ヒュミラ(一般名:アダリブマブ)

TNF(腫瘍壊死因子)-αは、免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質であるサイトカインのひとつで、免疫の働きや炎症に関係しています。このお薬は、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、乾癬、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎などの主要な原因物質のひとつと考えられているTNF-αの働きを抑えることによって症状を改善する抗体医薬品です。

監修者:薬剤師 小坂信夫

効能・効果

潰瘍性大腸炎は、腸粘膜および粘膜下層の炎症と潰瘍を特徴とする慢性・再発性の炎症性疾患です。潰瘍性大腸炎患者の血中、結腸組織、便中には、TNF-αが高濃度にみられることが報告されており、TNF‐αが腸粘膜の組織損傷と細胞死に関係すると考えられています。このことから、国内の中等症または重症の潰瘍性大腸炎患者を対象とした臨床試験の結果、潰瘍性大腸炎患者における有効性と安全性が確認されました。中等症または重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)に適応となります。

使用上の注意

以下に該当する患者さんは、使用する前に医師、薬剤師にお伝えください。

  • 過去に薬を使用して、かゆみ、発疹などのアレルギー症状が出たことがある方。
  • 敗血症などの感染症または疑いがある方。
  • 結核または過去に罹患したことがある方。
  • 多発性硬化症などの脱髄疾患または過去に罹患したことがあるか、家族にそれらの疾患の患者がいる方。
  • 血液疾患または過去に罹患したことがある方。
  • B型肝炎ウイルスキャリアまたは感染したことがある方。
  • 直前に生ワクチンを接種した方。
  • うっ血性心不全がある方。
  • 妊娠または授乳中の方。
  • 現在、使用している薬剤についても、医師、薬剤師にお伝えください。
  • 薬剤の用法、用量、使用方法(特に自己注射)について、必ず、医師や薬剤師から説明を受けてください。

併用禁忌・併用注意

抗リウマチ薬であるメトトレキサートを使用している方は注意が必要です。

用法・用量

【ヒュミラ皮下注 40mg、シリンジ0.8mL/40mg、シリンジ0.4mL/40mg、ペン0.4mL/80mg、シリンジ0.8mL/80mg、ペン0.8mL】
通常、成人にはアダリムマブ(遺伝子組換え)として初回に160mgを、初回投与2週間後に80mgを皮下注射します。初回の投与から4週間後以降は、40mgを2週に1回、皮下注射します。なお、本剤による治療は通常、投与開始から8週以内に反応がみられます。8週時点で臨床症状や内視鏡での所見などから明らかな改善効果がみられない場合には、本剤の投与を中止します。本剤の投与を開始する際には、医療施設で、必ず医師が投与するか、医師の直接の監督のもとで投与します。本剤による治療開始後、医師が妥当と判断すれば、患者自身での自己投与も可能です。

副作用

主な副作用として、鼻咽頭炎、注射部位反応(紅斑、かゆみ、発疹、出血、腫脹)、発疹、上気道感染などが報告されています。これらの症状が出た場合には、担当の医師または薬剤師に相談してください。まれに下記のような症状があらわれますが、[ ]内に示した副作用の初期症状である可能性があります。このような場合には、使用を中止し、すぐに医師の診療を受けてください。

  • 悪寒、震えを伴う突然の高熱、咳・痰[敗血症、肺炎などの重篤な感染症]
  • 長引く微熱・咳(2週間以上)、全身倦怠感、体重減少[結核]
  • 関節痛、筋肉痛、皮疹[ループス様症候群]
  • 視力低下・複視、しびれ・痛み・運動麻痺[脱髄疾患]
  • 呼吸困難、蕁麻疹、眼や口唇周囲の腫れ[重篤なアレルギー反応]
  • 倦怠感、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなる[劇症肝炎、肝機能障害、黄疸、肝不全]

コラム

抗体医薬品とは、生体がもつ免疫システムの抗体を利用した医薬品のことです。一つの抗体が一つの標的(抗原)だけを認識し、がん細胞などの抗原を狙い撃ちするため、高い治療効果と副作用の軽減が期待できます。病気の組織で過剰に作られるタンパク質を抗原として認識し、結合する抗体医薬品もあります。ゲノム解析により、疾患の原因となる抗原分子が特定されていくことで、抗体医薬の可能性が拡大していくことが期待されます。

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