ヒトの腸内フローラの中に、抗炎症物質を産生する細菌群を発見
酪酸産生菌で構成された「C細菌群」、日本人の腸内で少ないことも判明
早稲田大学大学院先進理工学研究科の細田至温後期博士課程生、同大理工学術院の浜田道昭教授らの研究グループは、同大理工学術院、東京大学、産総研・早大 生体システムビッグデータ解析オープンイノベーションラボラトリとの共同研究により、機械学習手法を使って、3つの型に分類される人間の「腸内フローラ」に共通して現れる細菌群を推定。さらに、その細菌群を構成する細菌が、健康維持に関わる「酪酸」を産生する機能を持つことを発見したと発表しました。
近年の次世代シーケンサー技術(DNAの配列を大量に高速で読み取る技術)の発達により、環境中に何種類も存在する細菌をまとめて調べる「メタゲノム解析」が可能になりました。これにより、ヒトの腸内フローラを調べる研究が発展し、腸内フローラに3つの型(エンテロタイプ)が存在していることがわかりました。エンテロタイプは、ヒト腸内フローラ研究では広く用いられ、食生活などとの関係の解明に役立てられています。
研究グループは今回、複数の国の成人被験者の腸内フローラデータを解析し、細菌群とエンテロタイプとの関係を知ることで、ヒト腸内フローラについて、新たな発見を試みました。
その結果、これまで知られていた3つのエンテロタイプそれぞれに対応する細菌群に加えて、どのタイプにも属する1つの細菌群を発見。研究グループはこの細菌群を「C細菌群(C-assemblage)」と名付けました。また、このC細菌群は「酪酸産生菌」と呼ばれる細菌で構成されていることも判明しました。「酪酸」は、抗炎症作用を持つと示唆されていることから、酪酸産生菌は健康に影響する菌として注目されています。さらに今回、このC細菌群が日本人の腸内では少ないこともわかったそうです。
今回発見されたC細菌群が、IBDでも注目される腸内フローラ研究の進展に役立つ可能性
糞便移植による炎症性腸疾患(IBD)の治療が注目されるなど、ヒト腸内フローラ研究のさらなる発展が期待されていますが、今後のヒト腸内フローラ研究において、今回発見されたC細菌群を考慮した解析も、今後行われる可能性があるのではないでしょうか。
研究グループは、これからもC細菌群の解析を続け、メカニズムが解明されれば、将来的には腸内フローラを利用した治療法の開発につながるかもしれない、と述べています。
今回発見されたC細菌群は、エンテロタイプに関係なく存在することから、人間にとって欠かせないものである可能性があるそうです。C細菌群の実態解明がIBDの病態解明につながることに期待したいですね。
(IBDプラス編集部)
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