ビフィズス菌などの善玉菌のみを増殖させる「次世代型プレバイオティクス」候補を発見
ビフィズス菌だけを選択的に増殖させるオリゴ糖を発見
近畿大学生物理工学部食品安全工学科の栗原新准教授、新潟大学農学部農学科 食品科学プログラムの中井博之准教授らの研究グループは、ビフィズス菌を選択的に増殖させることのできる「次世代型プレバイオティクス」となり得るオリゴ糖を発見したと発表しました。
プレバイオティクスは、腸内環境を改善する目的でサプリメントや食品添加物として経口摂取されますが、大腸まで到達する必要があるため、ヒトには消化されない性質を持つ「難消化性糖質」が使われています。しかし、大腸に到達しても、腸内に常在するさまざまな細菌(腸内常在細菌)に横取りされてしまい、目的の善玉菌に行きわたらない可能性があります。また、近年の研究で腸内常在細菌がヒトに悪影響を与えていることも明らかになっており、プレバイオティクス開発時に、悪い働きをする腸内常在細菌が増殖しないよう気を配る必要があります。
研究グループは、これらの課題を解決するため、特定の善玉菌だけを増やすことができる「次世代型プレバイオティクス」の開発を目指して研究を行いました。
発見したオリゴ糖に、偽膜性腸炎の原因菌抑制効果を確認
まず、ヒト腸内常在菌叢のうち、菌数の多い27菌種とビフィズス菌・乳酸菌・病原菌を試験管内で培養し、このうち、ビフィズス菌だけを選択的に増殖させるオリゴ糖「ガラクトシル-β1,4-ラムノース(以下、GalRha)」を、11種類のガラクトオリゴ糖の中から発見しました。さらにビフィズス菌を、偽膜性腸炎の原因「ディフィシル菌」とともにGalRhaを含む培地で培養したところ、ディフィシル菌の増殖が抑制されたということです。
これらの結果から、GalRhaとビフィズス菌を組み合わせることにより、偽膜性腸炎の原因となるディフィシル菌の生育が抑制されることが明らかになりました。
クローン病など、さまざまな疾患の治療につながる可能性
今後、投与量や投与方法を工夫し、ヒトの臨床試験を行うことで、次世代型プレバイオティクスを活用した偽膜性腸炎の新たな治療法の開発が期待されます。また、同様の手法を用いることで、ビフィズス菌のみならず、乳酸菌、酪酸菌、アッカーマンシア菌などの善玉菌を選択的に増殖させる技術を開発することもできます。
さらに、クローン病、糖尿病、肥満で特徴的に減少している腸内細菌を選択的に増殖させることで、これらの疾患を治療できる次世代型プレバイオティクスを開発できる可能性があるとしています。
一人ひとりに最適なオリゴ糖でつくるオーダーメイドプレバイオティクスの開発にも期待ができるとのことです。今後に期待したいですね。
(IBDプラス編集部)
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