その症状、放っておいて大丈夫? 1から学ぶ「IBDの合併症」-いろいろな症状編-

医師インタビュー2022/3/9

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ご自身の病気についてきちんと勉強している人でも、「IBDの合併症」については意外と知らないことが多いはず。IBDの専門医でも判断に迷うことがあるという合併症について、東京慈恵会医科大学 内科学講座/消化器・肝臓内科 主任教授の猿田雅之先生に、みなさんからの質問にお答えいただきました。今回は「いろいろな症状編」として、合併症と思われるいろいろな症状に関する質問をご紹介します。

関節の痛みを感じたら「腫れがあるか」「運動すると楽になるか」を確認

――合併症で膵炎を発症することはありますか

IBD患者さんの中には、無症状であるにもかかわらず膵酵素の数値が高い(無症候性の膵酵素上昇)人が、11~14%くらいいると言われています。

その中で実際に、膵炎を発症していることも少なくありません。クローン病では「胆石」の合併症が、健康な人に比べて2倍高いことがわかっており、その胆石に伴う二次性の膵炎もあれば、クローン病の病勢に伴って生じる膵炎もあります。クローン病は十二指腸に炎症を起こすことがあり、十二指腸は膵臓の出口とつながっているため二次性に膵炎を起こすこともあります。他にも、5-ASA製剤(メサラジン)や免疫調節薬(アザチオプリン、6-メルカプトプリン)、肛門病変などに使用される抗菌薬(メトロニダゾール)の副作用による膵炎があります。

また、IBDは自己免疫疾患であり、自分の免疫細胞が間違って自身の膵臓を攻撃してしまう「自己免疫膵炎」を合併することもあります。ですから、膵炎と言っても、いろいろな原因で起こっていますし、それぞれ治療法も異なりますので、まずは膵炎の原因を正しく突き止める必要があります。

膵臓の状態は血液検査で知ることができますが、その検査項目を通常の採血検査に入れている医師は多くありません。医師がIBDの合併症で膵炎が起こることを知っていれば、採血項目で膵機能も見ることが多くなり、見逃されることは減ると思います。実際に膵臓の酵素が高くなった場合は、膵臓の専門医に相談することもあります。

――合併症の関節炎とそれ以外の関節炎は、症状や治療法に違いがあるのでしょうか。判別する方法はありますか

IBDに伴って起こる腰や背中の痛み(腰背部痛)がありますが、それがIBDの合併症によるものなのかを見極めるのは大変難しいです。「機械的関節痛」と呼ばれる、いわゆるIBDとは無関係の関節痛は多くの場合、湿布を貼れば良くなります。しかし、IBDを伴って起こる関節の痛みは関節痛だけでなく、関節が腫れる「関節炎」を伴うことが多いです。要約すると、触るだけで痛く、パンパンに腫れている場合は関節炎である可能性が高く、触ると痛いけれど、腫れていない場合は関節痛である可能性が高いです。

関節痛と関節炎はMRIで見分けることができます。では、どのようなときにMRIを撮るのが適切かというと「炎症性腰背部痛」を認めるときです。以下の4つ以上が該当する場合、炎症性腰背部痛である可能性が高く、IBDの合併症の関節炎である可能性が高くなります。

  • 40歳になる前から腰が痛い
  • 潜在性に発症する
  • 運動すると楽になる
  • 安静にしていても改善しない
  • 夜に痛みが出るが、起き上がると改善する

炎症性腰背部痛を放置して「脊椎関節炎」が持続すると骨同士が癒合して、腰が動かなくなり強直性変化を認めることもあるので注意が必要です。脊椎関節炎は、抗TNFα抗体製剤が有効なことが多く、関節の破壊を止めることができます。

腰痛が起こったらまずは「安静にしていたらよくなるのか、それとも余計に痛くなるのか」を確認し、主治医の先生にご相談ください。

――合併症の関節痛が続く場合、IBDの治療を継続すれば良くなるのでしょうか。鎮痛薬以外の対処法はないのでしょうか

先ほど説明した通り、まずは「関節痛」と「関節炎」を見分ける必要があります。通常の関節痛であれば、マッサージや整体で改善することも多いです。一方、関節炎の場合でも、初期の段階では鎮痛薬で痛みを抑えることができます。しかし、鎮痛薬を常用すると腸の状態が悪くなることが知られているので、頓服(とんぷく)であれば問題ありませんが、「1日3回を3か月」というような使い方はIBDでは絶対にやってはいけません。そのため頓服で抑えられないようなケースは、短期的にステロイドを使ったり、腸の状態も悪い場合には抗TNFα抗体製剤を使うこともあります。関節の部位や炎症の程度によって治療が変わってきますので、主治医の先生とご相談ください。

これとは別に、「薬が原因の関節痛」もあります。例えばステロイドを飲むと関節痛が起こるという方もおりますので、新しい薬を飲み始めてから関節の痛みが出た場合は、主治医の先生に相談してみてください。

ただし、ステロイドの服用開始直後は何となくの「違和感」を訴える方は多くいますので、その段階では様子を見ることが多いです。ステロイドを減量していくうちに消えていくものであれば、それほど気にする必要はないと思います。反対に、痛みがどんどん強くなっていくような場合は、ステロイドが合わないと判断し、早期の中止を検討します。

――関節炎は整形外科で診てもらっているという患者さんも多くおられますが、問題ありませんか

現在かかっている整形外科の先生がIBDも詳しければ良いのですが、「IBDについてよく知らない」「痛み止めが毎回出されるだけで不安」というような場合は、一度リウマチ膠原病内科に相談してみるのが良いと思います。リウマチの専門医は炎症から関節の痛みが起こるということを熟知していますので、IBDという病気をきちんと理解したうえで治療してくださることが多いです。

IBDの治療が上手くいけばうつ状態が改善する可能性も

――クローン病の口内炎は歯周病の治療で治るのでしょうか

これは難しいところですね。クローン病では「再発性アフタ(口内炎)」が起こることが知られています。一方で、口内炎は口内の雑菌が原因でできることもあります。例えば、クローン病で具合が悪く、食事も取れない、水を飲むだけでおなかが痛くなるというような場合は、口の中が乾燥して口内環境が悪くなり、炎症を起こしやすくなります。そのような場合の口内炎は、歯磨きなどの口腔ケアをしっかりしていただくことで良くなる場合もあります。一方、クローン病の病勢に伴う再発性の口内炎の場合は、クローン病の治療が上手く行くと、良くなることが多いです。

歯があたる頬の内側、歯肉など、一般的な口内炎ができやすい場所にできたものは、通常型であることが多いと思います。クローン病の口内炎は、舌の真上や真裏など歯が直接当たらない場所や、火傷などもしにくい場所にできることが多いです。また、通常の口内炎は2~3日すれば自然と良くなることが多いですが、クローン病の口内炎は1週間以上経っても全く良くならず、サイズも1cm程度と大きいものが多いです。

補助療法としてはステロイド系の軟膏や、亜鉛などの軟膏、うがい薬などを使用します。絶食期間が長く栄養状態が良くない患者さんは、ビタミンBを補給することで良くなることもあります。このように、口内炎の発症にはいろいろな原因が考えられますので、できた場所などから推測して、治療していく必要があると考えます。

――合併症でうつ病を発症することはありますか

あると思います。人間は、慢性的に不安が続くとうつ状態になってきます。IBDでも、病気が良くならない、仕事や学校に行けない、ベストパフォーマンスが出せない、などといった不安が続くことで、うつ状態になっていく方がおられます。ですから、うつ病を発症することもあると考えます。

また、近年では「脳腸相関」という言葉が注目を集めています。脳と腸はストレスをホルモンで連絡し合っており、これらのホルモンを「ストレス関連ペプチド」と呼びます。慢性的に炎症状態が続くと、このストレス関連ペプチドが腸の中に分泌されて脳に作用し、うつが起こることが知られています。IBS(過敏性腸症候群)では、「またおなかが痛くなるかもしれない」とずっと不安を感じることでもうつ病を発症することがありますが、これにもストレス関連ペプチドが関係していると言われています。また、これとは別に、「IBDでは腸内細菌のバランスが乱れる」ことが知られています。何度も炎症を起こすことで腸内細菌のバランスが崩れ、腸の症状を起こす訳ですが、近年、このバランスの悪さがうつ病を引き起こす可能性も指摘されています。

――腸の状態が良くなることで、うつ病が改善する可能性もあるということでしょうか

はい、そうです。しかし、うつが悪くなり過ぎてしまうと腸の状態が良くなってもうつ症状だけが残る場合があります。ですから、うつがひどくなる前にIBDの治療をきちんと行うことが大切です。また、うつ病をIBDより前に発症している患者さんもおり、IBDの診断がつくまでに何年もかかったという方もおられます。このような方は特に、診断がついたらすぐに適切なIBD治療を行い、症状を早く改善させることが大切だと考えます。

――眼の病変としてはどのようなものが多いのでしょうか。治療は眼科で良いのでしょうか

眼の病変の合併症は4~10%の方に起こると言われています。「上強膜炎」は、IBDの病態と連動する眼科疾患として知られています。また、「強膜炎」は速やかにステロイドや免疫を抑制する薬を使わないと悪化してしまうとされています。「ぶどう膜炎」は、他の合併症と併発することが多いと言われ、多くの場合ステロイド治療を行います。「虹彩炎」も認めることの多い合併症です。

IBDに合併する眼の合併症は、一般的には「虹彩毛様体炎」と呼ばれる表面の軽い炎症である場合が多く、かすみ目や充血で済むことが多いです。ただ、眼の病変は非可逆性のものが多いので注意が必要ですし、ステロイド治療を受けている方は、ステロイドが原因で起こる白内障や緑内障だけでなく、眼の中にカビなどが入り込む「眼内感染症」を起こして失明する可能性もあります。眼に違和感がある場合は直ちに眼科を受診してください。そして、いずれの場合も、眼科医にIBDがあることをきちんと伝えるようにしてください。

――最後に、IBD患者さんとご家族へのメッセージをお願いいたします

近年、IBDの薬が多様化して腸のコントロールがかなりできるようになってきた一方、合併症に悩まされる患者さんが非常に多くなってきたと感じています。合併症はさまざまな原因で起こるため、医師でも診断が難しいのが現状です。ですから、決して「これくらい大丈夫だろう」と思い込まずに、いつもと違う症状が少しでもあれば、気軽に主治医の先生に相談してください。「腸のコンディションが良く、合併症もないこと」が、本当の健康を取り戻した状態と言えます。それを目指して、みなさんにはこれからも治療をがんばっていただきたいと思います。

(IBDプラス編集部)

猿田雅之先生
東京慈恵会医科大学 内科学講座/消化器・肝臓内科 主任教授
猿田雅之先生
1997年 東京慈恵会医科大学 医学部医学科卒業
2002年 東京慈恵会医科大学 第一内科学教室助手
2005年 米国Cedars-Sinai Medical Center, Inflammatory Bowel Disease Center博士研究員
2012年 東京慈恵会医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科 診療医長、講師
2013年 東京慈恵会医科大学(学校法人 慈恵大学)大学評議員
2016年 東京慈恵会医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科 主任教授

〈資格・所属学会〉
医学博士、日本内科学会(認定内科医、総合内科専門医、指導医)、日本消化器病学会(消化器病専門医、指導医、財団評議員)、日本消化器内視鏡学会(内視鏡専門医、指導医、学術評議員)、日本カプセル内視鏡学会(カプセル内視鏡認定医、指導医)、日本消化管学会(胃腸科専門医、指導医)、日本小腸学会(理事)、日本炎症性腸疾患学会(総務委員会委員長)、厚生労働省研究事業 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班 研究分担者、NPO法人 日本炎症性腸疾患協会(CCFJ)理事、英文誌 Internal Medicine(日本内科学会英文学会誌)編集委員等、所属学会および資格・役職多数。

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