「川崎病」の腸内細菌叢、IBDでも多くみられる炎症を引き起こす菌が多いと判明

ニュース , 腸内細菌を学ぶ2023/12/7

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いまだ原因不明とされる「川崎病」

関西医科大学の研究グループは、川崎病に罹患して約1年経過した子どもに「腸内細菌叢の乱れ」を発見したと発表しました。

川崎病は生後6か月~5歳の小児に多い全身性血管炎で、500人に1人が罹患します。無治療の場合には約25~30%の割合で心臓の冠動脈に拡大性病変を合併し、適切な治療を行っても2%程度の患児で合併します。この病変は、血栓形成によって心筋梗塞発症の危険因子となり、小児の後天性心疾患の最大の原因となります。

川崎病の原因については、さまざまな病原体や免疫調節に関する遺伝子、食事や気候などの生活環境が原因となる可能性が考えられてきましたが、その特定には至っていません。現在では、遺伝的または環境的に罹患しやすい状態にある子どもが、感染症をきっかけに過剰な免疫反応を起こして発症する多因子疾患と考えられています。

これまでに、川崎病の発症リスクを高める環境因子として「帝王切開での出生」「乳児期に人工乳栄養だった」「抗菌薬の使用歴がある」などが報告されています。これらはいずれも乳幼児の腸内細菌叢をかく乱させる因子としても知られています。そこで研究グループは今回、腸内細菌叢の乱れが川崎病の発症リスクになるのではないかと考え、研究を行いました。

川崎病ではIBDでも多くみられる炎症を引き起こす菌が多く、抑制する菌が少ない

研究グループは、約1年前に川崎病で治療を受けた外来通院中の川崎病患者26例と、ほぼ同年齢の健康対照57例を対象に、便検体を採取して次世代シークエンサーで遺伝子解析を行い、腸内細菌叢の多様性と細菌構成を比較しました。

その結果、川崎病のグループ(以下、川崎病群)と対照となるグループ(以下、対照群)に有意な違いが見られ、2群の腸内細菌叢が科学的に異なることが示唆されました。

細菌構成を見てみると、川崎病群ではアレルギー・炎症性腸疾患(IBD)・肥満などと関連があるとされる「ルミノコッカス・グナバスグループ」が多く、IBD・糖尿病・直腸がんで少なく、発酵食品や食物繊維を多く取る人に多いとされる「ブラウティア」が少ないことがわかりました。

ブラウティアは酪酸の産生によって腸管内で制御性T細胞の分化を助け、炎症を抑制する作用を持ちます。一方で、ルミノコッカス・グナバスは炎症を引き起こすことが知られています。

腸内細菌叢を標的とした川崎病の新規治療法の開発につながる可能性

本研究成果は川崎病の原因究明の一助となるだけでなく、プロバイオティクスやプレバイオティクスを用いた腸内細菌叢を標的とした新たな川崎病の予防・治療戦略の開発につながる可能性があると、研究グループは述べています。

(IBDプラス編集部)

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