潰瘍性大腸炎の「便意切迫感」を大腸内視鏡検査で簡便に評価する方法を発見
ニュース | 2024/1/22
便意切迫感に悩む患者さんは多いが、症状を客観的に評価する方法はない
筑波大学の研究グループは、潰瘍性大腸炎(UC)において、酸素飽和度イメージング内視鏡検査によって計測した大腸粘膜の酸素の量(酸素飽和度)が、UCの症状である「便意切迫感」と「大腸炎の重症度」を客観的に評価する新たな指標として有用であることを見出したと発表しました。
UC患者さんの多くは、下痢・血便・便意切迫感に悩まされています。そのため、治療では、それらの臨床症状がなくなることが初期の目標であり、その後、大腸内視鏡検査を実施して、大腸粘膜の炎症が十分に治まっていることが最終的なゴールとなります。
しかし、便意切迫感については生活の質が低下する患者さんが多いにも関わらず、その症状を客観的に評価する方法がありません。また、大腸内視鏡検査では大腸炎の重症度をスコアで評価しますが、医師間のばらつきがあり、病状の客観的評価が難しいことも問題となっています。
大腸炎の程度が強いほど、大腸粘膜の酸素飽和度が低くなることが判明
研究グループは今回、UCにおいて炎症が起こった大腸粘膜に生じる「低酸素」に着目しました。炎症粘膜では炎症細胞が大量の酸素を消費し、異常な血管の発達により粘膜への血流が低下するため、低酸素状態が生じます。そこで、UC患者さん100例に酸素飽和度イメージング内視鏡検査を実施し、大腸粘膜の酸素飽和度を計測しました。
その結果、臨床症状、特に便意切迫感が強いほど、直腸粘膜の酸素飽和度が低くなることを発見しました。また、内視鏡や顕微鏡で評価した大腸炎の程度が強いほど、大腸粘膜の酸素飽和度が低くなることも見出しました。
便意切迫感は下痢や血便とは異なり、直腸の炎症だけでなく、その機能低下などを含む多くの病因が関与するため、これまで客観的に評価する方法がありませんでした。同研究により、酸素飽和度イメージング内視鏡がUC患者さんの便意切迫感を客観的に評価し得る新しい手法になることが期待されます。
また、この評価法は内視鏡の観察モードを変更するだけで実施可能であるため、UC診療を専門としない消化器内科の医師でも容易にUCの重症度を客観的に評価でき、評価者に依存しない、より均質な結果を取得できると考えられます。
将来的に「大腸粘膜の酸素飽和度正常化」という治療目標が確立される可能性
今回の研究成果は「酸素飽和度イメージング内視鏡を用いた潰瘍性大腸炎活動性評価」として特許出願済みだそうです。研究グループは今後、同一のUC患者さんで「炎症の程度に応じてどのように大腸粘膜の酸素飽和度が変化するのか」について解析していく予定だとしています。
将来的には「大腸粘膜の酸素飽和度正常化」という新しい治療目標の確立が考えられます。そのような客観的な治療目標の設定が、UC患者さんの診療の向上や生活の質改善につながることが期待されます。
(IBDプラス編集部)
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