縄文人の「うんちの化石」のメタゲノム解析に成功、現代人の腸内環境改善に役立つ可能性

ニュース , 腸内細菌を学ぶ2024/1/30

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うんちの化石から得られる古代DNAのゲノム配列を調べることは困難だった

国立遺伝学研究所を中心とする研究グループは、縄文時代のうんちの化石(糞石)4検体から取得した古代DNAを用いたメタゲノム解析を日本で初めて実施し、その結果を発表しました。

過去に生存した生物の遺物である骨や糞石には古代DNAが残存しています。糞石中の古代DNAを解析することにより、古代生物のゲノム配列や古代生物の腸内に存在した細菌やウイルスに由来するゲノム配列を調べられることが明らかになってきました。つまり、糞石中の古代DNAから細菌やウイルスを特定することで、古代生物の腸内環境を調べることができるのです。

縄文人については、これまでに歯や骨から古代DNAを取得し、ゲノム配列や口腔内ウイルスを調べる研究は行われてきた一方で、糞石から得られる古代DNAのゲノム配列の報告はありませんでした。この理由として、糞石中の古代DNAは断片化して量も激減しているため、塩基配列を決定すること自体が困難だったことが挙げられます。

縄文人の便そのものに含まれている「腸内由来の細菌」からDNAを得ることに成功

研究グループは今回、糞石が大量に出土していることで有名な福井県の鳥浜貝塚からの10検体の糞石(5,500〜7,000年前、縄文前期)を分析することにより、比較的多くのDNAを得られる糞石試料を選出することに成功しました。そのうちの4検体についてメタゲノム解析を実施し、縄文人の腸内環境に関する考察を行いました。

糞石からDNAを抽出し、次世代シークエンサーで塩基配列を決定しました。取得した配列データを用いて既知の細菌やウイルスの配列との比較を行ったところ、現代人の腸内に存在する細菌やウイルスと類似の配列が多数検出されたということです。現代人とイヌなどの他の動物では細菌やウイルスの種類が異なることから、鳥浜貝塚から出土した糞石がヒトの糞便に由来するものであることの強い証拠となります。

また、検出されたウイルス配列の分類群を見てみると、ヒトを宿主とするウイルスよりも細菌を宿主とするウイルス(ファージ)の方が多く存在することが判明しました。これは、ヒトの腸壁から乖離し、糞便に混ざった細胞からのウイルスDNAが検出されたのではなく、「糞便そのものに含まれていた腸内由来の大量の細菌」から得られたウイルスDNAであることを示しているということです。

現代人の腸内環境にとって重要な要素を知るヒントが見つかる可能性

縄文人は約1万6,000年前から約3,000年前まで日本列島に住んでいた人々で、農耕民を主な起源とする現代の日本人を含む東アジア人集団とは異なるゲノムを持っています。そのような特性をもつ縄文人の腸内環境と、現代の日本列島に住む人々の腸内環境を比較することで、「現代人の腸内環境にとって重要な要素は何か?」を突き止めるヒントが見つかる可能性があります。

「今後は本研究手法を他の遺跡から出土した糞石にも応用することで、解読された細菌やウイルスのゲノム配列から縄文人の健康状態を推定するだけでなく、糞石由来の摂食物DNAを分析し、縄文人の腸内環境について詳細な分析を進めるとともに、腸内細菌やウイルスの長期的な進化を明らかにしたいと考えている」と、研究グループは述べています。

(IBDプラス編集部)

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