「十人十色」の働き方、価値観があっていい――真逆の考えをもつ、潰瘍性大腸炎の二人が見つけた居場所

仕事・はたらく2018/8/27

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働く男性たち

今回は、ヤンセンファーマ株式会社主催のイベント「病気を抱えながら働くことを考えるD&Iフォーラム」に、みえIBD副会長のしんちゃんさんとともに登壇したfummyさんの勤務するIT系ベンチャー企業に伺いました。すると、偶然にもfummyさん以外にもう一人、潰瘍性大腸炎患者のTさんがいるとのこと。真逆の考えを持つ二人は、「はたらく」ということに対して、どのように向き合っているのでしょうか。さらにインタビューの最後には、同社の代表も登場。IBD患者さんとともに「はたらく」ということについて、経営者としての考えは…?

fummyさん(31歳、潰瘍性大腸炎歴12年)

山形県出身。大学時代に潰瘍性大腸炎を発症。高校の教員~出版社勤務を経て、webマーケティング会社に転職。現在は、編集・ライターとして活躍中。

Twitter:@copy_1nensei

ブログ:UC系男子

Tさん(35歳、潰瘍性大腸炎歴18年)

広島県出身。高校時代に潰瘍性大腸炎を発症。大学進学後、地元・広島で就職。その後、上京して現職に転職。現在は、フロントエンドエンジニアとして活躍中。

潰瘍性大腸炎の二人が、同じ会社で出会うまで

――十数名の会社に、潰瘍性大腸炎の人が偶然お二人もいるということに驚きましたが、お互いが潰瘍性大腸炎ということを、どのようなタイミングで知ったのでしょうか?

fummy(以下、F)さん:僕が入社した後に開かれた中華料理屋での食事会です。Tさんを含む数人の同僚の前で「潰瘍性大腸炎なんです」って打ち明けたら、突然Tさんが大爆笑して(笑)。他の人は「病気の告白なのに何笑ってるの?」という感じでした。

Tさん:いや、もう笑うしかないでしょう(笑)。まさか、僕と同じ潰瘍性大腸炎の人が入社してくるなんて思いもしなかったから。びっくりしましたよ。

――そんな経緯があったんですね。Fさんが潰瘍性大腸炎だと診断されたのはいつ頃だったのでしょうか?

Fさん:大学2年生の春に、潰瘍性大腸炎と確定診断を受けました。大学1年の冬頃から「痔がひどいな」と思っていたら、粘血便が出まして。これはヤバイと思い、病院に行ったんです。それまで体調が悪くなったことはなく、本当に急な発症でした。明確な理由は分かりませんが、大学から一人暮らしになり、環境が変わったかもしれません。確定診断を受けてからは、入院はしなかったものの貧血がひどく、体調もずっと悪かったですね。大学では音楽系のサークルに入っていましたが、それも辞めました。同時期にアルバイトも休み、人付き合いも減っていきました。その後も体調は良くならず、結局入院したり、大学も休学して、しばらく休養していましたね。脂っこいものや肉を食べると翌日調子が悪くなる感じだったので、素うどんなど、あっさりしたものを中心とする食生活に変えました。

――就職活動は、どのように取り組んだのでしょうか?

Fさん:復学した後、就職活動を始めたのですが、当時はリーマンショックの影響で求人数も激減していて…。WebマーケティングやWeb制作といった分野を志望していて50~60社受けましたが、エントリーシートもなかなか通らず、全滅してしまいました…(笑)。

――就職浪人したのですか?

Fさん:いえ、実は大学在学中になんとか頑張って教員免許を取得していたので、卒業後はアルバイトをしながら教師になることを目指していました。運よく地元・山形の臨時採用試験に合格し、1年間高校の教師として世界史や現代社会を教えていました。病気は大学卒業する頃にようやく寛解して、食事には気を付けながら過ごしていました。通院が必要なので、周囲にも潰瘍性大腸炎であることは、隠すことなく話していましたね。でも、かなりの縦社会で、「何でお酒飲まないの?」とか、普通に言われました。でも、部活動には配慮してもらえて、囲碁部の顧問をやっていました。

男性2人

その後、文章を書く仕事がしたいという気持ちが大きくなりまして、再度上京して音楽誌を発行している出版社に就職しました。そこで数年編集の仕事をしていくうちに、大学時代に就職できなかったWebの世界にもう一度挑戦したいと思い、現在の会社に転職したんです。

――Tさんは、いつ頃潰瘍性大腸炎を発症されたんですか?

Tさん:僕が発症したのは17歳の時です。高校ではサッカー部に入り、元気に活動していたのですが、次第にトイレに行く回数が増えてきて、高校2年生の頃に尋常じゃないくらの下血があり、病院で潰瘍性大腸炎と診断されました。そして、そのまま緊急入院…。トータルで7~8か月は入院していたと思います。高校3年生のときに、大腸の摘出手術を受けました。その直前には敗血症で1週間意識不明になるという、生死をさまようような経験もしたんです…。その後退院したのですが単位が足りず、高校3年生をやり直しました。

――その後、大学に進学されたんですよね。

Tさん:はい。もともと僕はバリバリの理系で、数学のテストは県で1番になるほどでした。でも、偶然手に取った『世界の中心で、愛をさけぶ』という小説に衝撃を受けまして、「一度きりの人生、こういう小説を書いて人の役に立つんだ!」と一大決心をして、文系に転向したんです(笑)。でも、文系の勉強なんてやってこなかったので、なかなか志望校には受からず…。結局3年浪人して地元の私立大に入学しました。手術を受けた甲斐あって、この頃は病気の症状も少し落ち着いていました。小説家になる夢は結局諦めたのですが、勉強にサークル活動(混声合唱団)にと、充実した毎日を送ることができました。

――大学卒業後は就職されましたか?

Tさん:僕の就活もF君と同じリーマンショックに重なり、思うようには進みませんでしたね。結局、その中で一番マシだった携帯キャリアの法人営業の会社に就職しました。不利になると思ったので、就職活動では自分が潰瘍性大腸炎であることは伏せていましたね。入社後も、周囲の人に病気であることは話しませんでした。その後、転職したのですが、そこが訪問販売の「ブラック企業」で(笑)。朝6時~夜11時くらいまで働き詰めの毎日でした。それでも4~5年働いたのですが、毎年春になると腸閉塞になって、入退院を繰り返していました。そんな生活に嫌気が差し、一念発起して上京し、入社したのが今の会社です。

病気に対する価値観も「十人十色」

――今の会社の面接で、潰瘍性大腸炎であることを話しましたか?

Fさん:はい。通院などで会社を休むこともありますから、面接ではきちんと話しました。入社してからも、わりと早いタイミングで周囲に潰瘍性大腸炎であることを自分から話しています。僕は、職場の上司や同僚だけではなく、友人にも話すようにしていますね。今、社会全体がダイバーシティ(多様性)を受け入れることが進みつつありますし、病気のことを話すことでデメリットを感じることはないですね。

周囲の人間

Tさん:僕も面接のときに病気の話はしました。でも、F君のように積極的に話したのではなく、高校を留年していたり、3年浪人していたりと、履歴書が普通の人とはちょっと違うので、話さざるを得なかったという感じです。僕はF君とは逆で、基本的に周囲の人たちに病気の話はしません。潰瘍性大腸炎だと打ち明けることで、「人間関係がマイナスに働いてしまうかも…」と思ってしまうんですよね。

Fさん:でも実際は、病気の話をしてもあんまりマイナスに働かないですよね?

Tさん:そうそう。実際はネガティブに捉えられることもないから、いつも「早く言っておけばよかったなぁ」と思います。今は結婚していますが、奥さんに潰瘍性大腸炎であることを打ち明けたのも、同棲を始めてからなんです。しかも、体調を崩して入院するまで一切話していませんでした。病気だと打ち明けるタイミングって、本当に難しいんですよね。今でも家族以外は、本当に仲のいい友人一人にしか話していません。

Fさん:そうだったんですね!

Tさん:周囲になかなか打ち明けられないのは、結局、思い込みが強い僕の性格が原因なんです。そんなこと一度もないのに、「病気であることはマイナスに働く。言ったら大変なことになる。人生損する」と思ってしまう…。だからF君が軽い感じで「潰瘍性大腸炎なんです」と話してくれたときは、何だか拍子抜けして爆笑してしまったし、自分も隠していた病気のことを話せて、楽になった気がしましたね(笑)。

病気でも働けるかということ以上に、「自分に合うか」を重視して

――なるほど。お二人のお話を聞いていると、病気に対する捉え方や価値観がかなり違うように感じます。これを読む人たちにも両方のタイプがいると思いますので、「IBD患者としてはたらく」という観点で、それぞれメッセージとアドバイスをいただけたらと思います。

Fさん:IBDだからといって、その人の才能や魅力が失われることはないと思います。だからこそ、病気を理由に挑戦しないのは、非常にもったいないことです。やりたいことがあれば、チャレンジできると思うし、挑戦の仕方もいろんなやり方があるはずです。その中から自分に合った方法を見つけて前進してほしいですね。あと、僕自身の体験から言うと、あらゆる可能性が開かれている「新卒」というのは貴重なチャンスです。体調が悪く辛い時もあるかもしれませんが、投げやりにならずに向き合ってほしいですね。

Tさん:またF君とは反対の意見になりますが(笑)、僕がもし学生に戻ったら「新卒」というカードを使って社会人になろうとは思わないですね。もちろん、新卒がダメというわけではないんです。ただ、企業に新卒で入社すると、他の同期たちと同じレールの上で走ることになります。そんな状況で病気が再燃し、長期入院してしまったら、レールから大きく外れてしまうというリスクがありますよね。僕個人としては、今のようなベンチャーや、中小企業で働くことを選択肢のひとつとしてお勧めします。人材確保が難しくなっている今、小さな会社は本当に困っています。その分、就職しやすいですし、大企業よりも個人の能力を重宝してくれると思います。僕の弟は大企業に勤務していますが、競争が激しく、ストレスも半端ないらしいです(笑)。一概には言えませんが、大企業に比べると、ベンチャーや中小企業は人に優しいところがあると思います。

Fさん:確かに。大企業には福利厚生や各種制度が充実しているというメリットがありますけど、その一方で、中小企業は相談したら柔軟に対応してくれるというメリットがありますね。

Tさん:僕自身、ここに最初は営業職で入社したのですが、PCが好きだったこともあり、エンジニアに職種転換しました。F君が言う通り、柔軟な働き方ができていますし、仕事の幅が広がりました。今は、PC一つあれば、どこでも仕事ができる時代です。僕の場合、また腸閉塞になったり、ゆくゆくはがんになることも考えられます。また、入院したり、自宅休養を余儀なくされるかもしれません。でも、PCとエンジニアのスキルさえあれば、最低限の収入を得ることができると思っています。そのためにも、さらにスキルアップして、自分の将来を自分の力で切り開いていきたいですね。

多様性の時代だからこそ、フラットな視点を持つ経営者も増えている

最後に、お二人を採用した同社の代表がインタビューに参加。持病を抱えながら働く社員を採用すること、そしてともに「はたらく」ことについて、率直な意見を伺いました。

――FさんもTさんも、面接で潰瘍性大腸炎であることを打ち明けたそうですが、それを聞いて、どのように思われましたか?

親子

代表:確かに二人から「潰瘍性大腸炎という持病がある」という話は聞きました。でも、正直なところ「あ、そうなんだ」と思っただけですね(笑)。潰瘍性大腸炎を知らなかったので一応調べましたが、採用基準も特に変わりません。今はF君もT君も日常生活に支障をきたすほどの症状はなく、たまに通院をするレベルですし、実際に一緒に働いてみて、持病があるからといってパフォーマンスが落ちるようなことはないと感じています。今後、突然悪化して入院することがあるかもしれませんが、退院したら戻ってくると思うし、特に大きな問題とは捉えていません。

――とてもフラットに見ていらっしゃるんですね。

代表:そうですね。もちろん、納期が厳しかったり、その人が外れたら致命的というような仕事では厳しいと思いますが、少なくともうちではそれがないので、問題なく働いてもらっています。実は、群馬から通っている社員もいるのですが、彼のほうが厳しい制約の中で働いている気がします(笑)。最近では男性が育児に参加するのが当たり前ですし、F君が言っていたように、多様性を受け入れる時代に変わりつつあると思います。持病があろうが、遠方で暮らしていようが、育児をしていようが、そういうのを問題視しない会社も、今後増えていくのではないでしょうか。

(取材・執筆:眞田 幸剛)

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