プログラフ(一般名:タクロリムス)
潰瘍性大腸炎の治療で使用する主なお薬一覧 | 2018/8/2 更新
潰瘍性大腸炎は大腸粘膜で原因不明の炎症が起こる疾患で、強い腹痛や血便などの症状が出る活動期と、病気の症状がおさまる寛解期を繰り返します。治療は複数の薬を用いて行いますが、症状がとても重く、強力なステロイド治療でも効果がみられない場合や、ステロイド治療で症状が少しおさまっても減量すると悪化するような場合、タクロリムスという内服薬を使用することがあります。タクロリムスは、強い症状を抑えて寛解させるために用いる薬で、寛解維持のためには使用しません。
監修者:薬剤師 谷本かおり
効能・効果
人間の体には、細菌やウイルス、異物などから体を守るための免疫と呼ばれる防御システムがあります。タクロリムスは、この免疫システムで重要な役割をするリンパ球に働き、免疫システムを調節したり作動させたりする物質の産生を抑えることで、免疫作用を抑制します。
プログラフの特徴
臓器移植時の拒絶反応の抑制や、免疫が暴走して自分自身の正常な細胞や組織を攻撃する、さまざまな自己免疫疾患の治療のために使用される免疫抑制剤です。日本の製薬会社により発見・開発されました。重い副作用が出ることもあるため、緊急時に対応可能な施設で、薬の量が適切かを血液検査で確認しながら慎重に使用します。効果は比較的短期間で現れるので、2週間投与して全く効果がみられなければ、他の治療に切り替えることが推奨されています。寛解維持に対する効果や安全性はわかっていません。プログラフには顆粒とカプセル剤がありますが、潰瘍性大腸炎にはカプセル剤を使用します。
使用上の注意
使用の前に、肝臓や腎臓の機能に問題がないか、悪化するおそれのある感染症にかかっていないかを調べます。治療開始後も、使用量が適切か、副作用が出ていないかを調べるために、定期的な検査が必要です。重い副作用が出ることもありますので、事前に医師から治療のメリットとデメリットについて、十分な説明を受けてください。
併用禁忌・併用注意
- 免疫を抑制するシクロスポリン、肺高血圧症の薬のボセンタン、カリウム保持性利尿剤のスピロノラクトン、カンレノ酸カリウム、トリアムテレンとの併用は禁止されています。
- 併用に注意の必要な薬が多数ありますので、事前に服用している全ての薬を医師に伝えてください。
- グレープフルーツジュースは副作用を強める可能性がありますのでさけてください。
用法・用量
1回0.025mg/kgを1日2回朝食後および夕食後に服用します。血液中の薬の濃度を測定して、患者さんごとに投与量を調整します。
副作用
ふるえ、頭痛や血糖上昇が起きることがあります。また、尿量が減る、身体がだるい、むくみなどの症状を伴う腎障害が起きることもあるので注意が必要です。
まれに下記のような症状があらわれますが、[ ]内に示した副作用の初期症状である可能性があります。すぐに医師の診療を受けてください。
- 尿量が減る、むくみ、だるさ [急性腎障害、ネフローゼ症候群]
- 胸が苦しい、動悸、気分が悪い、ふらふらする [心不全、不整脈、心筋梗塞、狭心症、心膜液貯留、心筋障害]
- けいれん、震え、ふらつき、物が歪んで見える、体の一部の麻痺、言葉が出てこない、意識が遠くなる [脳症、中枢神経系障害、脳血管障害]
- 発熱、倦怠感、出血傾向、むくみ、あざができる [血栓性微小血管障害、汎血球減少症、血小板減少性紫斑病、無顆粒球症、溶血性貧血、赤芽球癆]
- 吐き気、おなかが張る、嘔吐 [イレウス]
- 粘膜部分に水泡ができる、腫れ、かゆみ、発疹 [皮膚粘膜眼症候群]
- 息苦しい、発熱、咳が止まらない [間質性肺炎]
- 高い発熱、発疹、息苦しさ、嘔吐 [感染症]
- 急な胃のあたりの痛み・発熱・食欲がない・吐き気 [急性膵炎]
- 倦怠感、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、白目が黄色くなる [肝機能障害]
コラム
タクロリムスのように、グレープフルーツジュースと飲み合わせの悪いお薬は、高血圧のお薬や高脂血症のお薬など複数あります。グレープフルーツにはこれらのお薬の代謝酵素を阻害する成分が含まれているため、服用期間中にグレープフルーツを摂ると体内の薬の濃度を上げてしまい、作用が強く出て副作用が起きやすくなると考えられています。医師や薬剤師からはグレープフルーツについて説明されることが多いですが、スウィーティー、ザボン(ブンタン、バンペイユなど)、ダイダイなどにも同じ成分が含まれていますので注意が必要です。バレンシアオレンジ、レモン、カボス、温州みかんは食べても問題ありません。お薬を服用する際に“グレープフルーツジュースに注意してください”と言われたら、他にも注意する果物があることを心にとめておき、不安なことがあれば薬剤師に確認してくださいね。
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