ストレスをため込んでいませんか?IBD治療の進歩で見えてきた「メンタルケア」の重要性

潰瘍性大腸炎2020/5/19

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IBD治療の大きな進歩にともない、病気を上手にコントロールできる患者さんが急増しました。その一方で、体調の波や、具合が悪いときのつらさをなかなか理解してもらえず、人知れず悩んでいる方も多いといいます。今回はIBDプラスでもおなじみ、伊藤裕章先生のクリニックでカウンセラーとして働いている森本愛さんに、「IBD患者さんに対するメンタルケアの重要性」についてお伺いしました。

「カウンセリング」って、一体何をするの?

伊藤先生からのメッセージ

伊藤 裕章 先生

クローン病患者さんに向けた冊子を作成したときに、患者さんに対するメンタルケアの重要性を知り、「クリニックを開院したら、絶対にカウンセリングルームを作りたい」と考えていました。しかし、なかなか良いと思えるカウンセラーに出会えず…。そんなとき、たまたま患者さんに急ぎでメンタルサポートが必要な場面があり、当院の有光医師に相談したところ、幼なじみにカウンセラーがいるということで、急きょ依頼したのが森本さんでした。そのときのサポートが素晴らしく、当院のカウンセラーとして来ていただくことにしました。カウンセリングを特にお勧めしているのは、初診や確定診断がついた患者さんです。初回は無料で体験できます。まだまだこのような取り組みをしているIBDのクリニックは少ないと思いますが、昨今ではIBDのメンタルに着目した海外の論文も増えています。IBD患者さんは想像以上にストレスや不安を抱えているので、メンタルケアはとても重要だと考えます。

――最初のIBD患者さんのカウンセリングは急な依頼だったとお聞きしていますが、そのときのエピソードをお聞かせください。

そのとき私は、姫路のプライベートサロンでカウンセリングを行っていました。「錦秀会 インフュージョンクリニックです」と、突然電話がかかってきたときは驚きました。「研修で大阪に来ている患者さんの気持ちの整理がつかず、悩んでいるのでサポートをお願いしたい」とのことだったのです。カウンセリングをお引き受けすると、その患者さんは、2時間後に大阪から姫路まで来てくださいました。実際にお話を伺いますと、「研修をやり遂げねばならないと思うけれど、どうしても足が向かない。行くことができない。」と苦しんでいらっしゃいました。まさに心が真っ二つに分かれているような状態になっておられました。

森本愛さん

カウンセリングは、カウンセラーが何か特別なアドバイスをするイメージを持たれている方が多いのですが、その人の中にすでにある答えや決意を一緒に掘り出していきながら、「もう一度自分で選択し直す」ことをサポートするのがカウンセリングの主軸にあります。この患者さんがカウンセリング後に、非常にスッキリした顏をされていたと後に聞きましたが、患者さんが「自分自身で研修を受けることに決めた」のが非常に大きな理由だと思います。私はその方の中にある、本当にしたいことを一緒に探すお手伝いをさせていただけたということですね。

――カウンセリングを通して感じた、IBD患者さんの特徴のようなものはありますか?

身体の状態(病状)と心の状態というのは両輪なのですが、特に初診のIBD患者さんや長く治療から離れていらっしゃった患者さんの場合は、カウンセリングよりもまずは治療に専念していただくことをおすすめしています。炎症も強く、まだ治療も始まっていない段階では、不安が強くどうしても気持ちがマイナスに引っ張られやすくなっています。具合が悪いときに深刻に悩んでいたことも、病状が改善すると、自然と解決することがよくあるのです。「あの時の問題はどうなりましたか?」と問いかけてみると、「あれ?そう言えば、そんな気持ちのこともありましたねぇ」と言われることもよくあるんです(笑)。

臨床所見がよくなってもおさまらない「痛み」の原因は?

――痛みと気持ちがリンクしている部分もあるということですね。反対に、IBD患者さんにカウンセリングが特に必要だと感じるのはどのような場面でしょうか?

「臨床所見は改善されているのに痛みが消えない」など、治療はうまく行っているはずなのに、原因不明の症状が残っている患者さんなどに対しては、カウンセリングが非常に有効です。IBDではなく、心が原因で出る症状もあるのです。

――具体的に、どのようなサポートをされているのでしょうか?

学生の患者さんから、「腹痛が治まらず、学校に通えない」という相談を受けたことがあります。先生が診る限り、臨床症状はおさまっているはずとのことで、カウンセリングが紹介されました。話していくうちに、「もし、電車でトイレに間に合わなかったらどうしよう…」という思いが、腹痛と関連していることがわかりました。そこで、「どうしたら電車に安心して乗れるか?」ということを一緒に考えました。「特急だと精神的負荷が大きいから、普通電車に乗るようにしよう」とか、「トイレットペーパーの残り少なくなった芯を常にかばんに入れておけば、紙がないトイレでも安心だよね」とか、できる限り具体的に安心して電車に乗るための方法を整理することで、不安をコントロールできるようになりました。やがて腹痛が起こる頻度が減り、普通に学校に通えるようになりました。

――IBDの臨床所見は改善しているはずなのに、痛みなどの症状が残っているという患者さんは多いのでしょうか?

結構多いと思います。ほかにも、新しい薬に切り替えたばかりの患者さんが、「この薬が効かなくなったらどうなるんだろう…」という不安が原因で、全身に痛みやしびれを感じていたケースもありました。この方には、初回カウンセリング時に、実はこれらの症状は「不安」から起こっている心因性によるものだと明確にお伝えさせていただきました。その後、薬に関することや今後の治療について、主治医からも丁寧な説明を受けたことで、「病気とうまく付き合う」ことが大切だと心から納得されたそうです。全身の倦怠感と痺れは、医師と心理カウンセラーの1回の面接の後、1週間ですっきり消えてしまい、「狐につままれていたようだ」とご本人も驚かれておりました。

このように、心因性から身体症状が出ている場合は、早い段階で効果が出ることが多いですね。大体1~2回で効果を感じていただけると思います。

有光先生からのメッセージ

有光 先生

IBD患者さんは我慢強く、つらさに慣れてしまっている方が多いようで、自分から不安や愚痴を言うことは、あまりありません。私たちも意識的に「何かありましたか?」と声をかけるようにして、必要だと感じればカウンセリングを勧めるようにしています。実は私自身、子育てと仕事の両立悩んでいたときにカウンセリングを受けて、すごく救われたという経験があるんです。ストレスはIBDの増悪要因の一つでもあるので、患者さんたちが笑顔でいられるように、協力できることはしていきたいと思っています。

――有光先生が「IBD患者さんは、つらさに慣れてしまっている方が多いので、カウンセリングが必要だと思う」とおっしゃっていましたが、先生ご自身もそのように感じられますか?

まさに有光先生のおっしゃる通りで、我慢していることに気付いていない方が多いように思います。私はカウンセリングの最初にカラーボトル(上下2層の色に分かれたボトル。選んだ色や組み合わせで、その人の思考や内面を分析する)を使うことが多いのですが、IBD患者さんは特に、カラーボトルで自分自身を表現するということが向いていると感じています。

――それはなぜでしょうか?

ずっと我慢をしていると、だんだん自分の感情に無感覚になってきてしまうことがあるのです。ある患者さんが、選んだボトルの説明をしていたときに突然涙を流されたことがありました。きっと、その方が抱えていた何かに触れたのだと思うのですが、「先生、僕は今なぜ泣いてるんですか?」と聞かれたのです。涙の理由が自分でわからないほど、「苦しみ」の感情と「意識」を切り離して頑張っておられたのでしょう。ほかにも、壮絶な体験を「こんな誰にでも起こりそうなことを相談してもいいんでしょうか?」とおっしゃった方もいらっしゃいました。IBD患者さんは外からわかりにくい病気であり、自分にしかわからない身体感覚を当たり前に我慢されていることが多いのです。当たり前になった我慢により、意識の底に沈んでしまった言語化できない感覚やフィーリングを、時にカラーボトルは言語より正確に表現してくれることがあります。IBD患者さんにカラーセラピーが向いていると思うのは、色を選ぶという行為そのものが、無意識に切り離された自分のかけらを統合するセラピーになっていくことがあるからです。

IBD患者さんに多い「慎重になり過ぎるタイプ」と「頑張り過ぎるタイプ」

――カウンセリングをする上で、IBD患者さんだからこそ気を付けていることはありますか?

森本愛さん

IBDの方は大きく2種類のタイプがいると思っています。1つは、病気であることを気にしすぎて「慎重になり過ぎるタイプ」、もう1つは「頑張り過ぎるタイプ」です。それぞれサポートの仕方が全く変わってきますので、どちらのタイプに近いのかということは、カウンセリングの際に気を付けるようにしています。

――それぞれどのようなサポートをされるのでしょうか。

慎重になりすぎるタイプの方には、今よりほんの少しだけストレッチのかかるチャンレンジをコツコツ重ねていただきます。少しワクワクできるくらいのチャレンジであることが大切です。小さな成功体験を重ねることで、おのずと自信がつくようなサポートを行っていきます。頑張りすぎるタイプの方には、何でも自分でやろうとしてパンクしてしまうので、頑張り過ぎているということをまず自覚していただきます。「もっと他人に任せられることは任せた方が良いし、頼られることを喜ぶ人もいる」ということをお伝えしています。意識的に休暇をとるようになって、重症化が抑えられているという報告を聞くと、とても嬉しいです。一方で、「いつ具合が悪くなるかわからないから、有給がとれない」「入院して迷惑をかけるかもしれないので、必要な人間と思ってもらえるようにもっと頑張る」とおっしゃる患者さんもいて、なかなか難しいですね…。

――そのような場合でも、根気よく休むことの大切さをお伝えするのでしょうか?

はい。心と体はリンクしているので、「やり過ぎ」はストレスがたまるし、心のエネルギーの消耗がIBDの増悪に繋がることもわかってきています。「頑張りすぎ」はかえって非効率的な働き方だと考えます。自分ではストレスがあると意識していなくても、毎日コーヒーを20杯飲んでいるという方も…。嗜好品でストレスを紛らわす生活習慣も、悪化の原因になっているかもしれませんよね。自分自身を振り返り理解する時間を持つためにも、休息が必要だと繰り返しお伝えしているのです。

――カウンセリングの内容を、医師に開示することはあるのでしょうか?

患者さんに「内容を先生にも伝えて欲しい」と頼まれたとき以外は、一切開示しませんので、安心して心を開いていただければと思います。診療スペースでは笑顔で過ごされていた患者さんが、カウンセリングルームに入ったとたんに涙をポロポロ流されることもあります。クリニックでは、カウンセリングルームが患者さんのプライベートスペースになるよう、診療スペースとしっかり区切られており、インテリアにも配慮しています。

カウンセリングを受けてみたいと思ったら

――我慢強いIBD患者さんにとって、何でも話せる場所があるというのは心強いですね。カウンセリングを受けたいと思ったら、まずどこへ行けばよいのでしょうか?

病院に臨床心理士さんがいるようであれば、そちらに行かれるのが良いのではないでしょうか。ネットで調べる場合は、「臨床心理士 カウンセリング」というキーワードで検索してみてください。カウンセラーとの「相性」が一番大きいと思いますので、合わないカウンセラーに当たってしまってもあきらめずに、他をあたっていけば、きっと相性の合う人が見つかると思います。

インフュージョンクリニックのみなさん
インフュージョンクリニックのみなさん

昨今のIBD治療はとても進歩しており、状態がよいときは、自分でも病気のことを忘れているという方はたくさんいらっしゃると思います。しかしその一方で、外から見えにくい分、体調が悪いときでも普通に見せなければならないというしんどさがあって、心に負担がかかっているのではないでしょうか。その心の圧は、本音を吐露したり、葛藤を整理したりすることで、だいぶ楽になると思います。病気のコントロールがしやすくなった今だからこそ、IBD患者さんの心のケアが必要だと考えていますし、そのお手伝いをこれからも続けていきたいと思っています。

(IBDプラス編集部)

森本愛さん
医療法人錦秀会 インフュージョンクリニック
心理カウンセラー(日本心理学会会員)・カラーセラピスト
森本愛さん
甲南女子大学(人間関係学科・心理学専攻)卒業
甲南女子大学大学院(教育研究科修士課程)卒業
2005年 カウンセリングルーム ヒーリングスペース「El Morya」開業
2013年インフュージョンクリニック心理カウンセラー就任

〈資格・所属学会〉
日本心理学会会員
オーラソーマプラクティショナー

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