【緊急アンケート】難病医療費助成“外れ”問題にIBD患者300人超が回答
ニュース | 2019/8/20 更新
「難病医療費助成制度」の変更で、IBDを含む難病の軽症患者さんの約2割が助成から外れたという報道が大きな話題になっています。これを受け、IBDプラスではその実態を探るべく、難病医療費助成制度に関するアンケート調査を、IBD患者さんとそのご家族に向けて行いました。
この問題についてはみなさんの関心度が非常に高く、潰瘍性大腸炎(UC)の患者さん186名、クローン病(CD)の患者さん143名、潰瘍性大腸炎患者さんのご家族17名、クローン病患者さんのご家族21名、合計367名の方にご回答いただきました。ありがとうございました。
目次
Q. 難病医療費助成の支給状況について教えてください
助成の支給状況については「難病医療費助成を受けている」が81%、「受けていた(今は受けていない)」が9%、「受けたことがない」が9%、「難病医療費助成制度があることを知らなかった」が1%でした。
助成を受けている方(その他を除く)のうち、「中等症~重症で治療費が高額」が57%、「軽症だが、治療費が高額」という、いわゆる「軽症特例」を利用している方が39%でした。一方、助成を受けていない方のうち、実に68%が「制度が変わって助成が受けられなくなった」という方でした。
この数字は編集部が想像していたよりはるかに多く、報道されている「軽症で助成が受けられなくなった」という人はもちろんのこと、治療法や受診のペースを見直せば「軽症特例」にあてはまるにもかかわらず、軽症特例の説明を医師からきちんと受けていなかったり、「条件が満たないから」と、自らあきらめてしまったという方も少なからず含まれているのではないかと思われます。
Q.助成の対象ではなくなったことに不安を感じますか?
「制度が変わって助成が受けられなくなった」という人たちに「助成の対象ではなくなったことに不安を感じますか?」という質問をしたところ、95%が「不安を感じる」と回答。
これは今現在、軽症や寛解状態でも、またいつ悪化するかわからないIBDという病気を抱えている患者さんにとって、助成を受けられなくなるということが、いかに大きな心の負担となっているのかを物語る結果といえるのではないでしょうか。
さらに現在助成を受けている人も「仮にあなたが助成の対象ではなくなるとしたら不安を感じますか?」との質問に、99%の人が「不安を感じる」と回答しています。
Q.助成の対象ではなくなった結果、治療選択に何らかの変化があると思いますか?
同じく「制度が変わって助成が受けられなくなった」という人たちに投げかけた「助成の対象ではなくなった結果、治療選択に何らかの変化があると思いますか?」という質問では、半数近く(44%)の人が「通院頻度を減らす」と回答。「安価な薬剤に変更する」(21%)、さらには「治療をやめる」という人も18%にのぼりました。
また、現在助成を受けている人に投げかけた「仮に助成の対象ではなくなった場合、治療選択に何らかの変化があると思いますか?」という質問でも、「安価な薬剤に変更する」(33%)、「通院頻度を減らす」(24%)、「治療をやめる」(19%)と、実に76%の人が今の治療を変えると回答しています。
IBDでは、症状がなくなり、一見寛解したように見えても、腸内では炎症が起こっているということがよくあります。そのため、寛解中でも定期的な診察を受け、5-ASA製剤など基本薬での治療を継続していくことが、長期的な寛解維持につながると言われています。
しかし、助成が受けられなくなったことで治療費負担が増大し、「安価な薬剤に変更する」だけではなく、「通院頻度を減らす」「治療をやめる」という患者さんが増えていくものと考えられます。これは、軽症者の「再燃リスク」を増やすことにも繋がりかねない大きな問題といえるのではないでしょうか。
Q. 軽症のIBD患者が医療費助成対象者でなくなるのは仕方ないと思いますか?
では、IBD患者さん自身は「難病医療費助成制度」の変更で軽症のIBD患者さんが助成対象者ではなくなることについて、どのように考えているのでしょうか?
まず、疾患別に見てみると、潰瘍性大腸炎では「仕方ないと思う」と答えた人が22%、「思わない」と答えた人が78%でした。一方、クローン病では「仕方ないと思う」と答えた人が11%、「思わない」と答えた人が89%でした。
次に、支給状況別に見てみると、助成を受けている人では「仕方ないと思う」が16%、「思わない」が84%、助成を受けていた(今は受けていない)人では「仕方ないと思う」が21%、「思わない」が79%、助成を受けたことがない人では「仕方ないと思う」が23%、「思わない」が77%、また、グラフにはありませんが、助成制度があることを知らなかった人では「仕方ないと思う」が17%、「思わない」が83%という結果でした。
これらの結果を総合すると、疾患や支給状況に関わらず、多くの人が難病医療費助成制度の変更で、「軽症のIBD患者が医療費助成対象者でなくなる」ということに、反対する意見を抱えていることがわかります。
Q. 軽症のIBD患者が医療費助成対象者でなくなるのは、仕方ないと思う・思わないと答えた理由について教えてください
仕方ないと思う人、思わない人、それぞれの理由もさまざまです。その一部を紹介させていただきます。
仕方ないと思う
- 軽症ならば一旦対象から外すのは仕方ないです。ただし、悪化した時に素早く手帳を交付してほしい。その条件が整うなら仕方ない、と思います。(助成を受けている・UC患者)
- 国が財政困難だから(制度が変わって助成が受けられなくなった・CD患者)
- 無論手厚いほどありがたいが、難病で苦しむ患者は他にもたくさんいる。 軽い治療で支障がない者は、重症者を助ける側にまわってほしい。(助成を受けている・CD患者)
- 助成を受けれない軽傷患者がいるのに受けている軽傷患者がいるのは不平等。(助成を受けたことがない・UC患者)
- 適切に投薬を続けることで、高額な医療費負担にはならないと感じているから(助成を受けている・UC患者)
- 年に1回の通院で、投薬も治療もほぼない人と、通院も投薬、在宅医療など毎月欠かさず継続している人と、同じ判断なのはおかしいと思う。特定疾患受給者証があることで、ハローワークや区市町村のサービスに甘んじたい人がいるのも事実。線引きは仕方ないと思います。(助成を受けている・CD患者)
仕方ないと思わない
- 軽症であるとしても、今後悪化するかも分からないものとしては、悪化した時の不安を感じ得ない。ストレスや社会的要因など、必ずしも注意していれば悪化を防げるというものでもないと思うため。(助成を受けている・CD患者)
- 主人は軽症初見でしたが、突然悪化し、悪化症状からステロイドを服用しましたが、1ヵ月後緊急入院、高額な血球成分除去療法を受けました。昨年入院したので今年も助成対象ですが、今年は入院してないので近々助成から外れるかもしれません。助成から外れても治療を変えることは出来ません。新薬が多いので薬価が高額なことも理解できます。助成継続を希望します。(助成を受けている・UC患者の家族)
- 寛解後も5-ASA製薬を飲み続ければ再燃予防に効果があると言われている。助成金が無くなると軽症者は寛解後は薬を飲まなくなると思われる。軽症であっても再燃を繰り返すうちに症状が悪化し、結果的に中等症以上の患者が増える可能性があるのではないか。(助成を受けている・UC患者)
- 軽症=完治に近い、わけでは絶対ありません。難病指定されてる以上は発病の原因も分からず、寛解→再燃を繰り返し軽症から中等症になることもあります。もしかしたら重症となる場合もあります。その時に備えて軽症も医療費助成にしておくべきだと思います。病気のことは理解出来てもその痛みや苦しみは本人にしかわかりません。どうか配慮頂きたいです。(制度が変わって助成が受けられなくなった・UC患者)
- 症状が、軽い・重いに関係なく同じ病の方々の治療を平等にして欲しい。今後も益々、患者さんが増える事も考えられるのでその為にも医療費助成制度を無くさないで欲しい。(制度が変わって助成が受けられなくなった・UC患者)
Q.「難病医療費助成制度」について思うことやお考えなど、自由なご意見をお聞かせください
実態調査という名目で始まった今回のアンケート調査でしたが、みなさんフリーアンサー部分にご自身の熱い思いをたくさん書き込んでくださり、この問題が私たちの想像以上にIBD患者さんにとっての大きな問題となりつつあることがわかりました。そして、私たちが百語るよりも、事態に直面している患者さんやそのご家族が一語る方が、これを読む人の心を大きく動かすものと信じて、いただいたご意見の一部を紹介させていただきます。
- 年々厳しくなっていっているので毎年助成が受けられるのか不安になって仕方ない。難病の人が安心して医療を受けられるようになって欲しい。(助成を受けている・CD患者)
- 助成があるから治療も頑張れる。本当に助かっています(助成を受けている・UC患者)
- スコアで判断するのには反対。オペ歴や治療状況を見て判断して頂きたい。やはり軽度であってもいつ重症化するか分からないので、みんなが助成を受けられるようになったら良いなと思う。(助成を受けている・CD患者)
- 助成制度を受けれなくなったので、年1回受けていた検査も受けづらくなってしまいました。(制度が変わって助成が受けられなくなった・UC患者)
- 助成がなければ、人生を諦めていたと思います。助成があるのは本当に有難いです。ただ、手続きが煩雑で、具合が悪いときは、書類をそろえるのも辛かったです。手帳が届くのもギリギリでいつも不安です。(助成を受けている・UC患者)
- 軽症だから助成制度を受けられないのならば、せめて薬代は安価になってほしいなと思います。(制度が変わって助成が受けられなくなった・UC患者)
- まだ受けたことないけど、最近また再燃したので受けたい。医者も、この程度では受けられないとか平気で言うのはやめてほしい。(助成を受けたことがない・UC患者)
- いい制度だと思います。ただ収入要件が現実と見合っているのか、行政にはよく考慮していただきたい。3~40代の年収300万世帯の実態を理解しているとは思えない法ばかりでつらいです。(日雇い派遣法なども500万を基準としていて釈然としない)。(軽症と判断され、助成が受けられなくなった・UC患者)
- 軽度な場合、値段が上がってしまうのは仕方がないが、その人の状態に合わせて しっかりとした調査を行い安易に値段を決めない方がいいと思う(助成を受けている・CD患者)
- 一生治らないから難病 なのになぜ毎年一旦切られて更新するまでの空白期間があるのでしょうか?そのあたり国に物申したい。なってみないとわからない。結局健康な人たちの作ってる制度なのですね。(助成を受けている・CD患者の家族)
- 毎年更新書類の書式など変わり過ぎて、こちらも役所も混乱していて本当に腹立たしい。 治らないから難病なのだから、数年に一度程度の更新にして欲しいし、患者への負担を減らして欲しい。(助成を受けている・CD患者)
- ひとり親家庭の場合は負担額を少なくして欲しい。(助成を受けている・UC患者)
- 潰瘍性大腸炎は、たくさん合併症があるが合併症については助成されない。せめて治療薬として認められている薬は助成して欲しい。(助成を受けている・UC患者)
- 財政負担は確かですが、それによってひどくなれば更に負担は増えるはずです。また、助成がなくなれば、治療放棄が増えるのは目に見え、患者のためとは思えません。それは、UCに限らずです(助成を受けている・UC患者)
- 助成を受けられなくなった人がいることの報道が少ないと思います。あたかも、助成を受けられる方が増えているようにみせかけているとしか思えません。(制度が変わって助成が受けられなくなった・UC患者)
- 初回の患者の場合は、申請した日からではなく確定診断を受けた日にしていただきたい。入院して申請に行くのが困難な患者が沢山いると思う。(助成を受けたことがない・UC患者)
- この制度のおかげで高額な治療を受けることが出来、なんとか健常者の方達と同じか近しい生活の質を保てています。この制度に生かしてもらっていると感じており、本当に感謝しています。IBD患者はその母数が多く、助成金に多額の税金が使われていることは理解しています。しかし、対症療法を継続することしかできない私達にとって、治療は生きる上での必要命題であり、助成制度が厳しくなったり無くなったりすることで私達の生活の質・健康が妨げられることを想像するととても不安な思いです。やはりこの制度は私達難病患者にとってはその症状の軽重関わらず必要なものであり、今後も継続して頂きたいと感じます。(助成を受けている・UC患者)
(IBDプラス編集部)
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