経静脈栄養より経腸栄養の方が、退院率が良く死亡率も低いことが判明

ニュース2022/6/2 更新

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長期間の絶食が、入院患者さんの生活の質・予後に与える影響は?

東京女子医科大学病院を中心とする研究グループは、経腸栄養療法は経静脈栄養に比べて退院率が向上し、死亡率も低減することがわかったと発表しました。

入院患者さんへの栄養の方法は、大きく分けると、腸を使う「経腸栄養」と、点滴などで栄養を与える「経静脈栄養」に分かれます。

経腸栄養は腸を使うので、腸を使う消化・吸収が行われ、消化管免疫を刺激することができ、腸脳相関(腸と脳の連携)も機能し、腸内細菌も健康を支える働きをしてくれると期待されます。これに対し、経静脈栄養は腸を使わないので、消化管免疫・腸脳相関・腸内細菌の働きを犠牲にしていると言えるそうです。

しかし、このような状態を続けることが、患者さんにどのような影響を与えるのかについて、きちんと科学的に調べた調査は、これまでほとんどありませんでした。適切な栄養管理(補給)は、健康を維持するための基本であり、栄養投与経路の選択で入院患者さんの「生活の質」と「予後」に与える影響を知ることは大切です。

そこで研究グループは今回、同様の課題認識を共有する私立大学附属病院31施設の管理栄養士さんの協力を得て、長期間の絶食が入院患者さんの生活の質・予後に与える影響を明らかにするための調査を行いました。

絶食期間が長くなるほど、体重減少や在院日数の延長などで「生活の質」が低下

入院患者さんのうち、2017年7月の特定日に連続で10食以上絶食をした770例(5.4%、中央値71歳、男:女 474:296)の患者さんを選択し、入院日・基準日から3か月後までの期間を調査しました。

その結果、入院中の絶食期間が長くなればなるほど、「在院日数が延長」「体重が減少」「血液学的パラメータが低下」「死亡率が上昇」「自宅退院率が低下」することが証明され、結果として、患者さんのQOL(生活の質)にダメージを与えることが示唆されました。

さらに、経静脈栄養で中期絶食したグループよりも長期絶食したグループの方が「カロリー・タンパク質・脂質」を多く摂取していたにもかかわらず、全体として「予後が不良」という結果が出ました。このことは、「経静脈栄養に比べ、経腸栄養療法の方が優れている」ことを示しているそうです。

経腸栄養の推進が患者さんの生活の質・予後を改善させる可能性

今回の研究成果により、経腸栄養の推進が患者さんの自宅退院率向上や死亡率の低下につながり、生活の質・予後を良くする効果があることが、実態調査で明らかにされました。

研究グループは「今回のメンバーとともに、課題解決に向けた取り組みを、さらに次世代に向けてステップアップしていきたい」と、述べています。

(IBDプラス編集部)

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