潰瘍性大腸炎を対象とした「抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」、先進医療Bとして開始
副作用の少ない潰瘍性大腸炎の治療法として注目される「腸内細菌叢移植」
順天堂大学とメタジェンセラピューティクス株式会社の研究グループは、潰瘍性大腸炎を対象とした「抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」が先進医療Bとして承認されたため、2023年1月より実施すると発表しました。
先進医療とは、高度な医療技術を用いた療養などで、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養として厚生労働大臣が認めたものです。このうち、先進医療Bは、未承認の医薬品、医療機器の使用または医薬品、医療機器の適応外使用を伴う医療技術等が該当します。
潰瘍性大腸炎は腸内細菌叢の乱れが発症や増悪の要因の一つであることが明らかになってきています。「腸内細菌叢移植」は感染性腸炎に対する治療法として、欧米ですでに実用化されており、潰瘍性大腸炎についても副作用の少ない治療法として注目されています。
3種の抗菌薬で腸内細菌叢をリセットした後、健康なドナーの腸内細菌叢溶液を注入
抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法(Antibiotic Fecal Microbiota Transplantation療法:A-FMT療法)は、患者さんの乱れた腸内環境を改善するため、3種類の抗菌薬(アモキシシリン、ホスホマイシン、メトロニダゾール)を用いて患者さんの腸内細菌叢をリセットした後、健康なドナーの便から作成した腸内細菌叢溶液を内視鏡で注入し、バランスのとれた腸内細菌叢を構築する医療技術です。以前より行われてきた腸内細菌叢移植の前に抗菌薬の投与を追加することで、より効果的な腸内細菌叢移植となることが期待されています。
順天堂大学で行われた潰瘍性大腸炎に対するA-FMT療法の臨床研究では、2014年6月の研究開始以来、2022年12月までに210人以上の潰瘍性大腸炎患者さんと、160人以上の便ドナーが参加されたそうです。
A-FMT療法の実施には便ドナーと患者さんをつなぎ、腸内細菌叢溶液の作成を可能とする「腸内細菌叢バンク」の構築が不可欠です。順天堂大学とメタジェンセラピューティクスは今後も安全かつ安定した腸内細菌叢溶液の作成に向けて、さらなる研究に取り組んでいくと述べています。
抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法は2023年1月より順天堂大学医学部附属順天堂医院で開始されるそうです。また、メタジェンセラピューティクスは共同研究機関として、便ドナーのリクルーティング、便検体の管理、腸内細菌叢溶液の調製、品質管理などに関する支援業務を提供するとしています。
(IBDプラス編集部)
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