体外で「ヒト潰瘍性大腸炎モデル」の作成に成功、治療の標的候補も発見

ニュース2021/5/20

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正常な大腸上皮オルガノイドを刺激し続け、人工IBDモデルの作製に成功

順天堂大学大学院医学研究科共同研究講座オルガノイド開発研究講座の中村哲也特任教授らの研究グループは、炎症性腸疾患(IBD)における腸上皮再生不良の原因が、細胞が分裂する際に必要なゲノムの複製を阻害し、細胞死を誘導する分子「Schlafen11」によることを突き止めたと発表しました。

IBDの寛解を維持するためには炎症を鎮めるだけでなく、粘膜の潰瘍を治癒させる必要があります。しかし、粘膜の腸上皮細胞の再生に直接効果のある治療薬は開発されていません。

研究グループはこれまで、長期の炎症が大腸上皮細胞の形質を変化させ、大腸の機能低下や発がんのリスクになることを明らかにしてきましたが、その原因となる因子は不明でした。また、研究グループでは腸のもととなる細胞を立体的に培養することで腸上皮にそっくりな「腸上皮オルガノイド」を作り、IBDの潰瘍に移植して治療する方法を開発しています。

今回、研究グループは、正常なヒト大腸上皮オルガノイドを人工的にIBDと同じ状態にするため、1年以上にわたって炎症刺激を行いました。その結果、炎症刺激により上皮細胞の増殖が低下するだけでなく、炎症刺激をやめても増殖低下は回復せず、再生不良が維持されることがわかったそうです。このオルガノイドは潰瘍性大腸炎患者さんの細胞から作ったオルガノイドに類似していることが確認できたことから、人工的にIBD様の腸上皮細胞を作成することに成功したと言えました。

「Schlafen11」を標的とした腸上皮移植再生医療への応用に期待

さらに、IBD様オルガノイドと患者由来オルガノイドに共通して強く発現している「Schlafen11」という分子を発見。その後、マウスの実験でSchlafen11をなくすと、腸上皮幹細胞が増加し、マウスの大腸潰瘍への移植効率が大幅に向上したそうです。このことから、Schlafen11を標的とした腸上皮移植再生医療への応用が期待されます。

研究グループは、「潰瘍治癒を目的とした上皮再生医療の開発により、本疾患において長い間寛解状態を保つことが期待できると考えている」と、述べています。

再生医療と聞くと、まだまだ遠い感じがしますが、IBD様オルガノイドの誕生で、もっと身近なものになってくれることに期待したいと思います。

(IBDプラス編集部)

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