食事に含まれるアミノ酸の量を調節することで、病原性大腸菌の増殖を抑えることに成功

ニュース2019/11/14

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IBD患者 の腸管に多く存在する病原性大腸菌「AIEC」

慶應義塾大学先端生命科学研究所の福田真嗣特任教授、ミシガン大学医学部消化器内科の鎌田信彦博士、クレルモン・オーヴェルニュ大学のニコラ・バーニッシュ教授らの国際共同研究グループは、食事に含まれるアミノ酸の制御が、炎症を起こしている腸管の潜在的病原細菌の増殖を抑制するのに重要であることを明らかにしたと発表しました。

これまでの研究で、炎症性腸疾患(IBD)患者さんの腸管には、腸管接着性侵入性大腸菌(AIEC)と呼ばれる病原性大腸菌が多く存在すると報告されており、IBDのさまざまな症状に関与しているのではないかと考えられています。しかし、どのようにAIECが炎症状態の腸管で増殖し定着するかについては不明な点が多く、解明が待たれていました。

より安全で効果的な次世代栄養療法の開発に期待

今回、研究グループはマウスを使った実験で、その解明に挑みました。結果、AIECは通常、炭水化物を優先的に分解していますが、炎症が起きるとアミノ酸(特にセリン)を優先的に分解するように変化することを発見。これにより、常在大腸菌のような競合細菌との栄養素の取り合いに勝ち、増殖する能力を得ていることが判明しました。さらに、腸管内のセリン濃度は、食事のアミノ酸摂取量で調節できるため、マウスに短期的に低濃度セリン食を食べさせてみました。すると、炎症腸管のAIECの増殖が抑えられ、ひいては腸炎の病態も改善されました。

現在、IBD患者さんの再燃予防および寛解維持を目的として、タンパク性抗原や難消化性多糖を除去した成分栄養剤による「経腸栄養療法」が広く行われていますが、今回の研究成果を応用することで、より安全で効果的な次世代栄養療法の開発、さらには新しいIBDの予防・治療薬の開発も期待されます。みなさんが栄養剤に求めるのは味?摂取量?それとも手軽さでしょうか?次世代の栄養療法が始まる日は近いかもしれません。

(IBDプラス編集部)

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