腸管の粘膜治癒に重要な分子を腸管上皮細胞で特定、新規IBD治療への応用に期待
ニュース | 2022/12/22
「BLT1受容体」は腸管粘膜において、悪さをするのか?粘膜治癒に働くのか?
富山大学の研究グループは、腸管上皮細胞の「BLT1受容体」が、傷付いた腸管粘膜の治癒を促進することを初めて明らかにしたと発表しました。
腸管での急性・慢性炎症は、びらんや潰瘍として「粘膜の傷」を引き起こします。これまでに研究グループは、粘膜治癒において好中球が重要な役割を担っていることを発見していましたが、詳細なメカニズムは不明でした。
好中球はアレルギー反応を悪化させたりする「ロイコトリエンB4(LTB4)」を分泌し、LTB4はBLT1に結合して炎症環境への好中球を含む免疫細胞の遊走(移動)を促します。炎症性腸疾患(IBD)患者さんの腸管粘膜においてLTB4の上昇が見られたことから、LTB4-BLT1経路の活性化は、腸管での炎症病態の形成に関与すると推察されていました。
一方、粘膜治癒では、炎症を引き起こすと言われる因子が上皮細胞に作用し、治癒を促すことが明らかにされてきています。しかし、粘膜治癒にLTB4-BLT1経路がどのように関わっているのかは不明でした。そこで研究グループは今回、この経路の粘膜治癒における役割を検証しました。
炎症を引き起こすだけと考えられていたBLT1受容体が、実は粘膜治癒を促していた
IBD患者さんと腸管粘膜を傷付けたマウスの腸管粘膜を調べたところ、炎症環境下において腸管上皮細胞でのBLT1受容体発現が上昇していたことから、「BLT1受容体の活性化が腸管上皮細胞の移動を促進する」ということが判明しました。
さらに、「BLT1が傷害された腸管粘膜の粘膜治癒において重要な役割を担う」ということも明らかになりました。
従来、炎症を引き起こすだけとされてきたLTB4-BLT1経路が、実は粘膜治癒を促すという今回の知見は、複雑な粘膜治癒イベントの解明に貢献するものです。
「IBDに対する、有用で新しいコンセプトを持つ治療戦略の創出への応用が期待される」と、研究グループは述べています。
(IBDプラス編集部)
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