潰瘍性大腸炎患者の大腸上皮でがんを抑える遺伝子の変化を発見、炎症に関する遺伝子
ニュース | 2019/12/27
炎症を起こす遺伝子の働きを抑え、炎症を鎮めるように変化した細胞が増加
京都大学医学研究科の小川誠司教授(兼・高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)主任研究者)、垣内伸之助教(兼・同研究者)、妹尾浩教授、東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センターの宮野悟教授らの研究グループは、潰瘍性大腸炎による上皮再構築の仕組みと発がんとの関係を解明したと発表しました。
研究グループは今回、潰瘍性大腸炎に着目し、長期間の炎症にさらされた大腸粘膜と、これを背景として発症する大腸がんの大規模なゲノム解析を実施。その結果、潰瘍性大腸炎に長期罹患している患者さんの大腸上皮は、大腸がんで認められる特定の遺伝子の変化(遺伝子変異)のほかに、炎症に関わる「IL-17シグナル経路」に遺伝子変異が起きた細胞が増加していると判明。その中で最も高頻度に変異が観察されたNFKBIZという遺伝子は、炎症に関わる遺伝子の発現を制御します。同じく変異が多かったZC3H12Aは炎症に関わる遺伝子に働き、炎症を鎮める働きを持っています。これらの遺伝子が変異した上皮細胞は、炎症刺激を受けた際、細胞内に伝わる炎症性シグナルを弱めていると考えられ、これが炎症環境下で細胞が生存するために獲得したメカニズムと考えられました。また、これらの遺伝子に変異をもった細胞は、潰瘍性大腸炎患者さんの直腸の50~80%の面積を覆うくらいであるということも判明しました。
さらに研究グループは、NFKBIZやZC3H12Aの変異が、大腸がんではほとんど認められないことにも気付き、これに着目して解析を勧めました。その結果、これらの遺伝子に変異を獲得した上皮細胞は、がんになりにくいことも証明しました。
今回の研究成果は、潰瘍性大腸炎の発症メカニズムの解明に役立つだけでなく、NFKBIZやZC3H12Aを標的とした、潰瘍性大腸炎・大腸がんの新規治療薬やその予防法の開発につながる重要な手がかりとなります。
自ら遺伝子変異を起こして炎症を抑える…これはまるで「プチ進化」と言えますね!しかも、がん化も抑制してくれるというのも素晴らしい。この発見が、今後の潰瘍性大腸炎の治療に役立ってくれることを切に願います。
(IBDプラス編集部)
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