スキリージ(一般名:リサンキズマブ)
クローン病の治療で使用する主なお薬一覧 | 2023/2/14
クローン病は、消化管に慢性的な炎症が起こる病気です。炎症は、口から肛門まで消化管全体に生じ、特に小腸と大腸に多くみられ、炎症が強まる「活動期」と炎症が落ち着く「寛解期」をくり返します。スキリージは、まず点滴で「活動期」の腸管粘膜の炎症による症状を改善して寛解状態に導き、それ以降は「オートドーザー」という器具を使った皮下注射で寛解状態を維持する生物学的製剤です。
監修者:薬剤師 谷本かおり
効能・効果
クローン病では、消化管粘膜に慢性的な免疫異常が起こると考えられています。この免疫異常には、サイトカインの一種であるインターロイキン(IL)-23が関わっているとされています。スキリージは、このIL-23の働きを抑え、炎症を引き起こすさまざまな物質が作られないようにして、クローン病の症状を改善すると考えられています。スキリージは、栄養療法や他のお薬による治療では十分な効果が得られなかった、中等症~重症の活動期クローン病患者さんに用いられ、腸管粘膜の炎症による症状を改善して寛解状態を導き、寛解状態を維持する効果が期待されます。
スキリージの特徴
IL-23に作用してその働きを抑える抗体を、バイオテクノロジーにより人工的に作製して医薬品にしたもので、このような薬は生物学的製剤と呼ばれます。従来の化学的に合成される医薬品に比べると、標的に対して高精度で強力に働くことから、高い治療効果が期待できます。スキリージの標的であるIL-23は、腸管細胞のバリアを弱めたり、炎症を起こすことに関わるとされていますが、身体を守るための免疫反応にも関わっています。このため、IL-23の働きをスキリージで抑えている間は、感染症に特に注意する必要があります。また、まれに重い過敏症が起きることがあり、十分な対処ができる医療施設での使用が推奨されています。
使用上の注意
- 以前に薬や食べ物で、かゆみ、発疹などのアレルギー症状が出たことがある方は医師に伝えてください。
- 重い感染症や、治療が必要な結核にかかっている方は、このお薬による治療を受けることができません。感染症にかかっている方、またはその可能性がある方、結核にかかったことがある方、または結核にかかっている可能性のある方は、医師に伝えてください。
- この薬の使用により、感染症にかかりやすくなる場合があります。感染症の徴候や症状(発熱、寒気、体がだるいなど)があらわれた場合には、速やかに医師にご連絡ください。
- 妊娠、授乳中、または妊娠している可能性のある方は医師にご相談ください。
- 予防接種については、事前に医師にご相談ください。生ワクチン接種は受けることができません。
併用禁忌・併用注意
他の生物学的製剤との併用は避けてください。
用法・用量
寛解導入療法では、通常、成人は600mgを4週間隔で3回(初回、4週、8週)点滴静注します。維持療法に用いる場合は、点滴静注による導入療法終了4週後から、通常、成人は360mgを8週間隔で皮下注射します。皮下注射は「オートドーザー」という器具を用いて、医師または看護師が行います。
副作用
副作用として、のどの痛み、頭痛、疲労感などが報告されています。このような症状に気づいたら、担当の医師に相談してください。まれに下記のような症状があらわれますが、[ ]内に示した副作用の初期症状である可能性があります。このような場合は、すぐに医師の診療を受けてください。 まれに下記のような症状があらわれることがあり、これは[ ]内に示した副作用の初期症状である可能性があります。このような症状に気づいたら、すぐに担当の医師または薬剤師に相談してください。
- 発熱、寒気、倦怠感 [重篤な感染症]
- ふらつき、意識の低下、息苦しさ、目や口唇周囲の腫れ、かゆみ、発疹 [重篤な過敏症]
コラム
近年のクローン病治療の進歩には、免疫異常を抑える優れたお薬の登場が深く関係しています。このような免疫を抑えるお薬を使用する際、医師や薬剤師から、感染症に注意するよう繰り返し伝えられますが、具体的に何をすればよいのでしょうか。まずは「手洗い・うがい」が基本となります。それから、感染症の方と接触する可能性がある場合は、マスクの着用や、手指のこまめな消毒も有効です。水虫などにもかかりやすくなりますので、皮膚の清潔を保つことも心掛けてください。また、子どものころにかかったり予防接種をしている場合でも、身近な方が麻しん(はしか)や風しん、水痘(水ぼうそう)などにかかった場合、または、結核の方と接触した可能性がある場合は、すぐに医師に相談してください。
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