植物由来製品「青黛」に関する臨床研究結果を発表―慶大ほか
ニュース | 2017/12/8
「治療に有効」というデータも、患者の5%以上に肝障害や頭痛など
11月28日、慶應義塾大学医学部内科学(消化器)教室の金井隆典教授、長沼誠准教授らを中心とした全国33施設の多施設共同研究グループは、植物由来製品の青黛(せいたい)が潰瘍性大腸炎の治療に有効であることを実証した、と発表しました。
青黛はリュウキュウアイ、アイなどの植物から抽出した粉末の生薬で、日本でも染料や健康食品などとして用いられています。中国では、古くから潰瘍性大腸炎に対して青黛を含む薬が用いられていましたが、その有効性や安全性に関して十分な科学的検証はなされていませんでした。
同グループでは、中等症以上の活動期潰瘍性大腸炎患者86例を4群に分け、カプセル化した青黛を1日0.5g、同1.0g、同2.0gまたはプラセボ(偽薬)を8週間経口投与。その結果、有効率はプラセボを投与した群では 13.6%だったのに対し、治療薬を投与した群ではそれぞれ69.6%、75.0%、81.0%と、統計学的に意味のある差をもって高くなりました。また、症状消失を示す臨床的寛解率、腸管の粘膜から潰瘍が消失したことを示す粘膜治癒率(内視鏡的寛解率)ともに、治療薬群がプラセボ群よりも高くなりました。この試験期間中に、副作用などの重い症状が出た患者はいませんでしたが、治療に関連して、軽度の一過性肝障害、頭痛、胃痛・腹痛や吐き気が、5%以上の患者にみられました。
研究グループ「患者が自己判断で青黛を使用すべきではない」
厚生労働省は2016年12月27日に、青黛を摂取した潰瘍性大腸炎患者で、心臓から肺に血液を送る肺動脈の血圧が異常に上昇する「肺動脈性肺高血圧症」を発症する患者が複数存在することが判明したことから、保健医療の関連学会に対して患者が自己判断で青黛を摂取しないよう指導を求める通知を出しています。研究グループでは、厚労省の注意喚起が出された時点で、肺動脈性肺高血圧症を発症している患者はいなかったものの、試験責任者の判断で臨床試験の中止を決定。当初120例の患者の参加を予定していましたが、86例で参加患者の登録を中断しました。
今回、結果を公表したことについて、研究グループは「本研究グループが行ったのは、安全性、有効性を評価することを目的とした試験であり、患者が自己判断で青黛を使用すべきではないと考えていますが、この注意喚起後、安全性を最優先し、本臨床試験を中断の上、結果を公表したものです」としたうえで、「今後、動物実験を含む研究をさらに行い、安全に使用できるよう治療開発を推進していきます」と述べています。
(IBDプラス編集部)
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