潰瘍性大腸炎に対する「腸内細菌移植療法」、成功のカギが明らかに

ニュース2025/5/21

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新たなUC治療法として注目される「腸内細菌移植療法」

順天堂大学は、潰瘍性大腸炎(UC)に対する「腸内細菌叢移植療法(FMT)」において、治療効果を高めるドナーの条件や、腸内細菌叢の相性の重要性を明らかにしたと発表しました。

UCは腹痛、頻回な下痢、血便を主な症状とする難病で、日本には20万人以上の患者さんがいるとされます。根本的な治療法は確立されておらず、現在の治療は免疫抑制剤などを用いた薬物療法が中心です。

UCでは腸内の有益な細菌が減少し、腸内環境のバランスが崩れることが知られています。そのため、健康なドナーから提供された便を移植することで腸内環境を再構築するFMTは、UCに対する新しい治療法として期待されています。しかし、その効果には個人差があり、「どのようなドナーが適しているのか」「患者さんとドナーの相性は何で決まるのか」など、多くの疑問が残されていました。

63%で臨床的改善、重症度と薬剤使用歴が効果に影響

研究グループは、新たに「抗菌薬併用腸内細菌移植療法(A-FMT)」を開発しました。この方法は、FMTの前に抗菌薬を使って患者さんの腸内細菌を一時的に減らすことで、ドナー由来の菌がより定着しやすい腸内環境に整えます。

今回の研究では、活動期のUC患者さん97人をA-FMTを用いて治療し、4週間後の症状改善や、12か月以内の再燃の有無などを評価しました。患者さんは一人ひとり異なるドナーと1対1の組み合わせにし、FMTの効果を最大化する条件についても詳細に検討しました。

治療の結果、61人(63%)が臨床的な改善を示し、うち35人(36%)は寛解に至りました。FMTの効果に影響する患者さん側の因子として、UCの重症度や過去の薬剤使用歴(ステロイド/免疫抑制剤/生物学的製剤)が判明しました。

有用な菌が多い、腸内細菌が似ているドナーで良好な結果

一方、治療効果が高かったドナーには、患者さんで減少している「Bacteroidota門」などの細菌群が豊富に存在することが明らかになりました。また、一部のドナー由来菌が治療効果と強い関連を持つことや、善玉菌の一つである「酪酸産生菌」の存在も治療効果を左右することがわかりました。

患者さんとドナーの相性については、酪酸産生菌やBacteroidota門など特定の菌の組成が似ているほど、FMT後の定着と治療効果が高い傾向が見られました。

今回の研究によって、ドナー由来の菌が患者さんの腸内に定着することで、UCを治療できる可能性が示されました。また、定着が成功するためには、患者さん側の腸内環境や薬剤使用歴などの因子だけでなく、ドナー側が有用な菌を保有していることや、患者さんとドナーの腸内細菌叢の類似性が重要であることがわかりました。将来的には、この研究成果をもとに、より効果的で最適化されたFMT治療の実現が期待されます。

(IBDプラス編集部)

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