専門医が解決!「子どものIBDに関するQ&A」-病気・治療編-

医師インタビュー2021/12/16

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「病気といかにうまく付き合っていくか」が重要なIBD。特に、子どもの患者さんにとっては、家族のサポートが欠かせません。そこで、国立成育医療研究センター 小児内科系専門診療部 消化器科 診療部長/小児IBDセンター長の新井勝大先生に、みなさんから寄せられた子どものIBDに関する質問にお答えいただきました。今回は「病気・治療編」として、小児IBD特有の症状や、薬剤に関する質問をご紹介します。

大人のIBDと子どものIBDの違いは?

――成人のIBDと異なる症状、子どもで出やすい症状はありますか。また、重症化しやすいというのは本当なのでしょうか。

子どものIBDは「病変範囲が広く、重症度が高い」という特徴があります。潰瘍性大腸炎の全大腸炎型は成人で4割程度であるのに対し、小児は8割以上であることがわかっています。大腸全摘のリスクも成人の倍くらいあると考えられています。クローン病も同様に、病変範囲が広く、腸管全体に病変があることが成人よりも多いことがわかっています。また、診断された時点で約4割に痔瘻や肛門周囲膿瘍などの肛門病変があります。

これ以外では「成長障害」が起こりやすい、「不安」や「うつ兆候」を持っていることが少なくないという特徴もあります。

――寛解期は平均でどのくらい維持できるのでしょうか。入院を避けるためにできることはありますか

寛解維持の期間は個人の病状や治療する医師によっても変わってきますので、お答えすることは難しいですね。

入院を避けるためにできることは、「薬をきちんと飲み、根気よく治療を続けること」です。そして、「症状をしっかりと主治医に伝える」ことが大切です。やはり、お子さんは何か言うと痛いことをされるのではないかと思って、症状が出ても隠す傾向にあります。そのため、周囲に伝えたときには既に悪化していて入院になってしまうケースも多く、注意が必要です。

また、クローン病の方には「少し症状が悪くなっても、食事をエレンタールやラコールなどの栄養剤に置き換えるだけで、調子が良くなることがある」ということを知っておいていただきたいですね。いざという時は食事をやめて、栄養療法をメインにする勇気が必要だと考えます。

子どもに対する薬物療法が心配…新井先生の見解は?

――小児IBDでの生物学的製剤使用に関する先生のお考えをお聞かせください

罹病期間が長い小児患者さんでは、生物学的製剤による粘膜治癒の達成が長期予後を改善するとの考えから、早い段階で導入することが多いですね。多くの製剤で、発がん等のリスクが決して高くはないことも重要な知見です。生物学的製剤の使用を不安に思われる親御さんもおられますが、症状が軽くても内視鏡で見ると炎症がひどいような場合、そのまま放置してしまうと大腸がんのリスクが上がったり、クローン病では腸が狭くなったり(狭窄)、破けたり、瘻孔ができてしまったりすることがあります。ですから、私は粘膜治癒に至っていなければ生物学的製剤の導入を検討します。

――生物学的製剤を使っていくうちに効果が減弱する「二次無効」を心配する声も聞かれますが、先生はどのようにお考えでしょうか

一定の割合で二次無効になる患者さんがおられますが、二次無効になる人はその治療をしていなかったらよりひどい状態になっている可能性が高いとも言えます。大切なのは腸の炎症をコントロールすることです。二次無効になった場合でも、薬の量を増やす、他の生物学的製剤を使う、免疫調節薬を併用するなどの対処法があります。

「一生使うの?」と聞かれることもありますが、今は次々と新しい薬が開発されています。それらは既存の薬よりも、効果が高い、安全性が高い、利便性が高い、のいずれかに当てはまることで開発が進められています。ですから、今の薬を一生使い続けるケースは、決して多くはないでしょう。しかし、治療をためらって悪くなってしまった腸は、一生もとに戻らないかもしれません。そのことを念頭に置いて、今必要と思われる治療を医師としっかり話をした上で、きちんと受けていただきたいと思います。

――免疫調節薬(チオプリン製剤)を飲み続けることによるリスクはありますか

免疫調節薬に関しては、短期的なリスクとして、白血球の減少、脱毛症、膵炎などがあります。ですが、ほとんどが最初の1か月に起こるので、この間に問題なく使えた人では長期の内服が可能となります。また、重篤な白血球の減少と脱毛症のリスクに関しては、事前に遺伝子検査で調べることができます。

長期的なリスクとして心配なのが悪性腫瘍です。最も多いのが「悪性リンパ腫」です。固形腫瘍も含めるとチオプリン製剤未使用の患者の数倍リスクがあがると報告されています。しかし、決して多い数ではありません。これとは別に「EBウイルス感染」のリスクがあります。EBウイルスはヘルペスウイルスの仲間で、免疫調節薬を使用しているときにこのウイルスが初めて体に入って感染症を起こすと、「血球貪食症候群」という血液の重篤な疾患を経て、腫瘍化するリスクもあるとも言われています。

しかし、チオプリン製剤は錠剤で利便性が高く、レミケードと併用することで二次無効も減らせます。腸の状態が良くなれば大腸がんのリスクも下がりますので、やはり必要であれば安全性に配慮しながら使うべきだと考えます。

――免疫調節薬の使用に関して、コロナ禍での影響はありましたか?

発熱した方に対しては使用を中断することもありましたが、必ずしもというわけではありません。コロナに負けないためには病状を改善させることが大切ですし、チオプリン製剤で病状をコントロールできている人が薬を中止するということの方が、リスクが高いと考えました。

――ステロイドの長期使用とは、どのくらいの期間を指すのでしょうか?

昔に比べ、ステロイドを使うことは、だいぶ少なくなりました。特に小児クローン病の寛解導入は、栄養療法から入り、その後、生物学的製剤や免疫調節薬を使用することで、ステロイドなしで寛解導入できるケースが増えています。

一方、潰瘍性大腸炎は悪化したら、まずステロイドで抑えてから他の治療を行うことが主流です。良くなってもすぐには使用を中止せず、様子を見ながら減量していきます。一般的に2~4週間は多めに使い、そこから減らしていき、通院間隔などを考えると最終的に3~4か月かけてやめるイメージです。ですから、3か月を超えても多く使っているような場合はステロイドの長期使用にあたるのではないかと考えます。

「手術だけはしたくない!」と思っている方へ

――小児IBDの外科治療に対する先生のお考えをお聞かせください

潰瘍性大腸炎に関しては、小児科で経過を見ている中で、10%以上のお子さんが手術になっています。もちろん、そこに至るまでにさまざまな治療を試しますが、それでも改善しないケースが依然としてあります。危ぶまれるのが「手術だけはしたくない!」と、ステロイドを含め、薬をどんどん増やしていくようなケースですね。そうなると副作用で重症感染症になってしまったり、腸が破けてしまったりして命にかかわることもあります。ですから、やはり医師を信頼して、早め早めに可能な治療を試し、それでも効果が得られない場合は手術を前向きに検討するのが良いと考えます。その方が、結果としてステロイドの悪影響を最小限に抑えられますし、長い目で見るとプラスに働くことが多いです。私もできることなら手術はしたくないですが、悪い状態を長引かせれば長引かせるほど副作用で苦労することも多いのです。クローン病の手術は潰瘍性大腸炎より少ないですが、腸の狭窄や、どうしても良くならない部分を切除することがあります。肛門病変の手術も多いですね。

また、乳幼児は腸炎のコントロールが非常に難しい場合があり、人工肛門(ストマ)にすることがあります。もちろんストマになった場合でも、できる限り永久ストマにならないよう努力していきます。ご本人だけでなく親御さんもつらいと思いますが、健康を維持するためだということをご理解いただければと思います。

(IBDプラス編集部)

新井勝大先生
国立成育医療研究センター 小児内科系専門診療部 消化器科 診療部長/小児IBDセンター長
新井勝大先生
1994年 宮崎医科大学(現:宮崎大学医学部)卒業
1995年 カリフォルニア大学アーバイン校産婦人科胎児生理学リサーチフェロー
1996年 在沖縄アメリカ海軍病院シニアインターン
1998年 Beth Israel Medical Center (米国) 小児科レジデント
2001年 Schneider Children’s Hospital(米国)小児消化器科フェロー
2005年 順天堂大学附属練馬病院 小児科准教授
2006年 国立成育医療研究センター 消化器科医長
2018年 国立成育医療研究センター 消化器科診療部長
2019年 国立成育医療研究センター 小児IBDセンター長(併任)

〈資格・所属学会〉
医学博士・小児科専門医・胃腸科専門医・日本小児栄養消化器肝臓学会認定医
日本小児栄養消化器肝臓学会:副理事長
日本炎症性腸疾患協会:理事
アジア環太平洋小児栄養消化器肝臓学会:理事、学術委員、国際渉外委員

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