IBD患者の遺伝的な「静脈血栓症」リスクが判明

ニュース2020/11/16

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IBDの合併症として多くみられる静脈血栓症

東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野の内藤健夫医師、正宗淳教授らの研究グループは11月12日、炎症性腸疾患(IBD)患者の静脈血栓症の遺伝的リスクの有病率と、その影響の大きさを明らかにしたと発表しました。

静脈血栓症は、IBDの合併症による死因の中で最も頻度が高い疾患です。IBD患者さんは静脈血栓症発症のリスクが健常者と比較して3倍以上であることが報告されているだけでなく、近年承認された治療薬「ヤヌスキナーゼ阻害薬」の副作用に、重篤な血栓症があることが知られています。

事前に高リスクの患者さんを知ることができれば、予防的に「抗血栓治療」を行なったり、ヤヌスキナーゼ阻害薬の使用を避けたりするなど、適切な処置をとることが可能となりますが、血栓症に関わる遺伝子は多数存在するため、正確な遺伝的リスクの同定は困難でした。

約15%のIBD患者さんは、遺伝的に静脈血栓症に約2.5倍なりやすい

研究グループは今回、約800人のIBD患者さんの遺伝データを用いて、静脈血栓症に対する遺伝的リスクの頻度と影響の大きさを、世界で初めて報告しました。

さまざまな解析の結果、約15%のIBD患者さんが遺伝的に静脈血栓症リスクの高い状態にあり、この患者群は、遺伝リスクが無い患者群と比較して、約2.5倍静脈血栓症発症リスクが高いことが判明。また、遺伝的リスクを有する患者群では、複数の部位に静脈血栓症を発症する傾向があることも示されたそうです。

さらに、対象患者群を遺伝的リスクが「低い」「中くらい」「高い」に分けて調べた結果、高リスク群は低リスク群と比較して、8倍以上の静脈血栓症発症リスクがあることが示されました。

遺伝データに基づいた個別化医療の本格的な臨床応用に期待

今回の研究により、IBD患者さんの合併症で問題となる静脈血栓症リスクを、従来の方法よりも正確に特定できるようになりました。研究グループは、「近年、遺伝データを得るためのコストは劇的に低下しており、本研究のような遺伝データに基づいた個別化医療の本格的な臨床応用が期待される」と、述べています。

IBDプラスのアンケートでも「合併症について知りたい」という声が多く寄せられています。このようなニュースなどを通じて、今後もIBDの合併症に関する最新情報を伝えていきたいと思っておりますので、ご期待ください。

(IBDプラス編集部)

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