IBDの新治療開発への貢献が期待される高機能「ミニ腸」を開発、世界初

ニュース2022/6/29

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IBD発症にも関係する「自然免疫応答」を再現できるミニ腸は作れるか?

国立成育医療研究センター・再生医療センターの阿久津英憲部長、東京農業大学食品安全健康学科の岩槻健教授、弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座の袴田健一教授らの研究グループは、腸管の免疫機能をもつ高機能化した「ミニ腸」の開発に、世界で初めて成功したと発表しました。

自然免疫細胞である「マクロファージ」は、さまざまなウイルスや細菌感染症に対する生体防御において非常に重要な役割をする一方、慢性炎症や自己免疫疾患などの病気にも深く関わっています。

体内の免疫系の細胞のうち、約70%が腸管に存在すると言われており、自然免疫は腸管でも大変重要な役割を担っています。病原体を認識・貪食し、活性化したマクロファージは、さまざまサイトカインを分泌し、他の免疫細胞を活性化します。こうした一連の自然免疫応答は、腸管の恒常性維持に必須であり、私たちの健康維持に欠かせない機能です。また、炎症性腸疾患(IBD)では、腸管の自然免疫応答の乱れが発症に関係しているとされています。

昨今、ヒトの腸管モデルとして、試験管内で幹細胞から作るミニチュア臓器「3次元化組織(オルガノイド)」の研究が、世界中で活発に行われています。同研究グループの阿久津部長らも、2017年に「ミニ腸」を開発しています。しかし、自然免疫応答も観察できるオルガノイドモデルはありませんでした。

開発されたミニ腸は「腸管免疫応答」や「炎症性疾患」などの病態を再現可能

研究グループは今回、ミニ腸にマクロファージを生着させることに成功。「腸管の免疫機能をもつ高機能化したミニ腸」の開発に成功しました。試験管内で自然免疫応答を評価できるミニ腸はこれまで存在せず、世界で初めての成果だということです。

今回開発されたミニ腸は、生体内における腸管免疫応答や炎症性疾患などの病態を再現できる革新的なバイオモデルであり、創薬研究開発への活用も期待されます。また、IBDと同じく、腸の炎症が長く続く「好酸球性消化管疾患」では、ある種の食物抗原に反応して炎症が起きることがわかってきています。

「本成果を活用し、生きた腸の中での免疫細胞の詳細な働きを試験管内で観察ができるようになったことで、同疾患の診断・治療法の開発へ大きく貢献すると考えられる。また、新型コロナウイルスも含め、腸管内ウイルス感染症の研究や、腸内細菌の研究などにも活用していく」と、研究グループは述べています。

(IBDプラス編集部)

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