専門医が解決!「子どものIBDに関するQ&A」-学校・生活編-

医師インタビュー2021/12/16

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「病気といかにうまく付き合っていくか」が重要なIBD。特に、子どもの患者さんにとっては、家族のサポートが欠かせません。そこで、国立成育医療研究センター 小児内科系専門診療部 消化器科 診療部長/小児IBDセンター長の新井勝大先生に、みなさんから寄せられた子どものIBDに関する質問にお答えいただきました。今回は「学校・生活編」として、受験対策や学校への病気の伝え方などに関する質問をご紹介します。

「受験」は、主治医の力も借りながら万全の体制で

――入院などによる学業の遅れに備え、親としてサポートできることはありますか

「院内学級」がある病院を事前に調べておくことをおすすめします。入院中は心もダメージを受けてしまうことが多いのですが、病院に一緒に勉強する仲間がいると大きな支えになりますし、学業の遅れを最小限にすることができます。ただし、院内学級を利用するには「1か月以上の長期入院」などの条件が決められていると思いますし、転校することになるので私立の学校からの受け入れが困難なケースもありますので、それぞれの病院にお問い合わせください。

――受験生に対しては、どのようなアドバイスをされていますか

基本的には「病気だからといって、自分の夢や目標を小さくしないで欲しい」と伝えています。また、受験で特に重要なのが「在学中の出席日数や成績の維持」と「受験日を万全のコンディションで迎えること」だと思います。

通院に関しても主治医と相談しながら、できるだけ夏休みなど季節ごとの長期休暇をうまく使って、学校の出席日数への影響を最小限にしたいところです。といっても、再燃時など、頻回の受診や入院が必要な時は割り切る必要があります。また、受験日を万全のコンディションで迎えるために、半年前くらいから計画的に、生物学的製剤を使うタイミングなどをずらしつつ、受験日に合わせて調整していくこともできます。

そうは言っても、受験間近に再燃してしまうこともあるかと思います。そのような場合は、あまり躊躇せずにステロイドを使うなどして、とにかく症状を抑えることが大切です。薬は受験が終わってから減らしていけばよいでしょう。お子さんが最高のパフォーマンスを発揮できるよう、あまり杓子定規に考えるのではなく、「こういうときだから、少し治療を変えてもいいよね」という風に、どうしても大変な時は主治医に相談して下痢止めを使うなど、柔軟な姿勢でサポートしてあげて欲しいと思います。ただし、普段と違う薬を使うときは、効果があるのか、体調が急変したりしないかなどを知るために、あらかじめ相談して、一度試しておくことも大切です。

入学試験でも、病気であることを事前に申し出ておけば、トイレに近い出入口付近の席にしてもらえたり、途中退室が可能になったりするケースが多いです。これには医者の診断書が必要になりますので、親御さんが担任の先生と話し合って進めていくのが良いと思います。

――試験当日に具合が悪くなってしまった場合の対処法はありますか

推奨はできませんが、市販の下痢止めを飲むのもやむを得ないかもしれません。また、朝起きて調子が悪かったら、朝食は食べずにエレンタールや経口補水液などの飲み物(牛乳はNG)だけにして、便の回数を減らすというのも良いでしょう。ですが、試験の日だけ急に具合が悪くなるということはほとんどありません。あらかじめ主治医と話し合い、できる限りの対策をしておくことが最も重要だと思います。

――学校選びなど、進路について相談されたときは、どのようなアドバイスをされていますか

通学時間の長さは、便意の心配はもちろんのこと、疲れも溜まりやすいので注意が必要です。それ以外は、特に制限すべきことはないと思います。自分のやりたいことにチャレンジした方が成績も伸びると思いますし、病気を理由にあきらめてしまうと、やる気を失ってしまう可能性もあります。進路はできる限り、お子さんの希望を尊重してあげるのが良いと考えます。

学校や友達への説明、きょうだいへのフォローはどうすべき?

――病気に関する周囲への説明は、誰からするのが良いのでしょうか

学校への説明はお子さんの年齢問わず、親御さんが行うケースがほとんどです。また、周囲のお友達には病気のことを話さないお子さんの方が多いように思います。

――エレンタールが飲めない(ゼリー、ムースもNG)の場合は、どうすればよいのでしょうか

ここは医師や医療機関によっても意見が分かれるところです。飲めないものを無理やり飲ませようとすれば親子喧嘩になってしまいますよね。最初の頃はすごく頑張っていた子が、しばらく経つと飲めなくなってくることも多いです。そのような時は、3本飲んでいるのであれば、2本か1本に減らして、できる範囲で続けていただいています。今は昔と違っていろいろな治療法がありますし、栄養療法で苦しい思いしている場合は他の治療法を選ぶこともやむを得ないと思います。

一方で、エレンタールが飲めるというのは大きな強みです。ちょっと具合が悪くなったときでも、食事をエレンタールに置き換えることで、体調が戻ったりします。ですが、エレンタールが飲めなければ、ステロイドを使わざるを得ない場合もあるのです。体重増加や身長の伸びが良くなるなど、成長の面でもプラスに働いてくれますし、可能な限り1日1本は継続できたらいいですね。

――学校給食への対応は、どうすればよいのでしょうか

潰瘍性大腸炎であれば調子が悪いとき以外は、あまり食事制限はしなくてよいと考えます。クローン病は、特に診断されたばかりの頃は不安定なので、脂質制限が必要になります。当院では親御さんに学校の献立を持ってきてもらい、それを見ながら栄養士にアドバイスしてもらうこともあります。基本的にお子さんはみんなと一緒の給食を食べたいと思うので、牛乳はお茶に変えてもらう、脂っこいものは残す、揚げ物は衣を外すなどで対処し、どうしても無理そうな献立の日のみお弁当にするというのが理想です。学校の理解があれば結構対応してもらえますが、こればかりは学校によるので、まずは親御さんが病気のことをきちんと説明し、担任の先生と情報共有することが大切です。

――家での食事、外食、おやつなど、子どもに与える食事で注意すべき点があれば教えてください

「あれはダメ、これはダメ」と言い過ぎないほうがいいと思います。それよりも、揚げ物よりは焼き物、牛肉よりは鶏肉など、基本的な知識を親子で知っておいて欲しいですね。当院では、栄養士がIBDと診断されたお子さんを院内の売店に連れて行って、食品についている栄養成分表示を一緒に見ながら説明したりしています。その際に「できるだけ脂質を少ないものを選ぼうね」と指導していますし、お母さんには健康食を心がけるようアドバイスしています。基本は「脂質1日30g」ですが、特別な日は「今夜はケーキを食べるから朝は軽くしておこうね」など、強弱をつけながらトータルで調整していけば良いと思います。

――患者本人と、きょうだいの食事は作り分けるべきでしょうか。また、きょうだいのメンタル面のフォローはどのようにすればよいでしょうか。

お子さんの性格にもよりますが、自分が食べられないものを見るのは絶対ダメという子であれば、きょうだいとは別に食べさせる、隠れて食べさせるのが必要になることもあると思います。

病気の子のきょうだいの多くが、非常にさみしい思いをしています。身近な家族がフォローできれば良いのですが、そうとも限りません。「入院して〇〇は頑張ってるんだから、あなたも我慢しなさい」ではなく、その子も頑張っているということを、きちんと認めてあげて欲しいと思います。そして、時には楽しい思いをさせてあげることも大切です。フォローをしてあげることで、入院しているきょうだいを想い、優しくすることができるのではないでしょうか。

――行事への参加、トイレの問題、友人関係などに関するアドバイスがあれば教えてください

小学校も高学年になってくると、特に男の子が学校で便をするのは嫌なものです。親御さんから学校にお願いして、職員用のトイレなど、他の児童が使わないトイレが使えるようお願いするのも一案です。その際、「担任の先生の時はいつでもトイレに行けるのに、別の先生だと行けない」となると可哀そうなので、教員同士で情報共有してもらうようにしましょう。また、伝え方も文書にする、製薬メーカーなどが作成したIBDに関するパンフレットを持参するなどして丁寧に説明し、きちんと理解してもらうことが大切です。

行事への参加も基本的には問題ありませんが、トイレのない山道を2時間歩くなど、厳しそうな場合は、教員と一緒に山頂まで車で移動するなど、無理し過ぎない範囲での参加を学校側にお願いしてみてください。主治医に事前に相談すれば、良いアドバイスをくれるかもしれません。

友人関係についてですが、よく「友達に病気のことをちゃんと伝えたほうがいい」と強く思っている親御さんがいるのですが、自ら進んでお友達に話す子はあまりいません。ですから、子どもの気持ちを最大限尊重するというスタンスで、強制する必要はないと考えます。小学校などでは担任の先生からクラスメイトに説明してくれる場合もありますが、病名を出して詳しく話してもらう必要はなく、「おなかの調子があまりよくない」程度のことを伝えるだけで十分だと思います。病気のことで子どもが理不尽につらい思いをしないように、まずは学校に理解してもらうことが大切ですね。

IBDがあったからこその素敵な人生を歩んでほしい。夢を大切に!前を見て!

――最後に、IBD患者さんとご家族へのメッセージをお願いいたします

IBDになったことで、子どもたちが不幸になるわけではありません。反対に、病気と向き合ったこと、つらいことを乗り越えたことで、人間としても成長し、素晴らしい人生を歩んでいく子どもたちもたくさんいます。幼い頃に医療に触れたことで、医療従事者を目指す子もいます。自分の夢に向かって頑張れるのはすごくカッコいいことなので、病気があったからこそ素敵な人生になったと思えるように、治療をきちんと続けて、病気をコントロールしていって欲しいですね。頑張って治療してもなかなか良くならないと落ち込むこともあるかもしれません。でも、今の治療で良くならない人が、新しい治療で別人のように良くなるのを、たくさん見てきました。「自分は絶対に元気になる!」という強い気持ちを胸に、前を見て進んでいって欲しいと思います。

(IBDプラス編集部)

新井勝大先生
国立成育医療研究センター 小児内科系専門診療部 消化器科 診療部長/小児IBDセンター長
新井勝大先生
1994年 宮崎医科大学(現:宮崎大学医学部)卒業
1995年 カリフォルニア大学アーバイン校産婦人科胎児生理学リサーチフェロー
1996年 在沖縄アメリカ海軍病院シニアインターン
1998年 Beth Israel Medical Center (米国) 小児科レジデント
2001年 Schneider Children’s Hospital(米国)小児消化器科フェロー
2005年 順天堂大学附属練馬病院 小児科准教授
2006年 国立成育医療研究センター 消化器科医長
2018年 国立成育医療研究センター 消化器科診療部長
2019年 国立成育医療研究センター 小児IBDセンター長(併任)

〈資格・所属学会〉
医学博士・小児科専門医・胃腸科専門医・日本小児栄養消化器肝臓学会認定医
日本小児栄養消化器肝臓学会:副理事長
日本炎症性腸疾患協会:理事
アジア環太平洋小児栄養消化器肝臓学会:理事、学術委員、国際渉外委員

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