【JSIBD市民公開講座】新型コロナウイルスとIBD診療-患者さんの行動変容を含めて(杏林大学医学部 消化器内科学 久松理一先生)

ニュース2022/1/18

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するIBDの国際的なデータベース「SECURE-IBD」の構築が進み、世界中のIBD患者さんの情報を知ることができるようになりました。日本では、これらの情報をできるだけ早く、客観的に、正確に発信するため「JAPAN IBD COVID-19 タスクフォース」が結成されました。講演では杏林大学医学部消化器内科学の久松理一先生が、新型コロナとIBDに関して今伝えられている情報を、要点をまとめてわかりやすく解説してくださいました。

新型コロナの重症化リスクを上げる可能性のある治療は?

久松先生は、「感染したIBD患者さんのデータを見ると、若い人が多いにも関わらず、入院、ICU(集中治療室)に入った人、亡くなった人は高齢者が多く、重症化しやすいことがわかった。これは、新型コロナウイルスにおいて高齢者が重症化しやすいということが、IBD患者さんにおいても同じであることを示している」と、述べました。

治療薬と重症化との関係では、抗TNFα抗体製剤(以下、抗TNFα)単剤治療を受けている患者さんでCOVID-19が重症化してICUに入った人はわずかでした。これまで、抗TNFαを使っている患者さんは免疫を抑制しているため、新型コロナが重症化するという懸念がありました。しかし、実際のデータではそのことが否定されただけでなく、むしろ、抗TNFα単剤治療をしている人では、重症化リスクが低減している可能性も示唆されました。

一方、重症化リスクを上げる可能性があるのは、ステロイドの全身大量投与で、20mg以上の投与を受けている人は、やや重症化リスクが高かったとしています。

死亡率に関しても、抗TNFαの治療をしている患者さんではほとんど認められなかった一方で、ステロイドの全身投与治療を受けている患者さんでは死亡リスクにつながる可能性が示されました。なお、死亡率が上がる年齢は、複数の国で「70歳以上の高齢者」という結果でした。

これらの結果を受けて久松先生は「ステロイド20mg以上の投与は新型コロナの感染・発症リスクを高める可能性があるため、漫然とした投与や不必要な投与は避けるべきで、もし投与の必要がある場合は有効用量でしっかり開始し、速やかに効果判定を行なって減量することが重要であると考える。しかし、ステロイド以外の治療は全てにおいて、感染への恐れという理由で減量・中止することは不適切」との見解を述べました。これは、抗TNFαだけではなく、免疫調節薬においても同様だとしています。

さらに、「IBDが新型コロナ感染のリスク増加につながるというエビデンスはなく、感染や重症化に関与するのは、IBDの疾患活動性と考えられる。そのため、パンデミック下においても、必要な寛解導入療法および維持療法を継続することが重要だ」と、力強く語りました。

その他、「新型コロナワクチン接種」に関しては、抗体価ではなく非感染率で見るべきだとしたうえで、2回接種を推奨するとしています。

コロナ禍でIBD患者さんが感じた不安や、その原因は?

次に、「J-DESIRE(COVID-19流行により生じた日本のIBD患者が感じた不安や行動変容に関するアンケート調査の多施設共同前向き観察研究)」の結果について、以下のようなコメントがありました。

「新型コロナに対する不安感は全体的に主婦が高く、学生が低い。また、電車通勤の人も不安を抱えていた。治療に、プレドニン、チオプリン、ゼルヤンツ、レミケードを使用している患者さんと、栄養療法を行っている患者さんで、不安がやや強い傾向にあった。不安の内容では、受診と治療への不安以外に、他人に感染させてしまう不安もあった」

受診についての不安は、大きな病院での待ち時間の長さがあり、これらの患者さんに「かかりつけ医が欲しいですか?」と尋ねたところ、「必要性を感じる」と回答した患者さんが非常に多く、「かかりつけ医」の必要性を再認識したとしています。これは、コロナ禍だけでなく災害時においても重要で、日本における大きな課題の一つであるとの認識を示しました。

新型コロナに関する「正しい」情報を伝えるには

久松先生は最後に「患者さんたちは、公的な公衆衛生機関や政府機関専門医や学会よりも、テレビやインターネットから情報を得ていることが多い。そのため、正確な情報をどのように患者さんや実地医家(開業医など)に伝えていくのか、その方法についても考えていくことがとても大切だ」と述べ、講演を締めくくりました。

このメッセージを受けて、IBDプラスも多くの人に情報を伝えるメディアとして、身の引き締まる想いがしました。なお、新型コロナとIBDに関する最新の情報は、関連リンクもあわせてご確認ください。

(IBDプラス編集部)

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