生薬「青黛」が腸管の炎症を抑制するメカニズムの一部を解明

ニュース2022/5/20

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潰瘍性大腸炎への有効性は示されていたが、炎症を抑制するメカニズムは不明だった

慶応義塾大学医学部内科学教室(消化器)の金井隆典教授、同内視鏡センターの筋野智久専任講師、同医学部の吉松裕介特任助教らの研究グループは、潰瘍性大腸炎(UC)患者さんの炎症抑制に有効とされる生薬「青黛(せいたい)」が、炎症抑制性免疫細胞(制御性T細胞、Treg)を大腸上皮直下に誘導することを実証したと発表しました。

大腸は水分やミネラルの吸収を行う臓器であるとともに、腸内細菌叢や食物抗原などに対する感染防御の第一線を担っています。一方で、過剰な免疫反応は、炎症性腸疾患(IBD)や食物アレルギーなどの自己免疫様疾患を引き起こします。そのため、正常な大腸には過剰な免疫反応を制御する細胞集団が存在しており、その中心的な役割を担う細胞としてTregが知られています。このTregが欠損、あるいは機能不全に至るとIBDなどの発症につながります。

研究グループは今回、中国で古くからさまざまな慢性炎症性疾患に民間療法として使用されてきた生薬「青黛(せいたい)」に着目しました。これまでに、多施設二重盲検ランダム化比較試験で、青黛がUC患者さんに有効であることが示されていましたが、炎症が抑制されるメカニズムは不明でした。

芳香族炭化水素受容体(Ahr)シグナルは、免疫系を平常な状態に維持するために重要とされています。このAhrに結合する物質(Ahrリガンド)は、ブロッコリーをはじめとした緑黄色野菜に含まれます。青黛は、その成分に染料として知られるインジゴをはじめとするAhrリガンドを多く含むことから、これまでの免疫抑制治療とは異なるメカニズムで炎症部位に作用すると考えられていました。

青黛が腸管上皮の直下にある炎症抑制細胞を誘導

今回の研究では、マウスにおいて、青黛が腸管の炎症を抑制することを実証しました。次に、青黛は大腸に特徴的な遺伝子を発現するTreg(IN-Treg)を増加させていることがわかりました。さらに、IN-Tregは大腸上皮に近い管腔側(管の内側)に局在していました。このことは、IN-Tregが何らかの作用で腸管上皮に働きかけている可能性を示唆しているそうです。

実際に、UCの症状が治まった寛解期の患者さんに内視鏡検査を行い、直腸粘膜の浅い層から組織を採取したところ、青黛服用患者さんでは青黛非服用患者さんと比較して、Tregが増加していることが示されたということです。このように、マウスだけではなくヒトにおいても、腸管上皮の直下にある炎症抑制細胞の誘導に青黛が関連することが判明。さらにこの作用は、青黛が腸管上皮細胞を通じて引き起こしていることも明らかになりました。

以上のことから、これまで作用機序が不明だった青黛が、マウスとヒトにおいて、大腸の上皮Ahrシグナルを介して、特徴的な遺伝子を発現するTregを上皮直下に誘導することにより炎症を抑制するというメカニズムが示されました。

Tregが上皮を修復するメカニズムの解明に至れば新規治療法につながる可能性

今回の研究により、IBDにおける「青黛」の有効性についてのメカニズムの詳細が解析されました。しかし、青黛のどの成分がこのような作用を起こしているかはいまだ不明瞭であり、長期服用による重篤な副作用も報告されています。

「本研究が発展し、Tregが上皮を修復するメカニズムの解明に至れば、これまでのUC治療の主体である免疫抑制治療とは一線を画した新規治療法につながる可能性があると考えられる」と、研究グループは述べています。

(IBDプラス編集部)

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