若年患者ほど、治療薬の飲み忘れや自己中断が多い―日本医療薬学会レポート
ニュース | 2017/12/7
ペンタサを例に調査、客観的な評価では「年齢」で差
炎症性腸疾患(IBD)の薬物治療では、服薬規則を守れるかどうかが症状の再燃率を左右します。現在、基本となるのが5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤ですが、福岡大学筑紫病院の池田澪樺氏らの調査では、クローン病患者で(1)若年、(2)過去に薬を飲み忘れた経験がある、(3)薬物治療に関心が低い、(4)体調の悪い時に自己判断での服薬中止経験がある-に該当する患者では、全体として服薬規則の遵守(服薬アドヒアランス)が低いことが分かりました。この調査結果は第27回日本医療薬学会で発表されました。
調査では、2016年の1年間に5-ASA製剤のペンタサ錠・顆粒を処方された潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)の患者が対象となっています。
まず客観的評価として、ペンタサの処方が連続180日以上の患者580例を対象に、本来薬を飲むべき日数を分母、実際に飲んだ日数を分子としてその割合(Proportion of Days Covered:PDC)を計算。この割合が90%未満の場合を低アドヒアランス群、90%以上を高アドヒアランス群と定義しました。これにより、低アドヒアランス群に116例(UC:67例、CD:49例)が、高アドヒアランス群に464例(UC:243例、CD:221例)が分類されました。この2つの群で性別、平均年齢、UCかCDか、1日の服用回数(1~3回)によって差があるかを統計学的手法で検討しました。
その結果、2つの群で統計的に明確な差が認められたのは平均年齢で、低アドヒアランス群が40.6歳、高アドヒアランス群が44.1歳でした。また、UC、CDのそれぞれのなかで、用法別に低アドヒアランス群と高アドヒアランス群の割合を比較しましたが、ここでは統計学的な差は認められませんでした。
主観的なアンケートでの差は、「クローン病」と「年齢」
さらに、患者の主観的な服薬アドヒアランスも調査しました。この調査では、169例の患者を対象に「残薬数」、「飲み忘れの経験」、「薬物治療への関心」、「自己中断の経験(体調がよいとき)」、「自己中断の経験(体調が悪いとき)」について0~3点でポイント化するアンケートを実施。13点未満を低アドヒアランス群、13点以上を高アドヒアランス群と定義したところ、それぞれ86例、83例に分けられました。
2つの群で性別、平均年齢、UCかCDか、1日の服用回数(1~3回)、併用薬(ステロイド、アザチオプリン、6-メルカトプリン、タクロリムス、インフリキシマブ、アダリムマブ)によって差があるかを統計学的に検討すると、平均年齢とCDであることで差が確認されました。ちなみに平均年齢は、低アドヒアランス群が37.6歳、高アドヒアランス群が44.8歳で、ここでも年齢が若いほど服薬アドヒアランスが低いという結果になりました。また、アンケートの各項目の点数を、低アドヒアランス群と高アドヒアランス群で統計学的に比較すると、「飲み忘れの経験」、「薬物治療への関心」、「自己中断の経験(体調が悪いとき)」で差が認められました。
池田氏は、「こうした特徴を有する患者さんでは、薬剤師が服薬指導により一層注力することが必要」と結論付けています。
(村上和巳)
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