日本人の「腸内微生物叢」大規模データベース構築に成功、最新のメタゲノム解析で

ニュース , 腸内細菌を学ぶ2023/11/15

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腸内微生物叢が一部の疾患に関わることはわかっているが、詳細は不明

大阪大学と東京大学を中心とする研究グループは、メタゲノムショットガンシークエンスを利用して日本人の腸内微生物叢・ヒトゲノム・血中代謝物の関連を明らかにしたと発表しました。

ヒトの腸内には数多くの微生物が存在し、腸内微生物叢を構成しています。腸内微生物叢は免疫反応や代謝応答を介して宿主と相互作用し、自己免疫疾患・代謝疾患・悪性腫瘍など多くの疾患に関与していますが、全容は明らかになっていません。

腸内微生物叢と宿主との相互作用にはヒトゲノム(約30億文字のDNA配列で構成されたヒトの全遺伝情報)の個人差が影響することが知られています。しかし、従来の解析法では「細菌の系統情報の解像度が低い(菌種情報の詳細が不明)」「微生物由来遺伝子の情報が手に入らない」などの制約がありました。また、先行研究の多くが欧州人集団における研究であり、他の民族集団を対象とした研究が求められていました。血中代謝物も腸内微生物叢と宿主との相互作用に寄与することが知られていますが、こちらも同様の問題がありました。

メタゲノムショットガンシークエンシングは、腸内微生物叢から得られる全てのゲノム情報(メタゲノム)を解析する手法であり、一部分(16SリボソームRNAという部分)だけを解析していた従来法と比較して「菌種情報の解像度が高い」「遺伝子・パスウェイ(相互作用)などの機能的な情報も手に入る」といった利点があります。腸内微生物叢と宿主の関連を探索する際にも、メタゲノムショットガンシークエンシングの活用が望ましいと考えられていますが、解析の煩雑さやコストの高さが問題となり、十分に活用されていないのが現状です。

「血液型と疾患」「胆汁酸と腸内細菌」の関連解明に一歩前進

今回、研究グループは日本人集団524人の腸内細菌叢を調べました。まず、メタゲノムショットガンシークエンスを使用して、423種の腸内細菌についてゲノムワイド関連解析を実施。特定の腸内細菌の量と関連を持つ遺伝子多型(特定のDNA配列)を複数同定しました。

さらに、血液型がA型の人はB型・O型に比べ、腸内のN-アセチルガラクトサミンの量が多いことが判明。この結果から、腸内で「N-アセチルガラクトサミンを利用できる細菌」の量が増えていると推察されました。ABO血液型は一部の疾患と関連することが知られており、今後、ABO血液型と腸内細菌叢/疾患の関連解明が期待されます。

最後に、腸内細菌と363種類の血中代謝物との関連を網羅的に探索したところ、胆汁酸と多くの腸内細菌に関連が見られました。これにより、「胆汁酸が腸内細菌に対し傷害性を持っている」「一次胆汁酸から二次胆汁酸への代謝を腸内細菌が担っている」ことなどが示されました。

今回の研究成果により、日本人における腸内微生物叢・ヒトゲノム・血中代謝物の関連が初めて網羅的に明らかにされました。「本研究で構築された網羅的なデータベースは公共データベースとして公開されており、今後の医学・生物学研究の発展に資すると期待される」と、研究グループは述べています。

(IBDプラス編集部)

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