潰瘍性大腸炎の「便移植療法」、ドナーが兄弟姉妹か同世代で長期治療効果高まる

ニュース2020/7/29

Twitterでつぶやくいいね!

3種類の抗生剤を投与し、細菌を減量してから腸内細菌叢を移植する「A-FMT療法」

順天堂大学大学院医学研究科消化器内科学の永原章仁教授、石川大准教授らの研究グループは、2014年7月より開始した臨床研究「潰瘍性大腸炎に対する抗生剤併用便移植療法」の長期経過を検証した結果、潰瘍性大腸炎(UC)患者さんと便提供者(ドナー)との関係が、治療効果と関連することを明らかにしたと発表しました。

便移植療法は健康な人の腸内細菌叢を用いて患者さんの腸内環境を改善する方法。感染性腸炎に対する効果が高く、欧米ではすでに実用化されています。UCにおいても副作用の少ない新たな治療法になるのではないかと注目を集めています。

一方、同研究グループが提唱した抗生剤併用便移植療法(Antibiotic FMT:A-FMT療法)は、便移植を行う前に抗生剤3種類(AFM:アモキシシリン、ホスミシン、メトロニダゾール)を投与して細菌量を減らした腸内に健康な腸内細菌叢を移植する方法で、2014年7月から臨床研究として開始されています。

さらに研究グループは、便移植の治療効果に有効菌種(バクテロイデス種)が関連し、便移植をすることでドナーの腸内細菌が効率的に移植されて、腸内細菌の多様度が回復することも証明してきました。

AFM療法よりもA-FMT療法の治療効果が高く、再燃しづらいと判明

今回の研究では、さらに長期の治療効果を高めることを目的に、長期経過における患者さんとドナーの関係と、治療効果の関連について検証を行いました。臨床研究は2014~2017年の約2年半にわたり92例のUC患者さんを対象に行ったもので、患者さん自身が抗菌剤併用便移植療法(A-FMT療法)または抗菌剤療法単独(AFM療法)を選択しました。また、便移植は配偶者または親族のドナーの新鮮便から腸内細菌溶液を作成し、大腸内視鏡を用いて盲腸に1回投与しました。

AFM療法37例、A-FMT療法55例を実施した結果、治療後4週間の経過における有効性が、AFM療法群では48.6%(56.2%)であったのに対し、A-FMT療法群では56.3%(治療を完遂した症例に限ると65.9%)と、A-FMT療法の治療効果がより高いことが判明。さらに、治療効果を認めた患者さんの治療後2年間の経過では、AFM療法群に比べてA-FMT療法群の方が長期に治療効果が保たれ、再燃しづらいこともわかったそうです。

腸内細菌叢解析では、抗生剤と便移植を併用することで腸内細菌の移植がより効率的に達成できており、長期間にわたってドナーの腸内細菌叢が安定化(特にバクテロイデス種が定着)することが明らかになったとしています。

今後はカプセルを用いた簡易的な移植方法や腸内細菌を活性化する方法との併用法も検討

さらに、患者さんとドナーとの関係を解析したところ、「兄弟姉妹間移植であること」「患者とドナーの年齢差が10歳以内(同世代)であること」が、長期間の治療効果を高く維持していることが明らかになりました。

これらの結果から、兄弟姉妹の腸内細菌叢は「患者さんの疾患発症前の健康な状態に近い」と考えられ、患者さんにとって理想的な腸内細菌叢である可能性があるとわかりました。また、年齢層によって安定する腸内細菌の種類が異なるため、「年齢差が大きい場合に腸内細菌の長期の定着がうまくいかない」ことが予想されたということです。

今回の研究成果により、ドナーと患者さんとの相性の重要性が明らかになりました。この新しい知見は、個別化腸内細菌療法の発展につながると考えられます。研究グループは、「効果的な腸内細菌療法の確立はUCに限らず、腸内環境の異常が関与する疾患(アレルギー疾患、うつ病、自閉症、代謝疾患)に対して大きく寄与できると期待している。今後は、免疫と腸内細菌叢の相互関係メカニズムの解析を進め、カプセルを用いた簡易的な移植方法や腸内細菌を活性化する方法との併用法なども検討していく」と、述べています。

IBD患者さんの間でも注目度の高い便移植療法ですが、兄弟姉妹や年代など、腸内細菌にも相性があるということに驚きました。カプセルを用いた移植も、ぜひ実現化して欲しいですね。

(IBDプラス編集部)

Twitterでつぶやくいいね!

会員限定の情報が手に入る、IBDプラスの会員になりませんか?

IBDプラス会員になるとこんな特典があります!

会員登録

  • 1. 最新のニュースやお得な情報が届く
  • 2. 会員限定記事が読める
  • 3. アンケート結果ダウンロード版がもらえる

新規会員登録(無料)

関連する記事

閉じる
レシピ特集
レシピ特集をみる