「人工甘味料」が原因で起こる下痢を腸内細菌が抑制することを発見

ニュース2021/6/21

人工甘味料による下痢の起こりやすさに個人差があるのはなぜ?

慶應義塾大学 薬学研究科修士課程の服部航也氏(研究当時)、同薬学部の秋山雅博特任講師、金倫基教授らの研究グループは、腸内細菌が、人工甘味料の摂取によって引き起こされる下痢を抑制することを明らかにしたと発表しました。

ソルビトールをはじめとする糖アルコールは、低カロリーの人工甘味料としてあめ、ガム、飲料などに幅広く利用されています。その一方で、糖アルコールの過剰摂取によって軟便や、体重減少を伴うような重度の下痢が引き起こされることも知られています。

この下痢は、難吸収性の糖アルコールが、腸管による水の再吸収を妨げることで発症すると考えられています。糖アルコールによる下痢の起こりやすさには個人差がありますが、その理由はまだよくわかっていません。

糖アルコールを利用・消費できる「大腸菌」が下痢を予防していた

研究グループはまず、腸内細菌が糖アルコールによる下痢に関与しているかどうかを明らかにするために、通常マウスと腸内細菌がいない無菌マウスに、ソルビトールを投与し、下痢症状を観察。その結果、通常マウスはソルビトールを投与しても下痢になりませんでしたが、無菌マウスでは体重減少を伴う重度の下痢症状が見られました。さらに、検証を進めた結果、「腸内細菌が糖アルコールによる下痢の抑制に関わっている可能性」が示唆されました。

次に、糖アルコールよる下痢の抑制に関わる腸内細菌を探索した結果、下痢を発症しなかったマウスの腸内では「エンテロバクター」に分類される細菌群または「クロストリジウム」に分類される細菌群が多くいることがわかりました。さらに、ソルビトールを栄養源として利用できる細菌と、利用できない細菌がいることが判明。つまり、エンテロバクターに分類される細菌群のうちソルビトールを利用できる大腸菌が、糖アルコールによる下痢を抑えることがわかりました。加えて、大腸菌が糖アルコールを栄養源として利用・消費することにより、下痢の発症が抑えられていることも示唆されたそうです。

今回の研究で、糖アルコールによる下痢の抑制に、腸内細菌が関与していることが明らかになりました。さらに、腸内細菌の中の「糖アルコールを利用・消費できる大腸菌が下痢を予防できる」ということも判明しました。

人工甘味料による腸内環境の異常を正すプロバイオティクスの開発に期待

大腸菌の中には感染症を引き起こすものや炎症性疾患と関連すると考えられているものなどがいるため、「悪玉菌」というイメージが強いですよね。しかし、大腸菌の多くは非病原性で、食物の消化を助けたり、有害な微生物から宿主を守ったりする働きを担っているそうです。さらに今回の研究では、人工甘味料の腸への有害な作用からも私たちを保護してくれていることが示唆されました。

「人工甘味料の多くは難消化性・難吸収性であるため、大腸にまで到達し、下痢だけでなく、腸内環境に負の影響を及ぼすことも指摘されています。人工甘味料の消費が増えている中、人工甘味料による腸内環境異常を是正する新たなプロバイオティクスの開発が今後期待されます」と、研究グループは述べています。

人工甘味料を気軽に取ってしまっている自分、そして何より「大腸菌は悪者」と決めつけてしまっていた自分を反省したいと思います…。

(IBDプラス編集部)

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