親子でクローン病、「気持ちがラクになる」子育てのコツ
ライフ・はたらく | 2023/12/15
家族だからこそもっと理解したいのに、何もわかってないと言われてしまう…。そんなお悩みを持つご家族の方も多いのではないでしょうか。今回ご紹介するのは3児の母である、めぐみさん。実は、めぐみさんとご長男(13歳)は同じクローン病です。思春期の息子さんとの日常や接し方について、編集部に寄せられている患者さんご家族の悩みをふまえながら伺いました。
めぐみさん(37歳/クローン病歴9年)、息子さん(13歳/クローン病歴1年)
このストーリーのあらすじ
めぐみさんは2014年に、息子さんは2022年に確定診断
――クローン病と診断された時の気持ちと、現在までの治療についてお聞かせください
痔は産後の症状だと思っていましたし、下痢が全くなく便秘気味だったので、クローン病だとは夢にも思いませんでした。胃痛が起こるのも夜だけで、食欲が落ちたという感覚もあまりなかったです。でも実際は、産後から確定診断がつくまでの約4年間に体重が10kgくらい減っていました。
クローン病と診断されてすぐにペンタサが処方されました。次女がまだ1歳でしたが、授乳はやめるように言われましたね。薬を飲み始めてから比較的すぐに体調は安定しました。その後、引っ越しで病院が変わり、ペンタサをやめて、ヒュミラに変えました。エレンタールを1日1本とヒュミラで2016年~今年の夏くらいまで、ほとんど普通の人と変わらない生活を送っていました。ところが今年の夏に突然口の中と食道にひどい炎症が起こり、2週間くらい入院しました。プレドニンを使って炎症はすぐに治まりましたが、ヒュミラをリンヴォックに変更し、今は再び落ち着いています。
――息子さんの入院中~現在までの治療についてお聞かせください
退院してからプレドニンを使うことが決まっていたので、入院中はこれまでに定期接種で受けた予防接種の抗体が残っているかを調べる検査を行いました。息子の場合は、MR(麻しん風しん混合)ワクチンと水痘(水ぼうそう)ワクチンを追加接種し、その後2週間くらいで退院しました。
プレドニンを飲み始めて1か月は調子が良かったのですが、減量してから嘔吐が止まらなくなってしまい、中止してペンタサのみにしました。しかし、炎症が落ち着いているにもかかわらず原因不明の腹痛と吐き気がその後も続いたため検査をしたところ、「起立性調節障害」であることがわかりました。息子の場合は血圧が低いので、血圧を上げる作用がある低血圧治療剤を飲んでいます。その時から現在まで、ペンタサ、低血圧治療剤、アレルギー薬(食物アレルギーがあるため)を服用しています。特に朝は体調が悪いので、午後からの登校がほとんどです。
「他の人より苦労が多いから努力が必要」ということは隠さずしっかり伝えている
――息子さんと同じ病気であることで感じるメリット・デメリットを教えてください
「そこ痛いよね~。私もよくあるよ!」とか、症状や痛みについて共感できる点は大きなメリットだと思います。病気に関するアドバイスは素直に受け入れてくれますし、食べ物に関しても「これ食べて大丈夫?」と聞いてくれることもしばしば。また、クローン病と診断された時に大きなショックを受けてしまう親御さんが多いようですが、私は「息子もクローン病だったのか…」という驚きはありましたが、比較的すんなりと受け入れることができました。
一方で、同じ症状や痛みを経験している分、「その程度で横になってどうするの?」とか「これからもっと痛いときもあるよ」とか、つい厳しく言ってしまうことは多いですね…。
――息子さんに親として意識的に伝えていることがあれば教えてください
これから先、病気があっても健康な人と同じように扱われることの方が多いと思うので、「他の人より苦労が多いと思うし、努力する必要がある」ということはストレートに伝えています。体調が悪くて学校に行けない日も多いですが、高校受験もあるので勉強はきちんとやるように伝えています。
学校や主治医の先生とのコミュニケーションは、できるだけ本人主体で
――高校受験に向けて何か準備はしていますか
出席日数が一番心配だったので担任の先生に相談したところ、今は病気の診断書があれば出席日数は問われないと聞いて安心しました。その分、当日の試験の点数が大事になるので勉強は一生懸命やる必要があるとのことでした。主治医の先生には、同じクローン病の子たちがどんな高校に通っているのか伺いました。通信制高校に通っている子も多いそうです。ただ、通信制は普通の高校と全くシステムが異なるので、どちらが息子に合うのか見極めるのにはまだ時間がかかりそうです。
今年の夏まではタブレットの通信教育を受けていましたが、強制力がないと勉強しないのでやめました(笑)。本人曰く、タブレットよりも文字で書く方が合っているとのことでしたが、調子が悪いと座って文字を書くことが難しいので、学校の宿題を中心にやっています。これとは別に、担任が英語の先生なので、1週間に2ページ分の課題を出していただき、オンラインで提出しています。また、英語以外の教科についても現在、担任の先生が教科担任の先生と一緒にいろいろ対策を考えてくれています。具体的には、授業を受けていない分の評価(内申点)を課題提出に変えて評価するといったものです。
――学校とのコミュニケーションはどのようにされていますか
小学6年生の夏に診断されたので、中学入学前に面談を申し込み、食物アレルギーやクローン病について、校長先生、保健の先生、栄養士の先生とお話しさせていただきました。クローン病については「おなかが突然痛くなる病気で、揚げ物は食べられません」といった簡単な説明をしました。それ以外は「運動はできますか?」など、先生たちの方から質問してくれました。担任の先生とは入学後の個人懇談で、簡単な病気の説明と教室での席(授業中でもトイレに行きやすいように1番後ろの席にしてもらっています)の確認などをさせていただきました。その後も学校生活で気になったことなど、こまめに電話をくださっています。定期テストも先生が別室で受けられるよう配慮して下さり、テスト中でもトイレ退席が可能になっています。息子もテスト中にトイレに行けるということは、とても安心するようです。
今はお弁当にしてもらっていますが、給食に戻したら本人の判断で食べさせたいと思っています。それで体調を崩すこともあるかもしれませんが、これから先、お友達と外食することもあると思いますし、自分にとってのNGフードがわからないと苦労すると思うので、そこは担任の先生にも話して理解していただいています。
――医師とのコミュニケーションはどんなことを心がけていますか。成人医療への移行期かと思いますが、今後も大学病院に通院する予定ですか
息子は成長障害があるので、成長期が終わるまでは大学病院で診てもらおうと思っています。先生との会話はできるだけ息子にさせるようにしていますが、体調が悪い時でも先生に変わりないか聞かれると遠慮して「はい…」と答えてしまうことがあるので、前もって「この症状はきちんと伝えてね」と言うようにして、それでも伝えきれない場合のみフォローしています。
習い事はペースを落として継続、家の食事はNGフードを知る「練習」の場に
――息子さんは硬式テニスを習っているそうですね。現在も続けているのでしょうか
病気になる前は選手コースに在籍し、毎日2~3時間練習していました。今は選手コースからは外れて、1週間に1回くらいのペースで通っています。コーチにも病気のことは伝えていて、練習メニューを他の子と変えるなど配慮してくださっています。病気の子どもがスポーツをするということに関してはいろいろな意見があると思いますが、学校を休んで家にいるとほとんどいて動かないので、可能な範囲で楽しみながら続けて欲しいですね。
――ご家庭での食事はどうしていますか
作り分けはしていません。息子にはいろいろ食べて、大丈夫なもの・ダメなものを覚えて欲しいので、日頃から「ダメだと思ったら残していいからね」「食べて調子が悪くなったものは覚えておいてね」と伝えています。ただ、揚げ物に関してはノンフライヤーを使っています。最近は、私が通院などで遅くなると上の娘がごはんを作ってくれるようになり、大変助かっています。
――クローン病について誰かに相談したりすることはありますか
実兄がクローン病なので、よく相談しています。私に無い症状でも兄にはあったりするので、息子の症状でわからない時など「こういう症状出たことある?」とか、LINEや電話で聞いています。
コロナ前は患者会の料理教室に参加したり、病院のIBD講演会に参加したりしていましたが、コロナ禍でなくなってしまったので、今はInstagramでフォローしてくださっている方たちと交流しています。私自身がクローン病なので息子が何かを食べて「おなか痛い」と言っても、ドンマイって感じであまり深刻にはなりませんが、Instagramでクローン病のお子さんを持つ親御さんたちが一喜一憂しているのを見ると、少しでも気が楽になってもらうために、自分にできることは何かないかなと考えてしまいます。一方で、息子より年上のお子さんの親御さんの投稿を見て「こんな風に受験勉強しているんだ」とか、「すごい!高校に合格したんだ!」とか、とても励まされています。
壁にぶつかっても、親子で力を合わせれば乗り越えられる!
――ご自身が病気から学んだことはありますか
当たり前ですが、健康って本当に大事だと思いました。親が病気だと、子どももできることが減ってしまうんですよね。以前は私が子どもたちのテニスの練習相手になっていましたが、2年前に今度は「IgA腎症」になってしまい、激しい運動が禁止されてしまいました。でも、だからこそ「病気だから、しょうがない部分もあるよね(笑)」って感じで、あまり深刻にならずに明るく過ごして行こうと思っています。病気のせいであれもこれもできなくなった…ではなく、病気なのにあれもこれもできるよ!と、前を向いていきたいです。
昔に比べて「病気に対する理解」が広がってきたとすごく感じます。病気に対して配慮していただけるのは本当に嬉しいですし助かっているのですが、だからといってそれを当たり前と考えて、甘えて生きていくのはちょっと違うと思うんです。人生にはしんどくても頑張らなければいけないときがあると思っています。だから息子には常に「クローン病だからやれません、できませんでは何も成長できないよ」と伝えています。
――IBDのお子さんをもつ親御さんたちにメッセージをお願いします
子どもが突然難病を発症したらつらいですよね…。それは私も同じです。でも、あまり悲観的にならないでください。IBDとともに生きていく中で壁にぶつかったり、大変なこともたくさんあると思いますが、親子で力を合わせて頑張って乗り越えていきましょう。私自身も前向きでいられるよう、SNSで同じIBDのお子さんをもつ親御さんたちと交流したいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします!
(IBDプラス編集部)
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