造血細胞が腸炎のときに腸管を修復する仕組みを発見、IBDの新規治療法につながる可能性も

ニュース , 腸内細菌を学ぶ2022/11/28

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IBDで腸管が破壊され腸内細菌が体内に流入した際、造血細胞はどのように反応する?

熊本大学国際先端医学研究機構と神奈川県立産業技術総合研究所らの研究グループは、腸内細菌の流入を探知して腸管修復を促進する造血応答を発見したと発表しました。

造血細胞の一種である「造血幹細胞」は骨髄に存在する幹細胞で、一生を通じて血液を産生します。最近の研究から、個体が細菌やウイルスに感染した際に造血幹細胞が活性化し、感染と闘うために必要な細胞を多く産生することが明らかになりつつあります。一方、腸内細菌叢のバランスの乱れが、代謝疾患、心疾患、がんなどに関与することが知られています。

研究グループは今回、炎症性腸疾患(IBD)の際に腸管が破壊されて腸内細菌が体内に流入していく過程で、造血幹細胞をはじめとする造血細胞がどのように反応するかについて解析を行いました。

骨髄で造血細胞が急激に活性化、近くのリンパ節では組織修復を促進する細胞に分化

研究では、潰瘍性大腸炎の病態に類似した「DSS誘導大腸炎モデルマウス」を用いて、腸管炎症が起こる過程における骨髄の造血応答を観察しました。すると、腸から離れた骨髄でも何らかの刺激に反応して、造血細胞が急激に活性化していることが判明しました。また、一部の造血細胞は血管を通じて、普段はほとんど存在しない場所である「腸管近くのリンパ節」に移動していました。さらに、そこで造血細胞が「腸管組織の修復を促進する特殊な細胞」へと分化し、炎症後の組織修復を行っていることが判明しました。

一連の反応は、腸内細菌「バクテロイデス」が体内に流入することで起こる

加えて、これら一連の反応は「バクテロイデス」という腸内細菌が、腸炎による組織破壊に伴って体内に流入することで起こることも明らかになったということです。

バクテロイデスを使ったIBDの予防・治療法の可能性に期待

今回の研究成果により、IBDの新たな予防や治療法の可能性が示唆されました。また、IBD患者さんではバクテロイデスが減少していることが知られており、例えば、腸内細菌叢移植療法により患者腸内のバクテロイデスを増やすことで寛解維持に寄与したり、組織修復細胞を移植することで腸炎を抑えて寛解導入したりすることが期待されます。

研究グループは「今後は、造血細胞がどのように腸管組織を修復する細胞へと分化するのか、また、分化した組織修復細胞がどのような機能を果たして組織修復に関与しているのかについて明らかにすべく、詳細な解析に取り組む予定だ」と、述べています。

(IBDプラス編集部)

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