急性重症潰瘍性大腸炎への第一選択薬として「生物学的製剤・低分子化合薬」が有用と判明
ニュース | 2023/12/21
中等症以上の潰瘍性大腸炎患者さんに対する基本的治療法はステロイドだが懸念点も
関西医科大学の研究グループは、急性重症潰瘍性大腸炎に対する第一選択療法としての生物学的製剤・低分子化合薬の有用性を、世界で初めて報告したと発表しました。
中等症および重症潰瘍性大腸炎に対する基本的治療法はステロイドですが、精神症状・耐糖能異常・消化性潰瘍などの副作用の発症が懸念されてきました。しかし現在の治療ガイドラインでは、入院を要する潰瘍性大腸炎患者さんに対しては過去のステロイド使用状況に関する言及がなく、ステロイドを第一選択肢として推奨しています。
一方、入院を要する潰瘍性大腸炎患者さんの第一選択療法として、生物学的製剤や低分子化合薬などの先端治療の有用性に関する報告は、世界的に見ても存在しませんでした。
そこで研究グループは今回、入院を要する活動性潰瘍性大腸炎に対する治療エビデンスを構築するため、多施設共同前向き観察研究を行いました。
入院後の第一選択での先端治療は45.7%、ステロイド選択群と重症度に差はなし
研究では、2020年8月~2021年7月までに国内39施設に潰瘍性大腸炎の症状悪化で入院し、第一選択としてステロイドもしくはステロイド以外の先端治療(血球成分吸着除去療法、タクロリムス、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、ベドリズマブ、ウステキヌマブ、トファシチニブ)を使用した症例のうち、急性重症潰瘍性大腸炎の診断基準に合致した221例を対象としました。
このうち入院後、第一選択療法としてステロイドが選択された症例(ステロイド治療群)は120例、ステロイド以外の先端治療が選択された症例(先端治療群)が101例(45.7%)でした。先端治療群はステロイド治療群に比べ、「罹病期間が長い」「ステロイド依存例や入院12か月以内に2回以上再燃した症例の割合が高い」「試験登録時にステロイドを使用していた患者さんの割合が高い」などの差が確認されましたが、臨床的・血清学的な重症度は両群で差は認められませんでした。
入院後のステロイドで効果が得られず先端治療を選んだ症例の寛解導入率、14日で43.8%
入院後第一選択療法にステロイドを選択した120例のうち、効果が不十分で先端治療を選択した症例(ステロイド効果不十分例)は48例で、このうち79.2%の症例でインフリキシマブもしくはカルシニューリン阻害剤が選択されていました。これらの寛解導入率は7日目14.6%、14日目で43.8%、臨床的改善率は7日目37.5%、14日目58.5%で、インフリキシマブもしくはカルシニューリン阻害剤を中心としたステロイド効果不十分例に対する先端治療の治療成績は、比較的良好だったということです。
入院前にステロイドを使用していた症例、ステロイド増量より先端治療選択が良い結果に
一方で、入院後第一選択療法として先端治療を選択、もしくは上述のステロイド効果不十分例に対して先端治療を選択するも治療効果がなく、2番目の先端治療を選択した症例は25例で、ウステキヌマブ、インフリキシマブ、トファシチニブが主に選択されていました。7日目、14日目で寛解導入された症例はなく、また最終的に手術を要した例も28%でした。一部の症例では有効性も確認されましたが、2番目の先端治療の選択の是非は慎重な検討が必要であると示唆されました。
入院前にステロイドを使用していた78例中、入院後に第一選択療法としてステロイドを継続・増量した症例(ステロイド増量群)は28例で、ステロイド使用量の中央値が1日あたり60mgであることより、十分なステロイド量の治療がなされていると考えられました。また、残りの50例はステロイド以外の先端治療が選択されていました。7日目の寛解導入率は両群で差は認められませんでしたが、14日目の寛解導入率は先端治療群で有意に高く、手術を要した症例も低い傾向にありました。以上より、入院前にステロイドを使用していた症例では、ステロイドを増量するより先端治療を選択した方が望ましいことが示唆されました。
今後、診療ガイドラインに反映される可能性も
さらに、研究グループは同研究結果を踏まえ、先端治療を含めた入院を要する潰瘍性大腸炎患者の治療戦略のフローチャートを作成しました。
これまで急性重症潰瘍性大腸炎に対する先端治療については、ステロイドによる治療効果が得られない場合の第二選択療法として位置付けられており、第一選択療法としての先端治療に対する有効性を報告した研究はありませんでした。「本研究成果は今後、国内外の診療ガイドラインに反映される可能性があると考えられ、社会的に意義のある研究成果であると考えられる」と、研究グループは述べています。
(IBDプラス編集部)
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