全マウスの大腸上皮を剥がして、そこにヒト大腸上皮を移植して入れ替えることで、マウスにヒト正常大腸上皮を構築する技術の開発に成功。今回、この技術を応用し、短腸症候群患者さんの大腸上皮を、培養した小腸上皮に入れ替える再生医療を実現できないかと考え、マウスとラット、そしてヒトの小腸細胞を用いた実験を行いました。

まず、マウスの大腸上皮を剥がし、ヒト小腸上皮を移植した結果、「小腸内側の上皮が腸液の流れを感じとって絨毛突起構造を作り出す」ということを突き止め、絨毛のある小腸上皮オルガノイドの培養に成功しました。そして、この発見によって、大腸を小腸に類似した移植片に作り変えることを可能とする技術(小腸化大腸技術)を開発。さらに、この技術で作成した小腸化大腸をラット短腸症候群モデルに移植したところ、治療効果があることを世界で初めて示しました。

短腸症候群などに対し、「拒絶反応のない臓器移植」ができるようになる可能性

今回開発された小腸化大腸技術は、すでにある別の臓器を必要な臓器に作り変えるものであり、再生医療による拒絶反応のない臓器移植の実現を一歩前進させるものとなります。また、小腸絨毛の突起構造の成り立ちの一端が解明されたことから、クローン病をはじめとするさまざまな小腸疾患の病態理解につながることが期待されます。

拒絶反応や感染症など、さまざま問題で非現実的とされてきた小腸移植が身近な治療になれば、短腸症候群に悩む多くの患者さんのQOLが向上します。一日も早く「拒絶反応のない臓器移植」が実現することを、心より願ってやみません。

(IBDプラス編集部)

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