IBDの発症・再発予測に、呼気中の「水素濃度」計測が役立つ可能性

ニュース , 腸内細菌を学ぶ2023/11/21

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吐き出す「息」が、IBD 発症・病態予測のバイオマーカーに?

慶應義塾大学薬学部と東京大学大学院工学系研究科の研究グループは、生体の水素ガス濃度や特定の腸内細菌が腸炎の病態と相関することを明らかにしたと発表しました。

炎症性腸疾患(IBD)は再発と寛解が繰り返されることが多く、重症化や慢性化が進行する前に早期介入することが重要です。しかし、疾患の再発を予測する効果的な手法はいまだ確立されていません。現在、IBD の診断には内視鏡検査が最も一般的ですが、検査に長時間を要する、高額な費用がかかる、侵襲性が高いなど、いくつかの課題を抱えています。そのため、より簡便で非侵襲的なIBD の診断法の確立が期待されています。

その中で、呼気中の成分が新たな IBD のバイオマーカーとして注目されています。実際に、健常者と IBD 患者の呼気成分に違いがあることが報告されており、IBD と呼気成分との関連性が示唆されています。しかし、これまでの研究の多くは、症状が強く現れる「活動期」の IBD 患者に焦点が当てられており、IBD の発症や病態変化と関連する呼気成分を分析した研究はまだありませんでした。

呼気中の「水素ガス」を腸炎発症・病態予測のバイオマーカーとして利用できる可能性

そこで研究グループは、大腸炎モデルマウスの病態と呼気成分を分析することで、呼気が IBDの発症を予測するためのバイオマーカーとなり得るかを評価しました。また、IBD患者さんでは腸内細菌叢の構成が健常者と比べて異なることから、腸炎における炎症過程が腸内細菌を介して呼気成分の変化に現れるのではないかと考え、呼気と腸炎の病態に加えて腸内細菌叢の変化も同時に解析しました。

腸炎を誘発したマウスの飼育ケージ内の生体由来ガスから、水素、アンモニア、硫化水素など複数の成分の濃度変化を測定した結果、水素濃度が腸炎の病態と最も強く相関することを発見。さらに、水素産生菌を含む特定の腸内細菌群の相対存在量が、腸炎の病態および水素の濃度変化と相関していることも明らかになりました。これらのことから、生体の水素ガスを腸炎の発症や病態を予測するためのバイオマーカーとして利用できる可能性が示唆されました。

「呼気中の水素濃度を経時的・高精度に計測することにより、IBDの発症・再発を早期に発見し、また、治療効果を予測できる可能性があり、今後の実用化に期待が持たれます」と、研究グループは述べています。

(IBDプラス編集部)

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