腸内細菌由来「ポリアミン」が大腸粘膜を健全に保つために重要と判明
ポリアミンによる「大腸細胞の増殖」と「抗炎症性免疫細胞の増加」がIBDの症状を抑制?
慶應義塾大学、協同乳業株式会社を中心とする研究グループは、腸内細菌由来の「ポリアミン」が、腸上皮細胞やマクロファージに作用して、大腸粘膜の健全性の維持に重要な役割を担うことを明らかにしたと発表しました。
腸管には40兆個にもおよぶ細菌が存在し、腸内細菌叢を形成しています。ポリアミン(プトレッシン、スペルミジン、スペルミン)は、全生物の細胞に存在し、細胞の増殖や機能の維持に欠かせない成分です。腸内細菌叢は、ポリアミンの重要な供給源と推測されています。
ポリアミンは体内でも合成されますが、自身の体で合成した以外のポリアミンは、食事などとして経口摂取したもの、または腸内細菌によって産生されたものです。食事として口から入ったポリアミンは、ほぼ全てが小腸で吸収されます。また大腸管腔内にあるポリアミンは、ほぼ全てが腸内細菌によって産生されたものです。
動物実験では、ポリアミンの経口投与による、抗炎症効果、心疾患保護効果、メタボリックシンドローム改善効果、寿命延伸効果などが報告されています。しかしその詳細な仕組みはまだわかっていませんでした。
今回の研究では、腸内細菌由来ポリアミンによる大腸上皮細胞の増殖と抗炎症性マクロファージの増加が、炎症性腸疾患(IBD)抑制に有効であると予測されました。そこで、研究グループは大腸炎モデルマウスを用いて、腸内細菌由来プトレッシンの腸炎に対する影響を検証しました。その結果、腸内細菌由来プトレッシンが定着したマウスでは、定着していないマウスに比べ、大腸炎の症状が緩和し、生存率も上昇することを発見。以上の結果から、腸内細菌由来プトレッシンが、大腸粘膜層の健全化に役立つことが明らかになりました。
IBDを含むさまざまな腸の疾患に効く、ポリアミンを用いた予防法・治療法の開発に期待
今後、大腸粘膜層の異常に起因するさまざまな病気に対して、腸内細菌由来ポリアミンを使った予防法・治療法の開発につながることが期待されます。研究グループはすでに、アルギニンとプロバイオティクスを利用した「腸内ポリアミン濃度増加技術」を開発済みだそうです。
ポリアミンの人に対する効果が証明されれば、「調子が悪くなってもポリアミンのサプリメントを飲めばいいだけ」という日が来るかもしれません。今後の研究に期待したいですね。
(IBDプラス編集部)
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