入浴する温泉の泉質によって「腸内細菌」が変化することを発見
疾病患者では「温泉入浴と腸内細菌」の関連についての研究が進んでいる
九州大学の研究グループは「温泉入浴」が腸内細菌叢に与える影響を実証したと発表しました。
別府温泉地は2,000以上の温泉源を有し、日本で最も多様な温泉を提供しています。日本では、含まれる化学物質の種類と濃度により10種類の療養泉に分類されていますが、具体的にどのような健康効果があるのか、また、泉質による効能の差に関する研究は十分に行われていませんでした。
一方で、鉱泉や温泉水の入浴や飲用は、治療の補助や疼痛緩和のために、世界中で用いられてきました。また、研究では、筋骨格系や皮膚疾患患者さんの睡眠・生活の質の改善に加え、心血管疾患や高血圧の緩和に効果があることも報告されています。さらに最近の研究では、温泉入浴と疾病患者における「腸内細菌との相互作用」についても、研究が進められています。
研究グループは今回、健康な成人が異なる泉質の温泉に入浴した際の、腸内細菌叢に与える影響を検討しました。
炭酸水素塩泉の入浴でビフィズス菌の一種が増加、単純泉と硫黄泉でも菌の変化を確認
研究は、2021年6月~2022年7月にかけて、九州在住の18歳以上65歳以下の慢性病を有しない健康成人136人(男性80人、女性56人)を対象に行われました。参加者は別府温泉の5つの異なる泉質(単純泉・塩化物泉・炭酸水素塩泉・硫黄泉)に7日間連続で毎日20分以上入浴し、通常通りの食生活を維持しました。
7日間の入浴前後の便検体を収集し、腸内細菌叢の変化を測定して解析を行った結果、泉質によって腸内細菌の占有率に有意な変化が見られました。
一番変化率が大きかった菌は、炭酸水素塩泉への入浴におけるビフィズス菌の一種(Bifidobacterium bifidum)で、入浴前後で有意な増加が見られました。また、単純泉と硫黄泉でも複数の菌が有意に増加していたそうです。
より個別化された「温泉療法」や「健康促進プログラム」の開発が可能に
今回の研究成果により、温泉浴が健康にどのように寄与するかの理解が深まり、温泉の医療的利用の新たな方向性が示唆されました。また、温泉の種類による健康への具体的な効果が明らかになったことで、温泉療法や健康促進プログラムを開発する上で、より個別化されたアプローチが可能となり、温泉療法の理論的根拠が見出されたと言えます。
「温泉による腸内細菌叢や健康への影響についてはまだ十分に解明されていないため、今後も研究が必要だ。温泉入浴効果がどの程度持続するのか、他の身体的効果など、詳細な研究を進めていく」と、研究グループは述べています。
(IBDプラス編集部)
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