「胃ろう食」で医療ケア児の腸内細菌叢が変化、健康に良い影響を及ぼす可能性
普段の食事をミキサーにかけた「胃ろう食」が、腸内細菌叢に与える影響は?
東京医科歯科大学の研究グループは、「胃ろう食」の有用性を細菌学的な観点から証明したと発表しました。
さまざまな疾患や障害により、日常的に人工呼吸器や経管栄養などの医療ケアが必要な「医療ケア児」の数は全国で約2万人と報告されています。口から十分な栄養を摂取することが難しい場合は、チューブやカテーテルなどを使って胃や腸に必要な栄養を直接注入する「経管栄養」による栄養管理が行われます。
通常はカロリーや水分量など、さまざまな栄養素が調整された既製の「経腸栄養剤」を注入することが多いですが、普段の食事をミキサーにかけたり、ミキサー食を作って注入する方法もあり「胃ろう食」と呼ばれています。
「ママと子の胃ろう食推進委員会」は、在宅で療養する医療ケア児や嚥下障害患者とその家族で作られたコミュニティで、胃ろう食に関する情報の共有や発信をしています。胃ろう食を始めてから体調が良くなった、便通が良くなったなどの報告はいくつかありますが、胃ろう食の効果を学術的に調査した研究はありませんでした。そこで研究グループは今回、同委員会協力のもと、経管栄養を受ける小児を対象に、胃ろう食の摂取と腸内細菌叢との関連を細菌学的に検討しました。
胃ろう食のグループは経腸栄養剤のグループに比べ、腸内細菌叢が多様化
研究は、経管栄養による栄養管理を受けている8~17歳までの男女11人を対象に行われました。主に既製の経腸栄養剤を使用している6人と、主に胃ろう食を摂取している5人の2つのグループに分け、唾液と便を採取。口腔内および腸内細菌叢について詳しく調べました。
その結果、経腸栄養剤と胃ろう食の摂取では、細菌の組成が異なることが明らかになりました。また、胃ろう食を摂取したグループの腸内細菌叢が多様化していることが判明。胃ろう食により、腸内細菌叢の組成が変化することが示されました。
胃ろう食のグループで口腔・腸内細菌叢の遺伝子機能増加、菌同士のネットワークも複雑化
遺伝子の機能性を予測するメタゲノム解析では、胃ろう食を摂取するグループで、口腔と腸内細菌叢の遺伝子機能が増加し、細菌のもつ代謝経路も増加していることがわかりました。さらに、菌同士の相関関係を示すネットワーク構造も、より複雑に構築されていたということです。
胃ろう食で「食の楽しみ」を共有できるというメリットも
今回の研究により、口から食べることが困難で経管栄養管理を受ける児が胃ろう食を摂取することで口腔内と腸内の細菌叢の組成が変化。さらに腸内細菌叢の多様性が増加し、細菌ネットワークにも影響することが示されました。
胃ろう食は家族が子どもに食べさせたいものや一緒に食べたいものを注入でき、食の楽しみをみんなで共有できるというメリットもあります。胃ろうからの食事によって腸内細菌叢が変化することで、全身の健康にも良い効果が得られる可能性が、細菌学的に示されました。
「これらは今後の経管栄養管理において、学術的・社会的に意義のある成果と言える。胃ろう食の社会的な認知度を高めるためにも、ママと子の胃ろう食推進委員会の代表・久保詩織さんの了承を得て、Facebookの情報を掲載する」と、研究グループは述べています。
(IBDプラス編集部)
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