「シリコン製剤」が潰瘍性大腸炎の大腸と脳の症状を緩和、モデルマウスで確認

ニュース2023/9/16 更新

  • Twitterでつぶやく
  • いいね!
  • LINEで送る
  • URLをコピー URL
    copied

開発中の「シリコン製剤」は抗酸化物質である水素を発生し続ける

大阪大学産業科学研究所の小林悠輝特任准教授と小林光特任教授らの研究グループは、「シリコン製剤」が抗酸化および抗炎症作用を介して、潰瘍性大腸炎の大腸と脳の症状を緩和することを明らかにしたと発表しました。

潰瘍性大腸炎では、消化管の炎症が脳腸相関を介して脳機能にも影響を与えることから、増悪期にうつ症状や不安障害などの精神症状を発症する危険性が高いとされています。また、これらの精神症状は潰瘍性大腸炎の再燃に深く関与すると考えられています。そのため、腸と脳の両方の症状緩和に有効な治療薬の開発が求められています。

研究グループが開発しているシリコン製剤は、経口摂取で水素を腸管で大量かつ持続的に発生し続けることができるのですが、「水素」は有害な活性酸素を特異的に消滅させる「抗酸化物質」です。さらに、「直接患部に持続投与できる」「水素は副作用の報告がない」「パーキンソン病モデルマウスで神経保護作用を示した」ことから、寛解導入および長期寛解維持が可能な潰瘍性大腸炎の治療薬となる可能性が高いと考え、研究を行いました。

シリコン製剤が水素の枯渇を防ぎ、大腸の炎症や酸化ストレスの蓄積を緩和する可能性

研究の結果、シリコン製剤は、モデル動物の炎症による大腸短縮や腸管構造の崩壊を緩和し、全身炎症も抑制していました。また、病態の悪化やがん化には酸化ストレスの蓄積も大きく関与していますが、シリコン製剤は血中の酸化ストレス亢進や、大腸の過酸化脂質蓄積を緩和していました。これらの症状緩和効果は「水素の抗酸化・抗炎症作用」が大きく関わっていると考えられるそうです。

また、今回の研究で、潰瘍性大腸炎では抗酸化物質だけでなく水素も減少することが判明。しかし、シリコン製剤を投与したマウスの大腸では投与していないマウスと比べ、水素の減少が抑制されていたということです。これらの結果から、シリコン製剤は患部の大腸で水素を効率よく発生し、炎症による水素の枯渇を防ぎ、患部の炎症や酸化ストレスの蓄積を緩和したと考えられるとしています。

潰瘍性大腸炎の新規治療薬となることに期待

さらに研究を進めた結果、シリコン製剤は「水素と活性硫黄による抗酸化・抗炎症作用を介して潰瘍性大腸炎の症状を緩和」「知覚・精神症状の緩和にも作用している」ことが明らかになりました。

今回の研究により、シリコン製剤が潰瘍性大腸炎モデルマウスの大腸と脳の症状を緩和することが明らかにされました。「シリコン製剤は、寛解と再燃の悪循環を断ち切ることのできる新たな治療薬候補として、大いに期待される」と、研究グループは述べています。

(IBDプラス編集部)

この記事が役立つと思ったら、
みんなに教えよう!

会員限定の情報が手に入る、IBDプラスの会員になりませんか?

IBDプラス会員になるとこんな特典があります!

会員登録

  • 1. 最新のニュースやお得な情報が届く
  • 2. 会員限定記事が読める
  • 3. アンケート結果ダウンロード版がもらえる

新規会員登録(無料)

閉じる
レシピ特集
レシピ特集をみる