エンタイビオ(一般名:ベドリズマブ)
クローン病の治療で使用する主なお薬一覧 | 2020/4/10
エンタイビオ(一般名:ベドリズマブ)は、2018年より潰瘍性大腸炎の治療薬として使用されていましたが、クローン病に対する治療効果が証明され、2019年5月より、クローン病に対しても使うことができるようになりました。このお薬は、白血球の一種であるリンパ球が腸粘膜へ入り込んで引き起こす炎症を抑えつつ、腸以外への影響は少なくなるように開発された生物学的製剤です。栄養療法、ステロイドやアザチオプリン等による治療を行っても効果が不十分な、中等症から重症のクローン病の治療に用いられます。
監修者:薬剤師 谷本かおり
効能・効果
ベドリズマブは、炎症を起こしている腸管組織に、炎症性細胞の一種であるTリンパ球が入り込むのを阻害することで、炎症を軽減します。他の薬物(ステロイドやアザチオプリン等)による治療を行ってもクローン病の症状がおさまらない、中等症から重症の活動期クローン病の治療及び維持療法に使用します。
エンタイビオの特徴
潰瘍性大腸炎やクローン病における消化管の炎症で、α4β7インテグリンというタンパク質が重要な役割を果たすことがわかっています。ベドリズマブは、このα4β7インテグリンに対して働く抗体を、バイオテクノロジーにより人工的に作製して医薬品にしたもので、生物学的製剤と呼ばれます。ベドリズマブはα4β7インテグリンに結合しTリンパ球の遊走(腸への移動)を抑えますが、そのことが感染症に対して身体を守る免疫能に影響を及ぼす可能性があります。このため、エンタイビオを使用している間は、感染症に特に注意する必要があります。また、生物学的製剤の点滴は、体が薬に対し強く反応して全身状態が悪化する重い副作用(インフュージョン・リアクション)が起きることがあり、十分な対処ができる設備の整った医療施設での使用が推奨されています。
使用上の注意
- 使用の前には、悪化するおそれのある感染症にかかっていないかを調べます。
- まれに重篤な感染症にかかることがあります。事前に医師または薬剤師より十分な説明を受け、何か気になる症状が現れたときにどのようにすればよいかを確認してください。
- 授乳中または妊娠中や、妊娠の可能性のある方は、医師や薬剤師に伝えてください。
併用禁止・併用注意
- この薬を使用している間は、生ワクチンの接種に注意が必要です。
- 多発性硬化症の薬であるナタリズマブ(製品名:タイサブリ)を使用したことがある方は、必ず医師に伝えてください。
- 他の生物学的製剤との併用は避けてください。
用法・用量
通常、成人には1回300mgを点滴注射します。その後2週、6週に投与し、それ以降は8週間の間隔で点滴注射を続けます。3回以上投与しても効果がない場合、この薬を継続して使用するかどうかは、患者さんの症状や病気の経過、副作用などを考慮して医師により慎重に判断されます。
副作用
比較的起きやすいのは頭痛で、そのほかに発熱、風邪のような症状、倦怠感、関節痛などがあります。このような症状が出た場合は、医師や薬剤師に相談してください。 まれに下記のような症状があらわれますが、[ ]内に示した副作用の初期症状である可能性があります。すぐに医師の診療を受けてください。
- 息苦しい 、吐き気、蕁麻疹、ふらふらする [ショック、アナフィラキシー様症]
- 長く続く咳、発熱、腹痛、下痢、嘔吐、倦怠感 [重篤な感染症]
- 体の一部が麻痺する、言葉がでてこない、目の見え方がおかしい、記憶障害がある[進行性多巣性白質脳症(PML)]
コラム
エンタイビオのように免疫を抑えるお薬を使う際には、十分な問診やレントゲン検査などを行い、結核等に感染していないことを確認します。「結核なんて昔の病気でしょう?」と思う方が多くいらっしゃいますが、実はそうではありません。日本の平成30年結核罹患率は、人口10万人当たり12.3であり、これは米国などの先進国より高いのです(厚生労働省ホームページ「平成30年 結核登録者情報調査年報集計結果について」より)。結核は過去の病気、という意識が広まっているために発見が遅れる場合があり、集団感染の原因になることもあります。過度に恐れる必要はありませんが、咳が長引くようであれば医師に相談する、定期的に健康診断を受けるなど、自分自身を守る行動が大切です。
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