「柿タンニン」の摂取で、潰瘍性大腸炎モデルマウスの病態が改善
ディスバイオシスによる免疫バランスの崩れが、IBDの発症にもつながる可能性
奈良県立医科大学免疫学講座の伊藤利洋教授、畿央大学健康科学部の栢野新市教授らの研究グループは、柿より高純度に抽出した柿タンニン(柿渋)が、潰瘍性大腸炎(UC)で増加する腸内の悪玉菌の増殖と炎症反応を抑え、病態を改善できることを動物モデルにて実証したと発表しました。
腸内には500~1,000種類、約100兆個の腸内細菌が共生しており、腸内の細菌は食物の代謝、吸収だけでなく、腸内の免疫系を制御していることが明らかとなってきています。腸内細菌叢の構成異常は「ディスバイオシス」と呼ばれ、これが起きると免疫系の活性化と抑制のバランスが崩れて、UCをはじめとする炎症性腸疾患(IBD)発症の一因となる可能性が考えられてきました。
タンニンは、植物に含まれるポリフェノールの一種で、柿、お茶、ぶどうなどに多く含まれる、渋みのもととなる成分です。柿から抽出されたタンニンは、古くから柿渋として、革や衣服の防虫、防水や染色に利用されてきましたが、近年、柿タンニンは抗菌作用、抗ウイルス作用、抗炎症作用、抗酸化作用などの多様な作用を持つことが明らかとなってきており、さまざまな疾患への応用が期待されています。
柿タンニンが悪玉菌の増加や炎症を抑える可能性、UCの予防・治療や寛解維持への応用に期待
伊藤教授らの研究グループは柿タンニンに着目し、柿から高純度に抽出した柿タンニンが、新型コロナウイルスに対して不活化効果があることを2020年に発表。また、柿タンニンは非結核性抗酸菌に対する抗菌作用や、マクロファージの活性化を抑制する作用をもち、柿タンニンを含むエサをマウスに摂取させることで、非結核性抗酸菌感染による肺炎が改善することを報告しています。
さらに、柿タンニンは大腸の環境で発酵され、抗酸化活性を示すことから、UCのような大腸の炎症を抑制する効果があるのではないかと考えたそうです。そこで今回、柿タンニンを含むエサをUCモデルマウスに摂取させた結果、疾患活動性と炎症が軽減されることを見出しました。このメカニズムとして、柿タンニンがUCをはじめとするIBD患者に見られる悪玉菌の増加と、腸内細菌叢のディスバイオシスを抑えること、さらに炎症を起こす免疫細胞の活性化を抑えることが示唆されました。研究グループは「UCの予防・治療や寛解維持への柿渋の応用が期待される」と、述べています。
柿タンニンに消臭・抗菌効果があることは知っていましたが、悪玉菌の増殖と炎症を抑える可能性もあったとは全く知らず。まだ動物実験の段階ですが、身近なものがIBD治療でも活躍してくれることを切に願います!
(IBDプラス編集部)
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