IBDなどの腹腔鏡手術で見られる合併症、「皮下気腫」の発生率が判明

ニュース2024/4/9

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腹腔鏡手術・ロボット支援下手術で多く、気胸や抜管困難の原因にも

兵庫医科大学の研究グループは約2,500人の患者データをもとに、腹部鏡視下手術の際の合併症「皮下気腫」の発生と、患者の背景や手術因子の関連について調査した結果を発表しました。

腹腔鏡手術がさまざまな領域で一般的になってきています。しかし、腹腔鏡手術やロボット支援下手術などの「鏡視下手術」では、さまざまな合併症が報告されています。その中でも皮下気腫は最も一般的な合併症として知られており、罹患率は約3%と報告されています(手術直後の検査では罹患率24~56%)。また、腹部鏡視下手術中の皮下気腫は、腹部から胸壁、さらには頸部まで到達することがあり、ときに気胸や抜管困難の原因になります。

これまでの研究では、皮下気腫の危険因子として腹腔内圧や呼気の二酸化炭素濃度が高いこと、長時間の手術、ポート(鏡視下手術時の創部)数が多いことなどが報告されています。さらに最近では、ロボット支援下手術は腹腔鏡手術と比べ皮下気腫を引き起こすリスクを増加させるという報告もあるそうです。

2,503例の23.1%に皮下気腫を確認、5.9%が頸部にまで及び3分の1が抜管困難に

研究グループは、2019年4月1日~2022年9月30日までの間に兵庫医科大学病院の腹部外科(炎症性腸疾患外科、上部消化管外科、下部消化管外科、肝胆膵外科、産科婦人科、泌尿器科)で腹腔鏡手術またはロボット支援下手術を受けた患者さん2,503例の情報を収集してデータ解析を実施。皮下気腫・抜管困難の発生率、皮下気腫の危険因子の探索を評価項目としました。皮下気腫の有無の確認は、手術終了直後の胸部・腹部レントゲン検査、または看護師による術中触診のいずれかで確認しました。

その結果、2,503例のうち577例(23.1%)に皮下気腫が認められたということです。そのうち、頸部に及んだものは全症例の5.9%ほどでしたが、約3分の1が抜管困難になっていることが判明したということです。

高齢や痩せ型の患者さんは手術操作で腹壁の組織が破壊され、皮下気腫を発生しやすい

さらに皮下気腫発生の危険因子として、女性、高齢(80歳以上)、低BMI(BMI20以下)、長時間手術(手術時間360分以上)、ロボット支援下手術、高腹腔内圧(気腹圧)、終末呼気二酸化炭素濃度(息を吐き切った時の二酸化炭素濃度)が同定されました。

年齢を除くこれらの因子は、抜管困難の原因となる重症皮下気腫(皮下気腫が頸部まで及ぶもの)の独立した危険因子としても同定され、以前に報告されていたものと類似していたということです。

また、高齢、低BMI、ロボット支援下手術の因子に関しては、体組織の脆弱性と関連するとのことで、高齢の患者さんや痩せている患者さんは手術操作により腹壁の組織が破壊され、皮下気腫を発生しやすいそうです。

加えて、ロボット支援下手術では人間が操作するよりもはるかに強い力でアームが操作されているため、ポート挿入部の腹壁が破壊され、皮下気腫が生じる可能性があるそうです。近年、ロボット支援下手術が増加していることを考えると、術中のモニタリングをより細やかに行う必要があります。さらに、腹腔内への二酸化炭素送気量も皮下気腫の発生に関与しているため、手術中の腹腔内圧、適切な換気による二酸化炭素濃度コントロールが必要となります。

「本研究は、当院のみの過去のデータの解析であり、さらに気腹に使用された二酸化炭素総量、皮下気腫発生に影響を及ぼす可能性のある人工呼吸器設定や輸液量などの麻酔管理情報が不足していた。腹腔内圧や呼気終末二酸化炭素濃度のモニタリングは、高齢者や痩せ型の患者の鏡視下手術を行う上で不可欠だ。特に高齢患者では、抜管困難を避けるために厳密な管理が必要となる」と、研究グループは述べています。

(IBDプラス編集部)

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