経腸栄養剤が腸内環境に与える影響とプロバイオティクス摂取による効果を明らかに
経腸栄養剤が「腸内環境」に及ぼす影響は?
藤田医科大学 脳神経外科学、総合消化器外科学、消化器内科学の合同研究グループと株式会社メタジェンは、経腸栄養剤が腸内環境に及ぼす影響の一部を解明したと発表しました。
経腸栄養剤は、腸を使用する点において優れた栄養剤の投与方法であり、栄養学的にもさまざまな視点から研究されています。一方、近年、急速に注目が集まっている「腸内環境」に対して経腸栄養剤が及ぼす影響は十分に解明されていませんでした。
研究グループは今回、健常な日本人10人と、経腸栄養剤を使用している植物状態の患者さん10人から糞便を採取し、腸内細菌と腸内代謝物質の組成について評価しました。
プロバイオティクスの摂取が一部の腸内代謝物質の変動を促進
その結果、経腸栄養剤を使用している患者さんは健常者と比べ、腸内細菌叢の多様性が有意に低いことが判明しました。また、ヒトの善玉菌として報告されているビフィズス菌などの健康に関わることが報告されている酪酸産生菌が少ないこと、免疫機能の向上に関係する酪酸やピルビン酸などの腸内代謝物質が有意に少ないことが判明しました。また、経腸栄養と同時にプロバイオティクスの一種である「Clostridium butyricum MIYAIRI 588」を摂取すると、腸内代謝物質の一部は増加するものの、腸内細菌叢は改善しないことが明らかになりました。
これらの結果から、経腸栄養患者さんは健常者と比較して「重要な腸内細菌が少なく、免疫機能が低いこと」が示されました。また、プロバイオティクスの摂取は腸内細菌叢を改善するまでには至らないものの、一部の腸内代謝物質の変動を促すこともわかりました。
経腸栄養による腸内細菌叢の多様性低下の予防・治療法開発に期待
「今後、より大規模な研究を行うことで、経腸栄養がもたらす腸内環境変動の詳しいメカニズムが解明され、経腸栄養に伴う腸内細菌叢の多様性低下の予防法・治療法の開発につながることが期待されます」と、研究グループは述べています。
IBDでも特にクローン病で多く使われている経腸栄養剤が腸内環境にどのような影響をもたらすのか、今後、さらに詳しく解明されることに期待したいですね。
(IBDプラス編集部)
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