自分を責めないで。専門医が語る「再燃」について知っておいていただきたいこと

医師インタビュー2022/3/30

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寛解中でも、ふとした瞬間に頭をよぎる“再燃”。「もしかしたら再燃かも?」と不安な気持ちでこの記事を読まれている方もいるかもしれません。再燃してしまって「あれを食べなければ…」と後悔している方もいるかもしれません。しかし、東邦大学医療センター佐倉病院消化器内科・教授の松岡克善先生は「再燃したからと自分を責めないで」と語ります。そんな松岡先生に、再燃に関するいろいろな質問にお答えいただきました。

再燃の原因は、やはり「食事」と「ストレス」?

――再燃のしやすさと年齢や病歴の長さは関係しますか

潰瘍性大腸炎に関しては、年齢と再燃のしやすさには明確な関連はないと思います。寛解の期間が長い患者さんは再燃リスクが低下すると思います。一方で、ステロイドを使わなければならないような大きな再燃は、発症1年以内の患者さんに多いです。つまり、「病歴が短い人の方が大きく再燃しやすい」という印象です。ただし、病歴が長いからといって、再燃リスクが無くなるわけではありません。

クローン病については、明らかに年齢とともに再燃は減ってきます。50歳を越えて再燃する患者さんはほとんどいません。ただし、クローン病の場合は、腸管のダメージによる狭窄などの症状が、年齢とともに出てくる場合があります。そのため、年齢とともに病気の活動性が低下する一方、手術になるケースもありますね。

――再燃は環境の変化や日常のストレスとも関係するのでしょうか

再燃とストレスに関する研究は2つしかありません。1つの論文は、「すごく強いストレスは潰瘍性大腸炎の再燃リスクを少し上げる」という結果でしたが、もう1つの論文では、あまりそのことは再現されておらず、研究結果だけ見ると「ストレスはあまり再燃に関与していない」と言えます。しかし、日常臨床では、やはり「ストレスを感じた後に再燃した」とおっしゃる患者さんが非常に多いです。

これをどう解釈するかは非常に難しいところですが、考えられる可能性として、1つは「本当にストレスで再燃していた患者さんがいる」ということ、そしてもう1つは、「ストレスが原因で再燃したと思い込んでいる」ということが考えられます。

――再燃の原因を食事やストレスと関連付けてしまうということですね

そうですね。患者さんは「何が原因で再燃してしまったんだろう。次の再燃を防ぐにはどうしたらいいんだろう」と、すごく考えると思うんですよね。その結果、食事やストレスに行き着くと思うんですが…実際にデータだけ見ると、そこまで大きな関連性はないんです。

――「ストレスが多いときや食事の内容で下痢の回数が増減しますが、これも再燃なのでしょうか」というご質問もありますが…

IBDではない方でもストレスが多いときや、脂っこいものを食べたときに下痢をすることはあります。ただ、このような時の症状は一過性のことがほとんどです。一方で、症状が1週間以上続く場合は再燃している可能性も考えられます。症状が悪化してくるようでしたら、早めに主治医の先生にご相談ください。

再燃しそうになった時、すぐやるべきことは?

――先生ご自身が「再燃の予兆」と感じるサインや症状があれば教えてください

全ての患者さんに「これが再燃の予兆です」と伝えられるサインはありません。多くの患者さんは発症して時間が経つうちに、ご自身で再燃のサインを見つけていかれるように思います。

また、病院で受けられる検査に「便中カルプロテクチン」という検便の検査があります。これは、症状が出る前の軽い腸の炎症も検出できる可能性があるので、再燃の予兆を知る意味では良い検査であると考えます。

――再燃しそうになった時、病院に行く以外ですぐやるべきこと、気を付けることがあれば教えてください

潰瘍性大腸炎は直腸から口の方向に向かって炎症が起こるため、お尻に近い位置の炎症がメインになります。ですから、潰瘍性大腸炎の患者さんは、少しでもおかしいと思ったら、処方されている座薬や注腸剤など、「お尻から入れる薬剤」をすぐに使ってください。それにより、再燃を食い止めることができますし、すでに再燃してしまっていた場合でも、小さな波で抑えることができます。私は潰瘍性大腸炎の患者さんには必ず寛解導入時に、お尻から入れる薬剤を処方して、ご自身で使い方を覚えてもらっています。再燃しそうなときは、すぐにお尻から入れる薬剤を使用する、これは非常に大事なポイントだと思います。

クローン病は、間違いなく食事が病状に影響していると考えます。再燃しそうなときはいつも以上に食事に気を付けていただきたいですね。

――経腸栄養剤と食事の割合など含め、具体的にどのようにアドバイスされていますか?

私はあまりエレンタールだけにするという指導はしていません。まず脂質を控えていただき、エレンタールとの併用をお願いすることが多いですね。エレンタールを朝・昼・晩で1パックずつ取っていただければ900キロカロリー(1パック300キロカロリー)になりますので、その分、食事を減らしていただくようにしてもらっています。

――再燃を防ぐために寛解期に心がけるべきことなどがあれば教えてください

多くの患者さんは「食事とストレスを何とかしよう」と考えます。でも、実際に食事とストレスのコントロールって、すごく難しいですよね…。寛解期に毎日欠かさず食事制限を続けるのは不可能だと思いますし、日常のストレスを自分で無くすというのも無理だと思います。特に潰瘍性大腸炎においては、食事もストレスもそこまで再燃には関与していないことがデータで示されています。ですから、そこをご自身で何とかしようとするよりも、まずは治療をきちんと続けていただくことが大切です。それはご自分の意思できちんとできることですし、再燃のリスクを下げると、データでもきちんと証明されています。

――CRPの値など血液検査からわかる再燃の予兆、また、体温など血液検査以外でわかる指標があれば教えてください

潰瘍性大腸炎の場合はCRPの値はあまり参考にならないことが多いですね。再燃の予兆という意味で一番鋭敏なのは、便中カルプロテクチン検査だと思います。

クローン病はCRPが上がりやすいので、再燃しているかを知る指標になると思います。便中カルプロテクチン検査は最近クローン病の患者さんでも使えるようになりましたし、新しい血液検査であるLRGの値を見るのもいいかもしれないですね。これらの検査は症状がなくても炎症があれば上がってきますので、いろいろな検査と組み合わせて行うことで、より正確に再燃しているかを知ることができます。

体温は相当悪くならないと変化しないので、あまり当てにならないと思います。潰瘍性大腸炎の患者さんは、下痢の回数や便に血が混じっていないかといった症状に加えて、排便を我慢できなくなる、すぐにトイレに行きたくなるといった「切迫感」が出る方が多いようです。

クローン病の患者さんは下痢の回数とか腹痛ですね。また、腹部症状がなくてもご自身で何となく体調の変化に気付かれる方も多いように思います。

いずれにしても、いつもと変わったことがあったら主治医の先生に伝えるようにしてください。

――血便や軟便などがどのくらい続いたら再燃と考えるべきでしょうか

血便がある場合は、少なからず炎症があります。程度の差はありますが、再燃していると考えて良いと思います。下痢や軟便は、IBD患者さんに限らずよく見られる症状ですが、1週間以上続く場合は再燃している可能性がありますね。

再燃につながるNG行動はある?定期的に再燃してしまう原因は?

――再燃につながるNG行動などがあれば教えてください(お酒を飲む、日勤から夜勤に変わる、風邪をこじらせる、海外旅行など)

アルコールと再燃の研究は、潰瘍性大腸炎において過去に2つしかありません。そのうち1つは「若干再燃のリスクを上げる」という結果で、もう1つは「あまり関係していない」という結果でした。トータルで考えると、あまり関係していないように思います。ですから、寛解期にお酒を飲んではいけないという理由は、あまりないと考えます。

日勤から夜勤に変わるという点についても、あまり影響しないと思います。

風邪をこじらせないようにコントロールするのはなかなか難しいですよね。ですので、まずは、風邪にかからないようには気を付けていただきたいと思います。また、1つ注意していただきたいのが、風邪薬で「非ステロイド性解熱鎮痛薬(NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)」というものがあるのですが、これは潰瘍性大腸炎の再燃リスクを上げることが研究で明らかになっています。具体的には、イブプロフェン、ロキソプロフェンなどがこれにあたります。痛み止めとしても処方されますし、市販薬にもありますのでご注意ください。ただし、「長期(1週間以上)に連続での服用は良くない」とされているので、短期間(数日)の服用は、あまり問題ないと思います。また、おなかの風邪をきっかけに再燃してしまう人がいます。「感染性胃腸炎をきっかけに再燃リスクが上がる」ことも報告されているので、生牡蠣を食べるとか、感染性胃腸炎の原因になるようなことには注意しましょう。

海外旅行も問題ありませんが、感染性胃腸炎になると大変なので、飲み水や食事には気を付けるようにしてください。また、薬を持っていくことや飲むことを忘れないようにしてください。旅行中に再燃したときに備えて、座薬や注腸剤も持参したほうがよいでしょう。

――「治療をきちんと続け、低脂質・低残渣と食事にも気を使っていても定期的に再燃します」という質問なのですが、これはどうすることもできないのでしょうか

それが、その方の「病気のタイプ」だと言えます。つまり、何かをしたことが原因で再燃したのではなく、「病気の流れでそうなった」ということに過ぎません。きちんと治療を受けていたのに再燃した場合は、一度主治医の先生と今後の治療について話し合っていただくことが大切だと考えます。

――初発時と再燃時で薬剤は変わりますか

潰瘍性大腸炎もクローン病も、初発で寛解導入をして寛解維持の治療が始まるわけですが、そこで再燃した場合は、寛解維持の薬が不十分だったと判断し、薬を変えることが多いですね。必ずしも薬の「種類」を変えるとは限らず、「量」だけ変えることもあります。

――寛解中に5-ASA製剤のみ処方されている場合でも、使っているうちに耐性ができて再燃してしまう可能性はあるのでしょうか

はい、あります。耐性と言って良いかはわかりませんが、きちんと服用していても潰瘍性大腸炎が再燃することはあります。「5-ASA製剤で抑えているけど、その力を上回るような再燃が起きたときに症状が出てしまう。それでまた、いろいろな治療をして再燃が治まれば、また5-ASA製剤のみに戻せる」という感じですね。ですから、5-ASA製剤が効かなくなったわけではないのです。しかし、再燃の頻度があまりに多かったり、小さな再燃の波で治まらないような場合は、他の治療を検討する必要があると思います。

クローン病は、5-ASA製剤の効果があまり期待できないので、5-ASA製剤のみで抑えられない場合は、すぐに別の治療に切り替えたほうが良いと思います。

――再燃してしまったときの心構えを教えてください

潰瘍性大腸炎の方は、いざという時にお尻から入れる治療をご自身でできるように、クローン病の方は、調子が悪くなったら食事に気を付ける、ということを念頭に置いて過ごしていただけたらと思います。

――注腸剤が上手く入れられなくて困るという相談を受けることがありますが、先生はどのようにアドバイスされていますか

確かに注腸剤は、そのような訴えが多いですね。すぐに出てしまっても、少しでも入れば、その分炎症は治まりますので、根気よく使い続けることが大切です。炎症が治まれば、だんだん保持できるようになって、さらに炎症が治まっていくという、「良いサイクル」に入りやすいです。

注腸フォームの「レクタブル」が登場してからはこのような相談が減ったので、液体に比べてフォーム剤は、使いやすいのかなと思っています。

――「栄養指導を受けたことがない」という患者さんも多いようですが、食事についてはどのようなアドバイスをされていますか

潰瘍性大腸炎の患者さんには「データとして見た場合には、食事はそこまで病気に影響ない」ということをまず理解していただいた上で、「これを食べると調子が悪くなる」という食べ物は避けていただくようにお伝えしています。あとは、健康な方が食べても下痢をするような、脂っこいものや辛いものにも注意してもらっていますね。

クローン病の患者さんは食事がとても大切なので、まずは栄養指導で「理想的な食事」を学んでいただきます。もちろん、毎日続けるのは難しいので、調子が悪いときには理想的な食事に近付ける努力をしていただくようにお願いしています。

再燃は誰のせいでもないことを知り、適切な治療の継続を

――最後に、IBD患者さんやご家族へのメッセージをお願いいたします

IBDの根治治療はまだ見つかっていませんが、適切な治療を行うことで炎症を抑え込むことができます。炎症が治まれば、基本的には普通の日常生活が送れます。ですが、あくまで炎症を「抑えている」だけなので、治療はしっかり継続してください。また、「自分の病気を正しく知る」こともすごく大切です。インターネットに溢れる情報に左右されるのではなく、正しい知識を学び、その上でどうやって病気と付き合っていくのか、ご自身で考えていけば良いと思うのです。そして、困ったことや悩むことがあったら、どんなに細かいことでもいいので、主治医の先生に相談してください。

再燃は誰のせいでもありません。「ストレスをためないように、食事にも気を付けなければ…」と思う気持ちはわかりますが、自分を責めたり、頑張り過ぎたりしないようにしてくださいね。無理のない範囲でセルフマネジメントをしつつ、それでも再燃したら主治医の先生に相談しよう、くらいの心構えでいるのが良いと思います。

(IBDプラス編集部)

松岡克善先生
東邦大学医療センター佐倉病院消化器内科 教授
松岡克善先生
1996年 慶應義塾大学医学部卒業
2000年 慶應義塾大学医学部大学院博士課程医学研究科
2004年 慶應義塾大学医学部消化器内科助教
2005年 University of Pittsburgh, University of North Carolina at Chapel Hill留学
2009年 慶應義塾大学医学部消化器内科助教
2014年4月~ 慶應義塾大学医学部消化器内科講師
2014年10月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科消化管先端治療学講座・講師
2017年 同・准教授
2018年 東邦大学医療センター佐倉病院消化器内科 教授

〈所属学会〉
日本内科学会
日本消化器病学会
日本消化器内視鏡学会
日本消化管学会
日本消化器免疫学会
日本臨床免疫学会
日本炎症性腸疾患学会
日本臨床疫学会
日本小腸学会
日本大腸肛門病学会
日本臨床栄養代謝学会
Asian Organization for Crohn’s and Colitis

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