エネーボ(たん白アミノ酸製剤)

クローン病は消化管のさまざまな部分に慢性の炎症が起こる疾患で、腹痛、下痢、血便、発熱、肛門付近の痛みや腫れ、体重減少などがみられ、治療により寛解(症状はないが弱い炎症が起こっている)しても、再燃(症状が悪化する)を繰り返します。食事や栄養状態は、クローン病の寛解や再燃に関係があると考えられています。食事の消化による消化管の負担を軽減し、食事の成分による刺激から消化管を守りながら必要な栄養を補う目的で、エネーボ配合経腸用液(以下エネーボ)が処方されることがあります。エネーボは、タンパク質を主体に、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルをバランスよく配合した半消化態栄養剤です。

監修者:薬剤師 谷本かおり

効能・効果

タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルをバランスよく配合するとともに、効率よく摂取できるよう、1.2kcal/mLに調整した経腸栄養剤です。長期にわたり食事が十分に摂れない場合や、手術後の栄養補給に使用されます。

エネーボの特徴

基本的には経口摂取ですが、それが難しい場合は、鼻の穴(経鼻)または胃や腸に開けた穴(胃瘻、腸瘻)からチューブで消化管に直接注入することも可能です。ただし、細いチューブを使用すると詰まることがあるので、医師と相談のうえ、使用するようにしてください。エネーボは、タンパク質の配合比率が高く、なかでも筋肉をつくるのに必要な特定のアミノ酸が多めに配合されています。食事量が減った状態が続くと、筋肉をつくっているタンパク質が分解され、筋力が低下することがありますが、このような筋力低下の予防に役立ちます。脂質はヒマワリ油やナタネ油のほかに、魚油由来のEPA、DHAを含有しています。また、抗酸化作用のあるセレンや脂質代謝に関与するカルニチン、整腸作用が期待できるフラクトオリゴ糖、糖代謝に関連するクロム、酵素の構成要素であるモリブデン、脂質の消化・吸収に関与するタウリンなども配合されています。食物繊維も含まれており、便が安定しやすくなっています。味はバニラ味のみです。

使用上の注意

  • 調整方法や使用方法、注意点などについて、必ず医師や薬剤師から説明を受けてください。
  • 開封直前によく振ってください。
  • 開封後はできるだけ早めに使い切ってください。何回かに分けて服用する場合は、必ず飲む分だけをコップに移し替えて服用し、残りをラップなどで密閉して冷蔵庫に入れ、24時間以内に服用してください。なお、缶のまま服用したり、ストローを直接入れて服用した場合は、飲み残しを保存することはできませんので廃棄してください。
  • 一度に速いスピードで飲むと、下痢や腹痛を起こすことがあります。
  • 過去に薬でアレルギー症状が出たことのある方、牛乳タンパクアレルギーがある方、腸管閉塞や肝・腎障害のある方、重症糖尿病など糖代謝異常のある方、アミノ酸代謝異常がある方、妊娠、授乳中の方、他の薬を服用中の方は、使用前に医師と薬剤師に伝えてください。

用法・用量

【内服する場合】通常、成人は1日1,000〜1,667mL(1,200〜2,000kcal)を1回または数回に分けて服用します。
【チューブを使用して注入する場合】成人は1日1,000〜1,667mL(1,200〜2,000kcal)を、1時間に62.5〜104mL(75〜125kcal)の速さで持続的または1日数回に分けて注入します。注入量や濃度、注入速度は必ず医師の指示に従ってください。少量から開始し、徐々に増量していくのが一般的です。使用量は年齢・体重・症状に応じて適宜増減されます。医師の指示を守り、自分の判断で変更したり中止したりしないでください。

副作用

比較的起きやすいのは下痢で、そのほかにおなかの張り、便秘、腹痛などがあります。このような症状に気づいたら、医師や薬剤師に相談してください。
まれに下記のような症状があらわれますが、[ ]内に示した副作用の初期症状である可能性があります。このような場合は使用を中止し、すぐに医師の診療を受けてください。

  • 意識が薄れる、呼吸しにくい、吐き気、蕁麻疹 [ショック、アナフィラキシー様症]

コラム

エネーボは2014年に、当時初めてとなるセレン、カルニチン、フラクトオリゴ糖、クロム、モリブデン、タウリンが配合された医薬品の経腸栄養剤として発売されました。一般的に、長期にわたりセレンを含まない経腸栄養剤だけで栄養を摂ると、「セレン欠乏症」で爪が白く変化したり、心機能の低下や筋力低下などの症状が出ることがあります。これを防ぐために、医師は必要に応じて不足しているビタミンや電解質、微量元素を補う薬を追加するなどの処置を行います。エネーボはセレン等を含んでいますが、それでも人間の体に必要なすべての成分をカバーできるわけではなく、ほかの経腸栄養剤と同様に、ビタミンや電解質、微量元素の不足に注意する必要があります。急な体調変化と違って、ゆっくり進む変化には気づきにくいものですが、気になることがあれば医師や薬剤師に相談するようにしてください。

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